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ペーパー・ムーンの詩学~遙かなる二十世紀詩

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現代詩とはなにか?をイマジズムに始まる20世紀詩のイメージ革命をたどることで私なりに考えてみました。 T.E.ヒュームから寺山修司まで。
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#寺山修司

ペーパー・ムーンの詩学~遙かなる二十世紀詩 (4)〈荒地派の悲劇〉

鮎川信夫のモダニズム批判 鮎川信夫(1920-1986)は第二次世界大戦後の日本における---いわゆる「戦後詩」と呼ばれる---最も有名と言っていいであろう詩人グループ「荒地派」の代表的詩人でありスポークスマンでした。 彼もまたヒュームやエリオットから強い影響を受け、春山行夫等が編者であった詩誌『新領土』にも参加していますが、戦後は一転してモダニズムを批判する側に回りました。 鮎川は「現実の生に対する源泉的感情を失ったところに、優れた作品が生まれるわけがない」(「現代詩と

ペーパー・ムーンの詩学~遙かなる二十世紀詩 (5)〈怪優奇優侏儒巨人美少女、さあさあお立合い〉

寺山修司二十歳のおりのエッセイ(「カルネ---<俳句絶縁宣言>」)に「美学をぼくはVOUクラブで学び、…」という一節があります。「VOUクラブ」は北園克衛が結成し、詩誌「VOU」を発行していました。北園は高校生の寺山が送ってきた同人誌を読んで、その才能に興味を持ち、大学入学のため上京した寺山をVOUクラブに参加させています。 北園は「幾何学的な芸術、T.E.ヒュームのオピニヨンに共通した非人間主義的な傾向を鮮明にしていた」(「黄色い楕円:一人のVouポエットの記録」)と書き、