【91-100日目】100ラジを100倍楽しむためのファンブック ~現役放射線技師が「100日後に吸着事故を起こす放射線技師」を解説する~
企画の主旨はこちら↓の「はじめに」をお読みください。
91日目
クセの強い老人の描き分けに定評のある、からばく社先生です。
様々な理由で入れ歯を外してもらう検査というのは多いですが、忘れものされたら困るものランキング1位です。まず名前書いてないしね。そもそも入れ歯にしろメガネにしろ杖にしろ、「それが無いと日常生活に困る」から使用しているわけで、それが無いことにすぐ気づかないのは何故なんでしょう。杖を検査室に忘れていく人は、帰りは杖が無くても帰れるならそもそも杖は必要ないのではないか。
ところで、「入れ歯を外してもらった後の患者さんの手」ってどう思いますか?コロナ禍なので言いやすくなったのですが、私は最近「いま入れ歯を触ったのでまたアルコールしてもらいますね~」って患者さんの掌にアルコール1プッシュ出すようにしました。PET検査のときなんかは検査直前にトイレに行ってもらうんですが、検査室に呼び入れるときに貰う「患者確認票(取り違え防止のIDバーコード印字してあるやつ)」がビシャビシャに濡れてたりするとテンションがダダ下がりします(一応トイレにはペーパータオルがある。そしてビシャビシャなのは高齢者に多い)。
このマンガのように入れ歯を裸でテーブルの上に置くことは無いと思いますが、「外してもらった入れ歯」ってどうしてるでしょうか?
①透明のビニール袋を渡してそれに入れてもらう
②包み紙を渡してそれに包んでもらう
上記の2パターンが考えられますが、②の場合は忘れられる率が高いように思います。ちなみに当院では包み紙に包まれてかごに置いてかれた入れ歯を、技師が使用済みチリ紙と勘違いし捨ててしまったというインシデントまで発生しています。一方、こちらが包み紙を渡そうと手に紙をもって差し出すと、その私の手の上に入れ歯をダンクで置いてくる方もいらっしゃいます。いや要らねぇから!あ、これもマンガにしてもらいたかったな。
92日目
これは全男性はヒィィィーってなりますね。というか女性は逆に、こういうのを見てヒィィィーってならないのでしょうか。
「ねじ子のヒミツ手技」でおなじみのねじ子先生曰く「天高く持ち上げ」と「キシロカイン爆弾」が効果的だそうです(医学的どうだどかは知らん)。高齢女性の膣誤挿入は臨床的にもよく遭遇しますね。
放射線技師的には「尿道ブジー(拡張術)」という手技につくことがあります。種々の理由で尿道が固く狭くなってしまい排尿が困難になってしまった場合、金属や硬質プラスチックでできた棒状の道具を、細いものから太いものに順番に尿道に挿入し、徐々に拡張していくという手技です。その際に器具の走行や深さを確認するためにX線透視を使用するのですが、完全にヒィィィーってなります。
お食事中の方がいらっしゃったらゴメンナサイ。あとこの文献のイラストも草生えますので見てもらいたいです↓。
尿道狭窄-手術療法を中心として-|昭和医学会雑誌第第2号
93日目
9日目の「病院を受診したときの『職業欄』に何て書くか問題」の上位互換みたいなものですね。最近は某ラジエーション系ドラマのおかげで「あー、あの月9のドラマになった職業ですね」って話が進んだりするのでありがたいです。「伸びてきたんで全体的に量減らす感じで」って、全然伸びて見えないのですがボウズに並々ならぬこだわりがあるのでしょうか。
美容師さんて結構ラフに「お仕事とか何されてるんですかー?」って聞いてきますけど、地雷踏んだりしないのでしょうか。病院で働いていると結構な頻度で夜のお仕事だったり社会に反してそうな方だったり、そもそもお仕事されていないような方に接するので(そもそも聞く必要もないですが)「お仕事は?」って聞けないですよね。医師が診察時に外来で問診してくれた情報が頼りであり、それは医学的にもある程度必要な情報ではあります(疾患のバックグラウンドになっていたり、継続できる治療方針の立案のため)が、個人的には美容室での会話は求めていないので、変な事聞かないで黙って髪切っててくれていいんやで、って思います(そしてリアワではそのようにしてもらってる)。
さらに言えばなんですが、我々医療従事者には守秘義務があるので「この前こんな患者さんが居たんですよ~」ってなかなか言えないのですが、美容師さんだと「この前他のお客さんが言ってたんですけど~」って結構言いますよね。余談。
94日目
「お仕事とか何されてるんですかー?」って聞いてみましょうか。無理ですね。
