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「好き」の正体


「どうして好きなの?」


わたしが周囲にバンタンが好きだと告げたとき、必ずといっていいほど聞かれる問いかけだ。



正直「好き」に理由なんてないけれど、彼らはわたしの人生に少なからず影響を与えてくれた人たちで、あまりに魅力的な彼らのことを少しでも知ってもらいたい。だからこの最難問に答えるために、人生初(かもしれない)推しの存在に戸惑いながらも、この好きすぎる感情に向き合ってみようと思う。


スパゲッティ・コード


2020年冬、世界はまだ混沌としていて、終わりの見えない暗闇の中でひっそり佇むわたしの目の前に突如として現れた7人の青年たち。
彼らは出会った瞬間からワールドスターで、数々の大きな賞を総なめにし、MV動画は億単位の再生回数を記録、新曲を出せばスマッシュヒットし、アジア人初とか新記録とか、とてつもない快挙を自らで何度も更新し続けている。このパンデミックも相まって、彼らのことは画面越しでしか見ることができないし、本当に存在しているのか時々分からなくなるほどに遥か遠い存在だ。

それでいて、「Run BTS」、「BON VOYAGE」、「In the SOOP」を見てみると、そこには何事にも(本当に何事にも)全身全力で取り組み、笑って、はしゃいで、たくさん食べて、語らい、ときには大人げないズルをして・・・
「あのイケ散らかして歌って踊っている人たちと同一人物ですよね???」
と疑いたくなるほどに彼らは普通の20代の青年で、遥か遠い存在だったはずなのになぜか親近感すら抱いてしまう不思議な存在でもある。



そして。



彼らの沼は想像以上に深かった。



沼入りのきっかけはいくつかあったと思う。
わたしはいわゆる「Dynamite新規」と呼ばれるARMYで、その名の通りDynamiteを観て歌やダンスに圧倒され、生歌であることに衝撃を受け、同じ楽曲でもステージの魅せ方や衣装がガラリと変わりまるで別の曲のように思えるほどの演出に驚き、リアル王子がいる・・・!!!とビジュアルに釘付けになった一人である。(後に王子の正体はJINであることを知り、ジンペンへと仲間入りをすることになる。)


(この時のジンくんがフリーポーズでニャンニャンしてるのが好きすぎて鬼リピートしてた。)


そこから沼の底まで沈むのにそう時間はかからなかった。
この一年、無限とも思えるほどのコンテンツを漁っては、楽曲から受け取るメッセージと、メディアを通して垣間見る表情や言動を、ひとかけらも取りこぼすことがないように追いかけている(我ながらコワイ)。

その中で、彼らのMVが何やらすごいということを知り、先輩ARMYさんの考察ブログなどを拝見しながら過去のMVを遡っていくと、そこには少年が青年となる過程でのありのままの心情を楽曲に乗せて、自らの成長を表現する壮大なストーリーがあった。

のちにナムさんはNHK SONGSに出演したとき、「夢」について「僕らの存在そのものが作品になれば、それが一番です。最終的にBTSというグループとその歴史が一つの作品になれば、それが夢ですし、ベストだと思います。」とコメントしていたけれど、まさに彼ら自身が物語で、この壮大すぎるストーリーの世界観もさることながら、映像と楽曲に乗せて届けてくれる彼らのメッセージに惹きつけられている。今も。

7人に出会ったのはたまたま偶然だったはずなのに、ゆっくりと、でも確実にわたしの心は移ろっていき、季節の境目はいつも曖昧であるのと同じように決定的な何かがあったわけではないけれど、気づいたころにはもう抜け出せないくらい「好き」になっていた。

Twitterという窓を覗けば、ARMYという巨大なファンダムによる彼らへのまっすぐでやわらかな愛の塊で満ち溢れていて、その熱量に日々圧倒されている。
わたしの愛なんてちっぽけで、その塊の一欠片にも満たないけれど、今でも彼らへの「好き」な気持ちは毎日更新し続けている。なんなら「彼らが幸せそうならわたしも幸せ」だし、「彼らが存在しているだけでなんだか嬉しい」気持ちでいっぱいになるし、さらには「彼らを好きでいる自分が誇らしい」といった気持ちまで生じている。

誰かを好きでいることが誇らしいって、なんだろう。

いつもの好きとは違うこの溢れんばかりの「好き」の正体は、まるでスパゲッティ・コードのように複雑で、わたしの日々の思考や情緒に予期せぬ影響を与えている要因にもなっている。


防弾少年団とアイデンティティ


穏やかで冷静、頭脳明晰で絶対的信頼を置けるウリリーダーのキム・ナムジュン。
いつも明るく影の努力家な愛すべき長兄のキム・ソクジン。
はっとさせられるほどに蒼い言葉を紡ぎ、言動や信念に揺るぎがないミン・ユンギ。
一流ダンサーであり、存在と行動に優しさと希望が満ち溢れているチョン・ホソク。
どんなときも真っ先に心身ともに寄り添ってくれるパク・ジミン。
美貌だけでなく、生まれ持った純粋さと素直さで誰もを虜にするキム・テヒョン。
決してブレることのない芯の強さと可愛さを併せ持つチョン・ジョングク。

