指す順6th 地獄の観戦記(B2 第6回戦)〜第2章 マイバラード〜
〜これまでのあらすじ〜
リンク先の記事を読むのが面倒な人向けにざっくり説明すると、『mixiの魔術師』こと後手とよし(うまぴょい伝説)さんの『四間飛車穴熊』に対して『居飛車急戦』を仕掛けた『電光石火の三重殺(トリプルプレイ)』こと先手和さん。
一瞬、後手がやらかして先手優勢かと思われたが、ソフト(激指15)的には、ほぼ互角(微妙に後手有利なんじゃね?)みたいな局面になっているとかいないとかで、今後の展開が楽しみだよねって話だが、最後の局面で出題した
『地獄の一手』問題の正解者はなんとZERO。
…っていうか、回答者が0。永遠の0。
ゼロがいい。ゼロになろう。もう一回。
ということで、正解発表は次回に延期する。
地獄を恐れずに、ドシドシ応募してもらいたい。
〜地獄の局面〜
実に悩ましい局面。金を上がる?銀を下がる?
歩を打ってみる?…などと候補としては色々ありそうな局面で、地獄検討室でも注目の一手だったが、後手とよしさんの選んだ手は…
【58手目】
△ 2三銀
先手の和さんも負けじと、銀をぶつけられた
飛車を横にビューン!!!
【59手目】
▲8四飛
サッカー観戦で応援しているチームがゴールを
決めた時のように、地獄検討室は大盛り上がりだ。ちなみに私はサッカー観戦が苦手で、それを理由に飲み仲間にハブられたことがあるが、それはまた別のお話。悪気がないのはわかっている。
私の協調性が欠けていたことが最大の原因だ。
話は戻って、後手が5筋の歩の裏から歩を垂らした。すぐに狙いはわからなかったが、地獄検討室に遊びにきていた解説のポール先生が「4五歩だ」と呟いた。私は「んぉー!そういうことかー!」と大きく相槌を打ったが、実は何もわかっていなかった。さらに「4五桂もあるか」と続けるポールさんに「おーおーおーなるほどー」と、もう1人の解説者である『海中の赤い鉄槌』こと八十さんが答えた。私と違って本当に理解した末に発した言葉であることは間違いない。
地獄検討室では、この手に対して5筋の歩を突き出すのでは?という話になりそうだったが、すかさず先手は玉の尻に敷かれていた銀が右に上がった。後手が少し時間を使い、ここからしばらく沈黙が続く。最初に口を開いたのは私だった。
「オレオ食べていいですかね?」
「…どうぞ」
快く八十さんは許可してくれた。『オレオ』といえば、とよしさんの主食だ。『地獄研』でとよしさんが『オレオ』を食べていない日はまずない。
後手が指そうとしている手はわからないが、
後手が食べたい物はわかる。『オレオ』を食べれば何かがわかる気がしていた。この時は…
△4五歩…そう、ポール先生が予言していた手が
なんと的中したのである。歩をぶつけられた銀は
右に上がった。ここで飛車が走る手を口に出した私に、珍しくポール先生が同意してくれてとても嬉しかった。さらに八十さんも同意してくれた。
そしてオレオの力で私の読みが当たった。
〜馬だけに〜
【60手目〜64手目】
△5六歩▲6八銀△4五歩▲3五銀△5五飛
『穴熊の暴力』というワードがほんの一瞬、
地獄検討室のトレンドに上がったが、私はこの言葉をどういう時に使えばいいのか、正直あまりよくわかっていない。とりあえずビジネスシーンで使うことはなさそうなので、特に支障はない。
そうこうしているうちに先手が歩を突いた。
「飛車の横利きを遮断しつつ、馬の筋を通す
味のいいうまい手…馬だけに!!!」
と八十さんが絶賛した。
私はさらに「うまぴょいさんだけに」と重ねたが、完全に無視された。俗に言う『スベる』というやつだ。将棋で例えるならば、『疑問手』を咎めずに『悪手』を指したことにより、本来ならば先にボケた方がスベる(形勢が悪くなる)はずだったものを二重で貰い受けてしまった(逆に形勢を損ねた)形だ。いや、書いている本人もピンとこない悪い例えなので、スルーしてもらいたい。
地獄検討室では、次に後手が4筋の歩を突いて、銀で取ったら2筋に飛車を回り、歩で取れば銀が取れるという予想だったが、馬の頭に歩を突いた。
この手は少し損した気がすると八十さん。
先手の馬が引いた手が飛車に当ることになり、
一つ引く手をポールさんが検討している中、
再び下段まで飛車が引かれた。
〜端攻めの和〜
【65手目〜69手目】
▲6五歩△7四歩▲6六馬△5一飛▲9五歩
満を持して端の歩を突いた先手の和さん。
地獄検討室のボルテージはMAX松浦だ。
飛車が絶好の位置にいると話す解説のお二人。
「欲を言えば、もう少し玉を固めたかった」
とコメントした八十さんに対し、
「馬強いし、割と広いから大丈夫なんじゃね?」と返すポールさん。(そんな言い方はしてない)
「なるほど…なるほど…なるほど…」
と繰り返し呟く八十さん。
特にこれといった発言もせずに無言で
『オレオ』を食べる私。
そして端歩を取らず、金を上がって
