生き物を迎える覚悟

まずはこの記事をご覧下さい。

この記事にある事はどのショップでも起こってる事です。ウチでも昔ありました。トラブルを望んでいるショップは一つもないけど、ウイルスは目に見えないのでショップ側はどの子が突然発症するのか常に怯えています。

それは、ショップは色々なブリーダーから仕入れた犬が混じり合っているから。どの子が突然発症するのか分からない恐怖に怯える、さらに一頭が発症すれば時すでに遅しですでに周りの子たちにも感染が広がっている可能性があり、いつ終わるか分からない不安は続きます。

まさに『毎日がクイーンエリザベス号状態』なんです。解決策は生体販売を止めるか、生後6か月くらい経ってワクチンが3回終了している子だけを扱うか、引き渡して数日でショップで感染していたウイルスが原因で亡くなっても生体代金だけの返金でそれまでにかかる治療費は一切補填しない事を重々納得して署名をしてもらって契約する事くらいです。

もちろん、保険からはみ出る分を含め、引き渡し後◯日間の間に掛かった医療費は無制限に全額負担します、というのが購入者から見れば一番安心かもしれませんが、残念ながらそんなペットショップはありません。

ショップで感染していたことが原因なのに購入者が治療費を負担しないといけないなんておかしい、と思われるかもしれませんが、そこはどんなに可愛い生き物であっても購入者がお金を支払って契約書にサインして購入している限りあくまで商取引です。

動物病院は自由診療なので、同じ症状に対する治療であっても1万円請求することもあれば様々な検査、投薬、処置をして80万円請求されることもあり得るので、ショップ側からしたら予め万一の時に生じる損害額の限度を確定しておきたいのは当然といえば当然なんです。

車の場合、新車を引き渡したけど納車してすぐにエンジンに致命的な欠陥が見つかったとします。修理するにはエンジンを取り出して全て分解して、なんてやってたら新車価格以上に費用がかかるので別の新車をお渡しします、となったら恐らく納得しない購入者はいないと思います。

これを読んで、物と一緒にするな、生き物を何だと思ってるんだ、そんな感情を抱く方がいるかと思いますが、ここに生き物をお金で購入する事の難しさがあります。要は、生き物をお金を支払って購入する以上、今回の記事のような事が起きる可能性がある事、それが起こった時にどのような対応がされるかという事、そしてなりよりその対応で自身が納得できるのかという事、そこも含めて購入者にも「覚悟」が必要だという事です。

ただ生き物として最後まで大切に育ててあげる、という覚悟だけではなく、そのような不測の事態が起こった時に納得できるか。可愛い子を目の前に気持ちも高ぶり、楽しい事ばかりを想像してしまうと思いますが、生き物を迎える事には金銭に変えられないリスクが常に潜んでいる、という事を多くの方に知ってもらえればと思います。

ちなみに、生き物ですから、ペットショップだけに限った話ではなく、もちろんブリーダーから直接迎えた場合でも同じです。ただし、ウイルス感染に関してはペットショップで迎えることに比べると遙かに低いです。それは前述のように色々な環境で育った子達が混ざり合っているわけではなく、生まれた時からずっと同じ環境で育っているので外部からウイルスが入ってくる確率が低いからです。もちろんペットショップに比べると長い時間母親の元にいるので免疫力がついている、という事もあります。

以上、イギリスで2020年に制定されたルーシー法(生後6か月以内の子はブリーダーから直接購入しないといけないが、6か月以降の子はペットショップで販売してもOK)というのはよく出来てるなぁ、というお話でした。

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