見出し画像

ペットの実家がミックス犬を販売する理由

ミックス犬とは

ミックス犬(別名:ハーフ犬・ハイブリッド犬・デザイナーズドック)は、品種の違う純血種を交配して生まれるワンちゃんです。異なる特徴を受け継ぐため、成長後の予想がつきづらく、個性的な存在となります。

ちなみに「雑種」と「ミックス」の定義はほぼ同じですが、ミックスは純血種同士を掛け合わせた名称を指し、雑種は2種類以上の品種、またはどのような品種が掛け合わされているか分からない個体を指すことが多いです。


ミックスは健康なのか?

ブリーダーさんやペットショップ店員の中には、ミックスの方が健康だと主張する方がいます。

この理由は、純血種が私たちの想像以上に血が濃いから、です。

これが、ペットの実家がミックス犬を取り扱っている理由です。

純血種の血の濃さ

純血種は特定の血統を重視して交配されるため、遺伝的多様性が狭くなることがあります。ミックス犬の治療費が他の犬種より安い理由、そして純血種の血の濃さはアニコムパフェのデータが示しています。

この資料では、「混血犬(体重10kg未満)」という表現が使われていますが、実際にはミックス犬と雑種が組み合わせて含まれています。ただし、アニコムに加入している多くのワンちゃんは、ペットショップやブリーダーなどの代理店を通じて加入していることが多いため、実際の状況としては、ミックス犬の割合が高いと考えることができます。

ちなみに競走馬には奇跡の血量18.75%と呼ばれる血統理論があります。4世代前と3世代前(6.25%+12.5%=18.75%)の祖先が同じ場合に名馬が誕生するとする経験則的な理論です。健康面での弊害が出づらく、そして、血統から受けついだ卓越した能力が開花しやすいと考えられています。

しかし、ワンちゃんの場合は兄弟姉妹同士の交配や異母兄弟姉妹の交配では50%、祖父母と孫との交配では62.5%などと、競走馬に比べると血が濃くなる交配は当たりまえに行われています。

お手元に血統書がある方は是非ご覧ください。多くの方がその事実に驚くのではないでしょうか。

有名ブリーダーの血統は健康か

ブリーダーの仕事の目的は、純血種を保存していき新しい世代に引き継ぐことです。この目的を考えると「ミックスは邪道」と考えることもできるでしょう。

しかし、世界的にも有名な血統の純血種には生理がこない母親犬や、身籠っても死産してしまう母親、そして種なしの父親など子孫を残しづらい血統があります。そして、「10歳で長生き」と言われるほど短命な小型犬有名血統もあります。

これらのワンちゃんは純血種の血統として高く評価されますが、品質の良い犬であるかどうかと、健康な犬とはまた別物です。

私たちが決めた犬種のスタンダードやその犬種の個性に当てはめてブリーディングをしていくということは、寿命や健康面に問題を抱える可能性があるのです。

そして、純血種を作り守る過程の中で、多種多様な犬種を掛け合わせて標準化してきたことも事実です。例えばチワワのロングヘアーはパピヨンやポメラニアンの血も混じっているため毛が長くなっています。

純血種の歴史は何度も他の犬種と掛け合わせ、特定の個体を作り上げてきました。他の犬種と掛け合わせた訳は、血を薄くし、健康な個体を作るためです。その歴史を考えると一概にミックスは邪道だとは言う事はできません。

しかし、「ミックスを生み出すブリーダーなんて」と言われている原因もあります。

それは、純血種として血統書が出せないからブリーディングしている場合があるからです。

ミックスの悲劇

悲しいことに過酷な環境で繁殖を余儀なくされている犬や猫はたくさんいます。まともに管理できていなければ、だれが父親なのか分かりません。

そして遺伝病を持っている場合、純血種においては高値で取引されません。

例えば、トイプードルには進行性網膜萎縮症PRAという遺伝病を持っている可能性がありますが、買い付けた子犬がこの遺伝病をもっているという事が分かれば、ペットショップが次から購入してくれる可能性は低くなります。

このような理由から、遺伝病の検査をしない「ミックス」として売り出すことがあります。ミックスの価値が上がっている今だからこそできることです。血統書を発行しない分、手間も減ります。

また、珍しいからと体格の違う個体をブリーディングし、骨格に異常をきたす場合があります。

極端にいえば、大型犬であるゴールデンレトリバーと世界最小であるチワワを交配させた場合(ミックスの場合、母体に負荷がかからないように大きい方を母親にします。)、正常に育つかは定かではありません。

珍しいからとミックスを安易に繁殖してしまっては、失敗作と呼ばれてしまいます。

ミックスブリーダーは悪か、邪道か

ミックスブリーダーはこれらの理由などから、単なる命の売買を行う「繁殖屋」と言われることがあります。しかし、ミックスをブリーディングしているから繁殖屋なのでしょうか。

相手がいないからと近親交配を重ねた純血種のブリーダーは、良いブリーダーなのでしょうか。ショーで結果を残せば、シリアスブリーダーなのでしょうか。10年も生きないけれども、その血統が高く評価されれば世界的に評価されるブリーダーになるのでしょうか。

本当に優良かどうかは、遺伝的問題を後世に残さないように配慮をし、家族のためにしっかり説明を行い、全うな環境で飼育しているブリーダーだとペットの実家は考えます。

これらの理由から、ペットの実家ではミックス犬の取り扱いをしています。

ブリーダーとして、一時的な利益やショーの成績だけでなく、将来の健康や幸福を考慮し、遺伝的多様性を保つためにミックス犬も大切にしています。家族として適した子犬を提供し、長期的な健康をサポートすることが我々の使命だと信じています。

参考文献:
よく分かる犬の遺伝学
尾形聡子 著 誠文堂新光社 (2014/1/20)