散文詩「頭文字」

丘の上にはチューリップが優しく揺れていた。
机に突っ伏した私は春の麗らかな誘いに乗り深い眠りに落ちた。
肌を柔らかな風が優しく撫で回し、燦々と金粉を振りまく日差しは益々春を炙ってゆく。
色鮮やかな花々は金粉を浴びようと背伸びをしている。
もう正午を回っているだろうか、卓上の時計の針は、二つとも右に傾いていた。
水の音が麗らかな風を揺らし、優しく弾け飛ぶ沫は楽しそうに笑う。
森が瀬鳴りに合わせしめやかに揺れている。
三日月は出る頃合を間違えたのだろう、辿辿しい気持ちを隠せないまま、ちょこんと透き通った空に浮いていた。


高1の時に書きました。

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