見出し画像

しおり奥様ストーリー【3】

 「え? 喫茶店に寄るんですか?」
 そこで出会ったのがしおりである。
 茶髪のセミロングで女性らしい服装をした、干支が二周しているほど年の差がある若い女性。
 しおりとは近くの駅前で待ち合わせた。
 ラブホテルがある繁華街へ向かう途中、俺は喫茶店へ寄ろうと提案する。
 しおりは繁華街の方を指し、向かわなくてよいのかと訝しげな表情を浮かべていたが、今の俺は話し相手が欲しかっただけなので、時間のことはさほど気にしなかった。
「えーっと、じゃあ……」
 俺はブレンドコーヒー、しおりは期間限定の甘いドリンクを選んだ。
 代金を支払い、俺としおりは席に着く。
「その飲み物、流行ってるの?」
「もちろん! 発売すぐに飲まないと売り切れちゃうんですから」
「若い子、皆飲んでるよね」
 店内の女性のほとんどがしおりと同じものを飲んでいる。
「飲んだか飲まないか、話題に出ますから。飲んでた方が話についてゆけるでしょ」
「へえ……」
 その話を皮切りに、俺は八百屋の店長であることをしおりに話した。コーヒーを飲み終えるほど一方的にしおりに話した。
「最近SNSでスムージーが流行ってるんだけど、孝之さんのところで出来ないの?」
 俺の長い話をしおりは一言で締めてくれた。
 ネットに疎い俺には思いつかないアイディアで、主力商品になるとは思っても見なかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?