吸着マンガなので入れ墨(タトゥー)についても触れておかなければなりませんね。
「タトゥーを入れている人はMRI検査は受けられないの?」という問題についてはここではシロともクロとも明言はできませんが、FDA(米国食品医薬品局)は下記のように述べています。
上記文言を解釈すると、少なくとも医学上MRIが必要な検査であると医師が判断した場合に、タトゥーを理由にMRIを避けることは不適であると考えられます。一方「検診や人間ドック」あるいは「患者の強い希望」などの場合では、敢えてMRI検査を選ばずに他の検査で代替できないか考慮、あるいは熱傷等のリスクを説明し同意を書面で残す、といった対応が取られると思います。実際に私が見聞きした中でも、必要な検査であればタトゥーを理由にMRIを中止した話は聞いたことはありません(リスク説明と同意の念押しは結構する)。またSAR(比吸収率)という値が高くならないように放射線技師が適切にパラメータを調整し、極力安全に検査を行なえるよう努力されています。
彫り文化関しては私自身明るいわけではありませんが、現在日本国内で多く使用されている入墨顔料には金属成分がほぼ含まれることが無いそうです。しかし、万が一彫り師が海外から質の悪い顔料を安価に輸入で仕入れていた場合はどうか、という可能性のみは考慮した方が良いのかもしれません。病院で使用される薬剤などは基本的に全てロット番号管理されており、トレーサビリティ(どの患者にどんな薬剤を使用したかを後から追跡できるようになっている)が担保されていますが、入れ墨顔料についても、せめて施術を受ける被検者自身があとから自分が使用した顔料について調べられるような状態であればよいかなぁ、と個人的には思います。
上記画像はアートメイク(まぶたの入れ墨)による画像への影響です。日本は画像診断機器大国ですので、生涯1回はMRI検査を皆受けるのではないかと言っても過言ではありません。当然顔料の成分により画像への影響の程度は様々でしょうが、MRI検査が非常に有用な部位である眼や肩、肘、膝などはなんとなく避けた方が良いのではないかなぁと個人的には思っていたりします。
95日目
「病気が見てくる」は怖いですね。こちらが病気を覗くとき、病気もまた、、、的な。放射線技師ピンチ。
国家試験が終わった瞬間に中古本屋やメル〇リに一斉放流されるというのはあるあるです。あんまり古い版だとガイドラインとかが変わっている場合もありますが、国試直後の放流物であれば問題ないでしょう。
そう言えばメ〇カリで思い出したんですが、放射線技師が良く受験する何かの認定資格の過去問をフリマアプリに放出されて炎上した案件がちょっと前にありましたね。結構簡単に足がつくと思いますので、やめといた方がいいですよ。
「BBA in the SKY」の元ネタが分からなかったので調べたら出てきた洋楽でも載せておきます。
96日目
嘘だと思うでしょ?これあるんですよ。しかもセクハラ金玉オジと違って本人には悪気が無いので一層つらい。68日目と併せて読みたい作品です。
もちろんこちら側の説明不足である可能性はおおいに結構あり得るので、その点に関しては非常に申し訳ないのですが。しかもマンガでは高齢男性で描かれていますが、実は高齢女性が上半身裸で出てくることも多いです。しかも「ああーーーーっっ!患者様!この検査着を着てください!!」と言っても「あら、そうだったの?でも、いいからいいから(ニコッ)」って言われる。こっちが全然よくないんだが。
97日目
ドキッとした方、非常に多いのではないでしょうか?私も自戒を込めてになりますが、このネタに考えさせられる部分が多いと思います。
放射線技師の業務だけに限っても、たしかに昔は色んなものがアナログであり技師の経験と勘に頼る、まさに「職人芸」と呼ばれる業務が多かったと聞いています。それがデジタルに置き換わり、ある程度デフォルトや自動で業務をこなせるようになり、確かに「楽になった」部分もあるのだとは思います。
コロナで有名になった(?)神戸大の岩田健太郎先生の寄稿です。
医学知識の量=放射線技術学の量、ではありませんが概ね相関の関係にあるのは間違いないでしょう。これは何も私が若い子に媚を売っているわけでも無く、本心から言えることとして「いまの若手は覚えなければならないことが多い」です。当然私たち先輩にあたる人間も日々知識をアップデートしていくのですが、若手はそれをより早期に、なんなら卒業と同時に求められる状態にあります。「こんなことも知らないの?」の「こんなこと」あなたは新人の時から知っていましたか?業務のなかでこうやって覚えていたのではないですか?日々自問していきたいものです。
