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【コラム】現役診療放射線技師が語る休日・夜間勤務のお話~前編~【私の放射線部...黒すぎ!?】

医畜(社畜の医療機関バージョン)のみなさま、お仕事お疲れ様です。

今日は放射線技師養成校の学生さんや、転職をお考えの方に向けてのお話になります。就職先や転職先を選ぶ際に、みなさん「目先の給料」にとらわれてばかりいませんか?当然、お金は大事ですが、この職業をやっている限り年収が同僚の倍や半分になることは(たぶん)ありません。

「QOL」という単語はよく医療において患者さんの生活の質を表現する用語ですが、むしろ生涯何十年も続ける仕事で左右される我々の生活の質、という使い方の方がしっくり来ます。昨今では「医師の働き方改革」が叫ばれるように、医師ほどとは言わなくても看護師をはじめ医療介護関係職は”黒い”職場が多いように思います(医療に限らずどの業界にも存在することは承知しています)。

そして我々診療放射線技師のQOLを大きく左右する、「夜間休日勤務の体制」について今日はお話しします。私が務める某病院某放射線部では、実は数年前に指導()が入り、勤務体制の見直しが図られました。私自身、労務関係の資格を有しているわけではありまんが、その当時に種々の文書化を担当した経験から「労働基準法に違反しないような文言」を色々と考える機会がありました。今日はその経験から、診療放射線技師(だけでなく、コメディカル全般にも当てはまる)の時間外勤務の実情についてお話ししたいと思います。これから就職先を考える方も、あるいは部署を管理する側の方々にもお役に立てればと思います。

【※注意】それなりに調べながら書くようにしますが、専門家の監修を受けていませんので、万が一法律と合わない表現があった場合はぜひご指摘ください。読者の皆様はその前提で、軽い気持ちでお読みください。

1.「え?レントゲン技師って夜勤あるの?」

これは就職当時に私の実兄からかけられた言葉です。放射線技師が病院でレントゲンを撮る職業だ、というくらいの認識はギリあると思いますが、これが一般の方の認識でしょう。

色々と放射線技師のお仕事を紹介したい気持ちはありますが、まずは「転んだら骨折かも知れないし、頭を打って頭蓋内出血があったら大変だからCTを撮らなきゃいけない」というレベルの認識で結構です。

救急指定病院(救急車が来る病院)には一次救急、二次救急、三次救急という区分がありますが、ぶっちゃけ一次と二次、三次の区別はわかりません。夜間に(24時間体制で)救急車で運ばれてくるのなら二次救急のようです。従って「二次救急指定病院」になっていれば、夜間の放射線技師の業務は存在します

あるいは、夜間の救急車を受け入れていない施設でも、入院患者をもっている病院であれば夜間に患者が転倒することはあり得ます。頭を打って症状が収まらなければ、画像検査は存在するでしょう。放射線技師が常駐するか在宅からの呼び出しかは違えど、これも夜間の放射線技師の業務は存在するでしょう。

2.「夜勤」と「当直」の違いは?

広い意味で「夜に病院で働くこと」としてこれらの用語を使用する場合も見られますが、厳密には意味が大いに異なります。

図1

「平日夜勤」はこんな感じです。わかりにくいですが、円1周が24時間で、120度の扇が8時間を表すと思ってください。普通の日勤と言うのは24時間のうちに約8時間を職場で過ごす作業なのですが、夜勤と言うのは1日の勤務時間を「その日の最後」と「次の日の最初」に設定して連続させる勤務形態です。したがって勤務トータル時間は平日日勤とは変わらず、代休と言う概念はありません。存在するのは夜間勤務のうち「22時~翌5時までの時給の”夜間割り増し賃金”」のみです。

金曜→土曜にかけて夜勤をした場合は、最初の8時間は金曜日のぶんの8時間なのでそのままですが、後半の8時間は土曜日のぶんの8時間なので、(土曜が休診の病院であれば)1日ぶん振替えの休みが貰えることになります。土曜→日曜にかけての夜勤であれば、2休診日ぶん働いたことになるので2日振替えが貰えます。私は土曜の夜勤が大好物です。

