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swan lake ヘッドドレスについて

Petit écrin étoile(プチエクランエトワール)のeriと申します。ロリータファッションのヘッドドレスやアクセサリーを製作しています。

以前私が作家活動に踏み出すきっかけの一つとして『ミッドナイトスワン』を映画館で見たことをお話ししたことがあるかと思います。

この映画のとても好きなシーンが冒頭1〜2分間に詰まっています。
タバコに火がつき、赤いネイル、暖かい照明の明るいミラー、赤い口紅をひきながら「もう泣かない、アイライン流れてるじゃない」。
ショーパブのバックステージで主人公の凪沙と3人の同僚がショーの準備をしている光景です。
失恋の悲しさで肩を落として泣く人、慰めたかと思ったらいつのまにか自分の惚気話をする人、お姉様は達観して「男に消費されたら終わりだからね」、そして「さすがお姉様」とクールなハイタッチ。

当時気分の落ち込みが酷く、大好きなおしゃれもなにも出来ず、仕事以外の時間の殆どを泣いて過ごしていた私はこれは絶対泣く映画だから見に行こうと思いました。どうせずっと泣いているなら苦しくない理由で泣きたい、と思ったからです。
映画が始まると白熱球のような温かみのある光と影の薄暗さの中で白と赤がはっと映りました。
もう泣かない、アイライン流れてるじゃない。
仲間の失恋を慰めながらみんなで揃って白い手袋をはめ、揃って後ろを向き赤いバレエシューズ履いて、揃って向き直って白い羽のヘッドドレスをつけて、そのたび揺れる白いチュチュ、ステージに向かって暗がりを駆け抜けていく白いチュチュ、ときめきが止まらない2分間でした。このためにもう一度映画館に行き、何度かレンタルもしているくらい好きなシーンです。

家に帰って思い返し、現実じゃなくて映画だから全部人が一から作っているんだと思ってとてもすごい事だと感じました。
誰を撮るか、どこで撮るか、周りの小道具やセリフ、動作、衣装もそうですし、どの音を拾うか、照明やカメラの画角、タイミングまで誰かが考えた上でできているものなんだと思い、何かを作ることへの憧れが急に湧いてきました。

当時はあまり現実的に思えないことでしたが、
自分で考えたことを何らかの形で表現したり、何かを作れるようになったらきっと今より幸せになれるのかもしれないなぁ…、とぼんやり考えるようになりました。
(映画館に行くのが楽しみになり、このあと『魔女見習いをさがして』を見て背中を押されることになりました)

まだ私はハンドメイド作家やデザイナーとしては駆け出しですが、今は以前の自分では考えられないくらい楽しく刺激の多い毎日を送ることができています。


前置きが長くなりました。今回はswan lake ヘッドドレスのnoteです。
このヘッドドレスはミッドナイトナイトスワンでもモチーフとなった"白鳥の湖"をテーマに製作したアイテムです。

白×シルバーと黒×ゴールドの2色展開。
それぞれオデット、オディールを表しています。

バレエには詳しくありませんがバレエの曲を聞きながら散歩するのが好きで、白鳥の湖は聞いていて好きだと感じる曲が沢山あります。
特にオディールが踊る曲(1分半くらいの、最後盛り上がる方の曲です)が好きで繰り返し聴いてしまいます。

白鳥の湖をモチーフにしたヘッドドレスは前々から作りたいなと思っており、その頃から羽を使うこと、飾りはソウタシエときらきらしたもので作りたいと考えていました。
ソウタシエは通常コードをカボションやパールにくるくる巻き付けるようにして縫っていきます。まるでバレエのターンのように形ができていくため、まずこれがデザインの中で最初に決めた部分でした。

コードの色選びによって、色同士のハーモニーを楽しめるのもソウタシエの魅力です。
当初は白とシルバー、黒とゴールドの2色で作ろうと考えていましたが、実際に試作してみると白または黒一色で作った際の雰囲気が好みだったため単色で作ることとしました。
黒は渋く、白はピュアな印象に仕上がりました。とても気に入っています。

中央のモチーフはドロップ型の大きなクリスタルガラスをより大きく見せるため、間にガラスビーズを挟みながらコードを縫うことで大きなサイズのモチーフを作っています。
四隅に付けた小さなモチーフはクリスタルとコットンパールを使用しています。バレエの軽やかな踊りを想像し、軽いコットンパールがイメージ通りだと感じて選んでいます。
仕上げにシルバー、ゴールドのマットなパールをモチーフ内のアクセントとして縫い付けていきました。

今回プチエクランエトワールのヘッドドレスでは初めてコームタイプを販売することになりました。(ブランド初めたてに試作で作ったことがあるのですが販売せずに終わりました) 

(実はイベント後で荷物整理が残っているためコームの写真はまた後日追加しようと思います)

今回は針金が入っており、頭の形に合わせて曲げることのできるヘッドドレス土台を使用しています。
この土台にシャンタン生地、その上にシフォン生地を二重にして重ねています。
このシフォン生地は大のお気に入りで、ブランド内で定番化してきているSolenne ヘッドドレスでも使用しています。

粉雪のようにふわふわでさらさらのシフォンです

Solenne ヘッドドレスではぎゅっとギャザーを寄せてフリルを作っているため、空気を少し含んだようなふわっと感があります。
対して今回のswan lake ヘッドドレスでは曲げ伸ばしをしても土台にフィットするように真っ直ぐ張っているため、表面のさらさら感が強く出ています。
同じ布でもこんなに感じ方が変わるので布選びは本当に面白いです。

アイテムの輪郭をはっきりめに見せるために左右の縁にはスパンコールをつけています。
こちらもブランド内でよく使っている、フランス製の太陽のような形のものです。
今アイテムは固いヘッドドレスにソウタシエ、ガラス、左右対称、と全体的にカチッとした要素の多いアイテムであるため、少しの抜け感を出すために追加しました。
私の中では「なんかちょっとパリっぽいぞ」と思いながら(根拠はないです)縫い付けています。


ヘッドドレスのデザイン自体は白と黒で同じになっています。材料も「色は違うが同じ素材・形のもの」に拘って選びました。
オデットとオディールは王子様が間違えてしまうほどそっくりな見た目だったというストーリーをアイテムにも反映させたいと考えてそうしています。

素材の中で羽に関してはちょうどいい大きさのものが安定して手に入りにくいため、その時々によって手に入るもののなかで、イメージに合いそうなものをバランスを見ながら使用していく予定です。
いつお手に取っても喜んでいただけるように素敵な羽を選んでいきたいと思います。

透明と黒なのでわかりにくい部分ですが、ガラスの色の選び方はオデット、オディールで対照になるように選びました。
小さなガラスビーズ→四隅のモチーフのクリスタル→中央のドロップ型
の順で大きくなるにつれオデットははっきりと、オディールは薄くなるようにしました。
オディールの曲が推しといいつつ、心の中ではハッピーエンドを望んでいたのかも知れません。

プチエクランエトワールを初めてそろそろ2年になります。
当時SNSの発信の仕方もあまりわかっておらず、写真も全然撮れず、人と話すのも自信がなかった状態でしたが、今は学びも含めて全てが楽しいです。
販売した品も大小合わせて250を超え、それだけ沢山の方とおしゃれを通じたご縁があったのだと思うと胸がいっぱいになります。

今回のアイテム製作では今の活動へのきっかけに対してもアプローチでき、製作の中でいい思い出ができたと感じています。
また成長を実感できた時などにこういった機会を作っていきたいと思います。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございます。

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