医療業界に限った話でもなく、「俺が若いころは大変だったよ」の類いの話は総じて無視で良いでしょう。若手にとっては景気も悪く雇用も昇給も不安定な中で重労働を強いられる昨今、せめて理解のある上司にくらいは恵まれたいものです。「自分がこれだけ苦労してきたんだから、同じくらいの苦しみを後輩も味わうべき」という発想は捨てましょう。主人公は最近ウザキャラになりつつありこの後の食事は断られた可能性もありますが、「負の連鎖を断ち切る」判断には賞賛を送りたいです。
98日目
「整う」というのはサウナ用語で“何もかもがどうでもよくなるくらいめちゃくちゃ気持ちいい”状態のことを指すそうです。
(出典:サウナ用語「ととのう」ってどんな状態?最強に快感な「ととのう」への道)
さてMRIに入って寝てただけなのに、なぜ「ととのった」「サウナか」のやりとりになるのでしょうか?
このシリーズを通して「金属の持ち込み」「吸着事故」「入れ墨の発熱」に関して何度も警鐘を鳴らしてきましたが、(MRI検査を実際に受けた方はわかるかもしれませんが)実は金属や入れ墨が無くても、正常な人体でも、MRI信号を発生させるRFパルスの影響で多少発熱します。MRIというのは(ものすごく雑で語弊のある言い方をすると)「巨大な磁石でできた部屋のなかで、電子レンジを稼働させる」ものです。「巨大な磁石により生体内の水素原子を一定の規則に合わせて整列させ、電子レンジで使用されるラジオ波によって水素原子の整列を乱し、その差をコントラストとして画像化する」などと、看護学生さんには説明したりします。適切かどうかは知りません。
MRI検査は「狭い」「音がうるさい」「検査時間が長い」など割と患者さんから不評な要素が多い検査ですが、検査慣れしてる患者さんはたまに「何だかポカポカして気持ちよくてグッスリ寝ちゃったよ、あははー」みたいな強者も居ます。
「ミリ」は「1000分の1」ですので、現在広く国内で使用されている1.5テスラのMRIと比較すると、1000*(1.5/80)=18.75倍ですね。特に意味のない計算です。
「zzz...」のなかに「ZOC」を発見しました。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
99日目
「団子」が「おだんごヘアー」、「茄子」が「ナース」を意味するのだとすれば、LINEのお相手はあの方でしょうか?思えば物語の折り返し地点の50日目はこんなネタでした。
そして85日目は
なんというフラグ。どう転ぶのか。どう転ぶのか。
99.5日目(予告編)
99日目のツイートにぶら下げてあったyoutubeのリンク先には、100日目の予告編ともとれる動画がアップされていました。なんちゅークオリティだ。。。これにも(たぶん)細かすぎて伝わらない小ネタが散りばめられているのですが、時間がかかりそうなので後回しにします。個人的にはジト目先輩がマーゲン装置の圧迫筒でじいさんを弄っているのがツボでした。
※【募集】
・歌詞を聞き取れた方
・散りばめられた小ネタに何か気づいた方
→youtubeコメントかtweetにコメント入れてくれると(私の解説が)捗ります。
100日目
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さて、どうしたものか。
いや!頑張れ!頑張れ山田頑張れ! 俺は今までよくやってきた! マスク美人の回もなんとかエクストリーム擁護で完璧に乗り切った!俺はできる奴だ! そして今日も!2022年も! 俺が挫けることは絶対にない!(ちなみに私は次男です)
まずこの謎のアフリカ系マッチョ集団の正体はこちらです。
一般社団法人 WORLD SMILEが提供する「世界からのサプライズ動画」というサービスです。使い方としては「何か現地の方々がお祝いメッセージくれた!?これどうやったの?合成!?」って感じで結婚式とか余興で使えるネタサービスのようです。上記記事から引用します。
人によってはこの活動を「貧しい人をネタ素材にして利益を得る、偽善の慈善事業だ!」を不快感を覚える人も居るかもしれません。しかし「やらない善より、やる偽善」と言う言葉もあります(この事業が偽善だといっているわけではありません)。何より、出演されている方々も、それを見た私たちも笑顔になっているのは事実ではないでしょうか?
