ペーパー・ムーンの詩学~遙かなる二十世紀詩 (2)〈瓶詰めのイメージ〉
「月の光を殺そう!」
西脇順三郎は『雑草と記憶』というエッセイのなかで
と述べていますが、ヒュームもまたロマン主義者たちが神秘性の象徴として好んで取りあげ、思い入れたっぷりに歌いあげた題材である「月」の姿を一個の風船玉としか見ません。
未来派もまたロマン主義的な月のイメージに反発します。彼らは数百個の電気の光をかざして月の光を抹殺しようとします。
稲垣足穂(1900-1977)は十代のころ未来派芸術に出会い衝撃を受けます。やがて彼らの思想の底流にベルクソン哲学が流れ