ここで強調しておきたいのは、夜勤は「日勤がずれただけ」なので、「ぐっすり寝る時間」はありません。労働基準法第34条では、『労働時間が 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない』とあり、事業者が夜勤者に与えなければならないのは「1時間以上の休憩」のみです。日本看護協会では「16時間夜勤の場合、2~3時間の休憩時間が望ましい」との要望を出しています(参考リンク)。そのため16時間夜勤の場合、2時間ほど仮眠が取れるようにしている病院が多いようです。ちなみに私の勤める放射線部では、「夜勤の休憩時間」は90分と定められています。

図2

一方、「当直(厳密には宿直)」というシステムは図のように、日勤を終えた後そのまま16時間病院にて拘束され、さらに翌日も通常日勤を行う勤務体系です。

ここで特に学生さんは思うはずです。「は?当直無理ゲーじゃね??」と。

wikipediaから要点を抜粋すると

・常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであって、定時的巡視、緊急の電話または文書の収受、非常事態に備えての待機等を目的とする。
・当直の勤務に対して相当の手当が支給される(宿直勤務1回についての宿直手当)。
・宿直については、相当の睡眠設備を設置すること。
・当直中に突発的に本来業務に従事した場合、当直として対応することは可能であるが、その際の労働に対しては割増賃金の支払いが必要となる。

すなわち放射線技師の場合、宿直は「部内の見回りをし、緊急の電話を受けて対応する技師を手配する電話当番。何もなければちゃんとした設備で睡眠するだけで1回分の当直手当が出る。ポータブルや単純CTなど突発的に本来業務(撮影)が生じたら、その時間分の割り増し賃金が貰える。」という仕組みです。ほとんど労働する必要のないことに従事するため、振替休日はありません(週40時間までと定められている労働時間に「宿直」の時間は含まれない)。

私も最初の職場の系列病院である循環器センターの宿直をしたことがありますが、業務は①時間内に終わらなかった手術後ポータブル②緊急に必要になった入院患者のレントゲン③それ以外の検査依頼があった場合の、対応する技師の電話呼び出しと装置の電源ON、の3つでした。①と②は「突発的な本来業務」であるので、1件につき30分の割増賃金が支払われていました。

3.「夜勤」「宿直」のメリット・デメリットは??

ここまで「夜勤」と「宿直」の仕組みを説明たところで、それぞれの特徴をまとめます。

夜勤
【メリット】
・自分の時間がちゃんと確保される(総勤務時間は不変)
・土日に働くと平日に休みが貰える
【デメリット】
・日勤レベルの業務を夜間に求められる
・賃金はあまり多くはもらえない
・原則「1~2時間の仮眠」しかとれない
・(勤務管理者視点)日勤帯の技師数が少なくなるので人員を多く雇用する必要がある

宿直
【メリット】
・一般に手取りが多くなる
・仕事は忙しくない(はず
・基本ぐっすり寝れる(はず
・(勤務管理者視点)日勤帯の技師は当直によって減ることはない
【デメリット】
・いくら忙しくない(はず)とは言え、自分の時間は少ない
・いくら寝れる(はず)とは言え、明けの日勤はつらい
・(勤務管理者視点)当直手当、割増賃金の負担が多くなる

「宿直」というのは「常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務」であり宿直中には「本来業務」には「突発的に」しか従事することはありませんので、基本的に「夜間に救急車で患者が運ばれてくるような病院では、宿直はあり得ない」「夜間救急車が来るなら本来業務(撮影)が発生する前提があるので夜勤である」ということが考えられます。

従って「24時間体制で救急車を受け入れている2次指定救急病院ならば、放射線技師は夜勤対応」また「時間外は救急車を受け入れず、入院患者の検査がちょこちょこある、あるいは本来業務(撮影)が発生したら担当の者を呼び出す病院なら宿直」になります。この後お話ししますが、さらに業務の発生頻度が少ないと想定される場合は「技師は院内に常駐せず、事務の当直が放射線技師に電話連絡する完全オンコール(呼び出し)」となります。

さぁ、特に放射線技師養成校の学生の皆様はどんな勤務形態の施設で働きたいでしょうか?高度な救急撮影の腕を磨きたい夜勤病院?若いうちはガンガンお金を稼ぎたいので宿直?あるいは「は?なんで夜に病院に泊まらなきゃならないの?オンコールだろ」もいるでしょうか?

後編では、これらの業務形態に隠れた「闇の部分」についてお話しします。

============後編リンク予定地=============

後編はこちら。


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