7人に出会ってから、彼らの歌やダンスはもちろんのこと、それぞれのパーソナルな部分にも惹かれている。

彼らはいつも真剣に「いい大人になること」に向けて努力し続けている。人はみな多かれ少なかれ時間や環境の変化とともに変わっていくけれど、彼らは変化することを恐れずに、むしろそれを楽しんでいるように見える。
彼らは10代でデビューしてから今日この日まで、多感な時期を防弾少年団として過ごすなかで、様々な変化に順応しながらも、自らのいい部分を見失うことなく成長し続けている。

最近の『GQ KOREA』や『VOGUE KOREA』のインタビュー記事で、「死ぬまでBTSだと思います。BTSがいいです。」といったユンギさんの言葉や、「誰かが僕に“他人より優れていることは何か”と聞かれたら、僕は“BTSのメンバーだ”としか言えません。」といったジンくんの言葉を読んで、彼らがここまで言えるようになるまでの軌跡を辿ってみたりする。


ソウルの小さな事務所からデビューした防弾少年団。ヒップホップスタイルの歌やダンスは「アイドルらしくない」と冷笑され、ラップをすれば「アイドルラッパー」と揶揄され、デビューして数年間はチャートで1位が取れず、「いつになったら賞が獲れるのか」とテレビの前で涙をこぼしながら過酷なレッスンに励み、辛酸を舐める日々を送ってきた。ハイライトだけなぞれば簡単に大成したように見えるけれど、その裏側の時間は長かった。
そして、2018年。予想だにしなかった成功をおさめ、みんな混乱していたと言っていた頃。不安と憂鬱の果てに、お互いに夢と信頼を吹き込み再び歩み始め、その年の8月にビルボードで1位を、そしてもう一度ビルボード1位を獲った。
あの伝説のMAMA2018年の受賞スピーチでは解散について話し合ったと語っていたけれど、今もなお誰一人欠けることなくファンの期待に応え続けている。
どんな苦労があっても挫けることなく、お互いに笑って泣いて手を取り合り、今日のこの日まで歩いてきたことを知る。


彼らの歴史を語るエピソードは無数にあって、それを拾いあげるのはまるで砂浜から星砂を見つけるくらいに果て無く途方もないけれど、歪でも必死にきらめく星砂を見つけては、その一粒ひとつぶをそっと瓶に詰め込んでみる。たくさんの星砂でいっぱいになったその瓶は、わたしの大切なお守りだ。


7から1を引くと6ではなく0になってしまうほど、誰一人欠けてはならない唯一無二のグループとなった防弾少年団。人生でこれほどまでに信頼し合える仲間に出会えた彼らを羨ましく思う。

願わくは彼らのように生きてみたいけれど、人生を7周したって1ミリたりともできそうにない。だからこそ、羨望と、ほんの少しの嫉妬心も抱きながら、彼らの生き方をいとおしく感じている。

せめて、彼らのように生きられなくても、彼らが示してくれる生き方や考え方を借りて、わたしのアイデンティティに変換させてみようと思う。わたしがわたしらしく生きていくための道標として。


love yourself, love myself



「自分を愛そう」


彼らが自ら手掛ける楽曲を通して熱心に訴えているメッセージ。それは、彼ら自身がたくさんの恐れと失敗を繰り返して到達した境地でもある。

何度もなんども、あらゆる瞬間に、まっすぐに伝えてくれる。彼らの表情を見れば、そこには一切の迷いや嘘といった混じり気はなく、心から言ってくれているのを感じる。

誰しも愛し、愛され、理解したくて、されたくて、共感したくて、でもできなくて。多種多様な考え方や生き方があるのは至極当然のことなのに、知らずに型にはめたりはめられたり。それがやがて自らを痛めつけ、他人をも傷つけたりもする。

生きにくい世の中だ。

わたしはいつもこうつぶやいては、いろんなことを諦めていた。自分を愛することさえも。

でも彼らは違った。「僕たちがどんなかたちでもサポートするから、自分が幸せになる方法を見つけてほしい。」と言い、「あなた自身を愛するために、ぜひBTSを使ってください。」と言って、それを体現してくれる。

一緒に歩んでくれる人がいる。


そう感じられることで、どれだけ多くの人が救われただろうか。

諦めるのはまだ早いのかもしれない。そうやって、わたしは自分を愛してみようと考えてみる。

些細なしあわせでいい。わたしがわたしを否定するよりも肯定できる日が多くなるように努力していきたい。そんな風に思わせてくれたのがバンタンで、今だかつて出会ったことのないグループだった。