100ラジのアカウントは先日ついに2万フォロワーを超えました。放射線技師関係でこんなにも巨大なアカウントにまで成長したのは、ひとえに毎日の更新を楽しみに待っていたファン、そして時折差し込まれるsuzuriの商品を購入することによる支援の賜物。そのファンからの声援を、どうやって皆さんに、優しい世界に還元しようか。その方法として選ばれたのが今回のネタだったのではないでしょうか。100日後の本家であるワニは、最終的に死んでしまいました。でも100ラジは笑顔で終わらせたかった。きっと、そのような想いが作者にはあったのかもしれません。
ちなみに動画の中では3発の「空砲」が空に向かって撃たれました。物語の作者である「からばく社」さんの「空曝射(からばくしゃ)」。これは「X線フィルムを準備しない状態で患者にX線だけを照射してしまう」という、放射線技師にしかわからないようなあるあるネタです。
さてもう1つ。みなさんこの100日目のネタを見て「何もないのかよ!!(怒)」のような感情を持ちませんでしたか?
例えば夜間緊急でMRI検査が依頼されましたが「結果、なにもなかった」。こんなとき「もぉ~、こんなんで夜間にMRI入れるなよ~」みたいな意見って、見聞きしたりしたことがありませんか?(実際にtwitter上でも「何も無かった時に気まずくなる」みたいな医師のつぶやきがありましたね)
私たちはこの100日目を迎えるにあたり、無意識に「何かある」ことを期待してしまっていました。画像検査を行うたび、何か所見を発見しては興奮してアドレナリンを出します。でも本当は「何もなかった」事こそ、患者さんの本当の喜びなんです。当然、病気があるのであれば、適切に発見し治療に導くのが正解。また「何も無いことを証明する」というのは非常に難しいものではありますが。
日々の検査の多くは「病気の治療後/経過観察のフォローアップ」です。緊急時の一秒を争う撮影とは違い、我々の中では「ルーチン検査」と呼ばれる、流れ作業とまで言えてしまう検査。しかし、患者さんにとっては半年に1回、年に1回の大事な検査です。前日は「再発していたらどうしよう」「悪くなっていたらどうしよう」という大きな不安に包まれています。
診断を下す医師、患者に説明する医師が「何もありませんでした。良かったですね!」と自信をもって患者さんをと喜びを分かち合えるよう、くだらない「あるある」に包まれた私たちの日常にこそ、実は本当に大事なことがあるんじゃないか。放射線技師として働くうえで「何かあることを期待するな」という非常に重要なメッセージを我々は胸に刻まねばありません。
この物語に向かって吸着事故を起こしていたのは、実は我々の方であったのかも知れませんね。
さて、ここまで10回にわたって(勝手に)続けてきた解説記事も節目を迎えました。この営みを通じて私をフォローしてくださった方も多くいらっしゃると思います。他人の人気に便乗してではありますが、こうして放射線技師の苦労や私個人の考えを多くの人の目に届けられる機会をくださった@100nichigonoRT 作者の@karabakusha 様にはお礼を申し上げます。
山田の記事はまだ少し続くのだ。
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