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古典ブルーブラックと万年筆と私

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古典ブルーブラックインク (古典インク、没食子インク、タンニン酸鉄インク) について調べて、自作を試みて、古典インクの新色が商品化されるまでの話。
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#ワーグナーインク

古典ブルーブラックと万年筆と私 1 黎明篇

はじめに 古典インクの自作について、私なりのこだわりがあるのですが、そのこだわりの部分だけ話しても、何故そこにこだわるのか分かってもらえなかったり、誤解されたりしそうなので、自分の考えを整理する意味でも、古典インクと関わりだした最初の最初から書き出してみることにしました。 最初の万年筆 古典インクとの関わりは、最初に手にした万年筆まで遡ります。中学生の時に、使ってみるかと渡された父の万年筆はプラチナのシープでした。父が職場で記念に貰ったまま保管されていたもので全くの新品

古典ブルーブラックと万年筆と私 3 雌伏篇

WAGNERに初参加 WAGNERが福岡に来る!ということを、森さんのブログで知り、参加してみたい、でもちょっと怖い、と会場に着くまで悩みに悩んだあげく、興味が勝って参加しました。 2009年7月12日のことです。WAGNER九州大会に参加 - 趣味と物欲 参加してみると、楽しくて、いくら話しても話題は尽きず、自作古典インクも披露して、小分けしてβテストをお願いしたりしました。 そのままの勢いで、1ヶ月後の岡山大会にも参加、岡山でも自作古典インクの配布とβテストのお願いをし

古典ブルーブラックと万年筆と私 4 策謀篇

古典ブルーブラックか否か ブルーブラックインクが古典ブルーブラックなのか、そうでないのか、当時の万年筆愛好家の方は、筆記時の感覚や、書いたものを水に濡らした時の筆跡の残り方で、ほぼ正確に把握されていました。 色々な方の意見を総合してみると「モンブランとペリカンとラミーとプラチナが古典ブルーブラックだが、ボトルとカートリッジでは違うのでは」という感じではなかったかと思います。 二価鉄試験紙による古典インクの判別法 森さんからの宿題の1つ目「古典ブルーブラックか染料のブルー

古典ブルーブラックと万年筆と私 5 風雲篇

アスコルビン酸洗浄法の開発 古典ブルーブラックは二価鉄が酸化されて三価鉄になり、タンニン酸や没食子酸と水に溶けないキレート化合物を作り固まっている、それなら還元してやれば溶けるはず、と今考えてみれば当たり前のことですが、それまで使われていない方法でした。 還元剤と言っても色々ありますが、安全で、簡単に取り扱えて、ペンにも優しく、手に入れやすく、比較的安価なもの、と様々な条件に適合するものを探したら、局方アスコルビン酸の大瓶が目につきました。 化学系で還元剤と言えば、合成に使