防弾少年団で広がる世界


彼らを単なる韓国の7人組アイドルグループと呼ぶにはあまりにも安直だ。


確かに彼らは鮮やかな髪色と衣装を纏い歌って踊っているけれど、それを聴く人が誰なのか、どこから来たのか、肌の色やジェンダー意識は関係ないと教えてくれる。

そして、彼らの悩みや弱みさえ、わたしにとっては救いになる。
weverse magazineの「BE」カムバックインタビューでテヒョンさんが、自身が手がけた「Blue & Grey」について当時の心境を次のように語っていた。

V: 仕事が大変だった時期でした。僕は、僕が幸せな時に仕事をしたいし、いい姿でファンに会いたいのに、やらなければならないことがたくさんあったんです。自分はゆっくりで、のんびりした人なのに、ぎゅうぎゅうになりすぎて壊れてしまいました。それで非常につらかったですし、僕がいま進んでいる道の先に何があるんだろう、成功も大事かも知れないけど、幸せになるために歌手をやっているのに、どうして今、幸せじゃないんだろう。そんな時、「Blue & Grey」を作り始めました。




ときには胸がキュッとするほどありのままの心理状態を表現し、彼らが悩みや辛さを共有してくれるとき、彼らはわたしと同じ人間であることを再認識し、それと同時にわたし自身が抱える孤独感や焦燥感がほんの少し和らいでいく。


V: 誰かが落ち込んでいる時、どうしたらいいか分からない人に「頑張って」と言うより、「最近、落ち込んでいるね」、「最近、頑張ってと言われても、頑張れない状況なんだね」と言ってあげた方がいいじゃないですか。「Blue & Grey」も同じです。「いま落ち込んでるよね、僕もそうなんだ、僕たち一緒だね」、「僕が今、君の気持ちを話してみようか。君は今、幸せになりたいんだよね。目まぐるしい中、何かが波のようにずっと押し寄せてきてるんだよね」といったことを伝えたかったです。
weverse magazine/BTS 『BE』 カムバック・インタビュー
2020.11.25




彼らが紡ぐ言葉はいつだって暖かくて、等身大で、受け取る側と対等の関係でいてくれる。テヒョンさんだけではなく、7人一人ひとりから零れ落ちる言霊は、それを受け取る人のこころに宿り、寄り添ってくれる。
だから、いつだって、どんな時も、その時わたしが一番欲しい言葉で優しく包み込み、柔らかな光でそっと足元を照らしてくれるから、わたしは折り曲げた膝と丸めた背中を伸ばしてすっくと立ち上がり、勇気を出して一歩を踏み出してみる。


LAコンのエンディングメントでナムさんが言っていたように、彼らはわたしたちのbullet(弾)で、わたしたちは彼らのproof(防)として、これからも防弾少年団は色々な方向に世界を広げてくれるだろう。けっして大袈裟ではなく、わたしの世界は防弾少年団を中心に全方位に広がっているのだ。


「好き」の正体


わたしの「好き」は、皿に盛られて絡まりあうスパゲッティのように複雑だけど、

一本ずつ、丁寧に、どこがどこに続いているのか辿ってみれば、

その先には彼らの生き方や考え方に憧れるわたしがいて、

彼らの価値観を借りて「こうありたい自分」を思い描くわたしがいて、

自分を少しでも愛せるように生きていきたいと願うわたしがいて、

そんな新しいわたしに気づかせてくれた彼らへの感謝があった。


もっと早くに出会っていれば・・・そう思うことはあるけれど、出会ったことは奇跡のようで必然で、きっとわたしにとって最適なタイミングだったのだと思うことにしている。

家族でもない、友達でもない、なのにこんなにもいとおしいと思える7人に出会えたわたしは誰よりもしあわせで、7人の魅力に気づいたわたしには何万回もの「いいね!」を押してあげたいし、7人のしあわせをただ願うわたしはやっぱりしあわせ者なのだと思う。(語彙力喪失)


追記


ここまで読んでくださってありがとうございます。彼らの魅力的な部分が多すぎて、長々と書いたわりにはお伝えしたいことの半分も書けませんでした。

沼入りのはっきりとしたキッカケはありませんが、強いて挙げるとすれば、この動画を挙げたいと思います。



アイドルが国連でスピーチ?どういうこと??と思いながら開いたこの動画は、7人の20代の青年たちが、「自分はしあわせか?」と曖昧な問いかけをするものではなく、「自分を愛せているか?」と真摯に問うものでした。
誰かのスピーチを聞きながら涙し、メモを取ったことはこれが初めてでした。

わたしもいつか自分を愛して、これまで目を背けていたこと、誤魔化してきたことやあらゆる沈黙から抜け出せたら。受け止められたら。

今、自分がいる環境に疑惑や不安を感じたり、自分のことを肯定できなかったり、何かに悩んでいる方がいたら、この動画が(欲を言えばこのnoteが)すこしでも心の種になればうれしいです。


いつか、その種が花開くことを願って。


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