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365日のみじかいおはなし(337日目)

トップに立つには


とある小さな村でのこと。

村長が辞任に追い込まれた。
3年前の差別発言が取りざたされたのだ。

やがて新しい女性の村長が選任された。
が、彼女はすぐに辞任に追い込まれた。
10年前のスピード違反が取りざたされたのだ。

さらに不幸は続く。
次の村長候補はみずから立候補を辞退した。

(もしも私が村長になったら・・・)

彼が恐れていたのは30年前の大学時代の一件。
泥酔して神社の境内で粗相したことを
絶対に批判されると考えたのだ。

やがて次に村長に就任したのは、清廉潔白の女性・・・のはずだった。
しかし、彼女も辞任することとなった。
槍玉にあがったのは40年前の小学生時代。
駄菓子屋で飴玉を1つ万引きしていたのだ。

負の連鎖は止まらなかった。

次の村長は幼稚園時代に友だちをいじめたこと。
その次の村長は親が不倫していたこと。
だれかが村長になるたびに、その過去が取りざたされ失脚していった。


そしてついに。


この村ではだれも村長に立候補しなくなった。



村民の一人が、ため息をつきながらぼそりとつぶやいた。



「だれか子供を産んで、その子を清廉潔白に育ててくれないかな?」



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