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オンザノハツモン?

「オンザノハツモン、ヒチジュウゴニチ」。
明治生まれの祖母が、食卓で、台所で
よく口にしていた呪文のような
この言葉の意味を知りたいと思った。

泉州の人であった祖母は、静かに響く
古い大阪ことばを話した。
だから「ハツモン」は、きっと「初物」、
「ヒチジュウゴニチ」は、75日。

じゃあ、「オンザ」って?
(猫は小首を傾ける)

「帰家穏座(きかおんざ)」の「穏座」?
ナワバリを見回ったあと、
家に帰って、のんびり
お香盒をつくって居眠りしていたりする、
あの「穏座」???

こんな時には、ネットが便利。
使い始めてまだ一年とたたないけれど…。

「初物」に関係ありそうだから、
この語の周りをクンクン。
「初物」の反対語…に、「終わりの初物」、「末の初物」
そして「穏座の初物」。

「穏座」は、ここでは、どうやら、宴のあとの二次会のことみたい。
盛りの時は過ぎてくつろぐ、人も、大地も。

   *   *   *

「初物75日」と聞いたことがある。
季節に初めて採れた作物を口にすると
寿命が75日延びるとか。
「穏座の初物」でも75日命が延びる?


自信を持って(おヒゲ、ピ~ン)
「もちろんですとも!」

怠け者の猫は、自分では
種を蒔くでもなく、収穫するでもなく
買い物にさえ行かずに、すっかり宅配に頼っているが、
毎週届く案内の、野菜や果物の欄には
こんな言葉が添えられていたりする。
〈今季・初出荷〉〈今季・最終〉

〈今季・初出荷〉
はじまりの予感。
さきがけのときめき。

〈今季・最終〉
盛りの時が過ぎれば、
行く季(とき)を惜しんで
その名残を味わう。

初物も、穏座の初物も、
廻りめぐる季節の贈りもの。
自然の営みの、可能なかぎり邪魔はせず、
悠久の〈時〉の恵みを
全身で受けとめてー

人も、猫も、
ただ、あるがまま、
いま、あるがままで、
帰家穏座。

それは、きっと
しあわせの、ひとつのかたち…。

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