飛車にぶつけた後手のとよしさん。
「切っちゃえ切っちゃえ」
と飛車をブッこむ手を期待して
楽しそうな解説のお二人。
そんなお二人の期待に応えて、
飛車をブッこんだ先手の和さん。
金で取り返す後手のとよしさん。
さぁ、いよいよ終盤戦。
興奮するね、間違いないね。
次に先手が端歩を取り込む手を検討していた
解説のお二人から放たれる符号のシャワーを浴びた私は「んー」と考えているような声を出しながら、『オレオ』で汚れた指を拭いていた。先手はすでに1分将棋になっており、残り時間では
『4分44秒』残している後手にほんの少し
アドバンテージがあるが、数字的に何か不吉だ。
何も起こらなければいいのだが…
〜馬だけに パート2〜
【70手目〜75手目】
△7三金▲8三飛成△同金
▲3四歩打△2五桂▲3三歩成
先手が桂馬の頭に歩を叩いた。当然、逃げる。
そして叩いた歩をそのまま成り込んだ。
これは上手い。金では取れない。馬が利いている。私はこれ見よがしに言い放った。
「馬だけに!!!」これは拾ってもらえた。
やはりこういうのは先手を取らなければならない。ダジャレも将棋も後手をひいてはならないということだ。『風邪はひいても後手ひくな』という格言もあるくらいだ。意味わかんないよね。
後手としては非常に悩ましい局面だ。3八に飛車を打つ手も検討されたが、別に働いてない銀なんて取られてもいいよね的な話になった。
「やっぱり仕事してないやつには厳しいんですね…世の中は」という私の呟きに対しては苦笑いが返ってきた。世知辛い世の中だ。
2分近く長考して後手が2八に飛車を打った。
地獄検討室としては、少し危ないラインではないかとの声が上がった。
先手はと金で金を取り、後手は飛車を成りながら桂馬を取った。さらにと金を入り、飛車にぶつけ、逃げた先は7筋だった。これは狙い通りだったのか、着手がかなり早かった。この形は部分的だが、地獄研でよく見たとよしさんの得意技だ。
マイクトラブルが発生したのか、この辺りから
解説の八十さんの声が聞こえづらくなった。
ポールさんとの会話は成立していたので、単に
私のスピーカーの問題だったのかもしれない。
〜端攻めの和 その2〜
【76手目〜81手目】
△2八飛▲3二と△2九飛成
▲4二と△7一飛▲9四歩
ついに端の歩を取り込んだ先手の和さん。
すかさず飛車先の歩を突いた後手のとよしさん。
とりあえず先手はぶつかった歩を取った。
後手が何をしてくるのかは置いておいて、
次に先手の5五角は厳しいよね的な話になった。
その流れで8筋の歩がキレてることに気がついた
解説のポールさんの「キレてるじゃないですか」
に対して反射的に言葉が出てしまった。
「キレてるんですか?」と問う私。
「キレてますね」と答えるポールさん。
「これキレさせたらたいしたもんですよ」
…と悪ノリする私だったが、結論から言うと、
先手から8六歩が厳しいよねって話だった。
そして後手が9六に歩を垂らした。
先手からどんな攻撃が!?と構えていたが、
5筋の金底に歩を打つという実戦的な手が指された。さすが和さん。『変幻自在のキャラ兄さん』と呼ばれているだけはある。
『8四桂』を打ってみたいよねと
解説のお二人が盛り上がっていたので、
「あーなるほどー、ふーん」と
わかっている風なオーラを出してみたが、
イマイチ何言ってるのかわかっていなかった。
「先手も8五桂と跳ねますか」と八十さん。
「そうなったらもう気合いの勝負ですね」と
ポールさんは笑った。八十さんも笑った。
会話の内容がよくわからない私は黙った。
その刹那、後手の香車が走った。その頭に
歩を打つ先手。迷わず取り込む後手。
すぐさま飛車のコビンに打たれた角を見て、
地獄検討室が沸いた。が、すぐに冷静になった。
後手は少し前に検討されていた8四桂を打った。
先手は9三に歩を打ち、どこからともなく
「詰めろだ!!!」という声が聞こえてきた。
もちろん私には、どう詰めろなのかわからない。
〜書くの疲れてきた〜
【82手目〜91手目】
△7五歩▲同歩△9六歩▲5九歩△9四香
▲9五歩△同香▲6二角△8四桂▲9三歩
文字数的にそろそろ終わらせに入りたいが、
大事な大事な最終盤。まだもう少し続く。
9三の歩はどれで取っても嫌らしい。銀では
取れないし、桂馬も嫌、金がギリギリとのこと。
さすが後手のとよしさんは金で取ったが、
そこに桂馬がぴょんできた。
「うまぴょいされちゃいましたね」と楽しげな
地獄検討室。後手のうまぴょいさんも負けじと
飛車ぴょいした。さらに桂馬がぴょいして金を取った手が詰めろらしい。相変わらずわからない。
というか、指し手のスピードに私のポンコツな脳が追いていけていない。ぴょいした桂馬をとりあえず銀で取り返した後手。
先手の角が桂馬を取りながら馬に進化した。
後手は5ニに歩を打ったが、私にはもう何が何だかよくわかっていなかった。決め手として、馬を切る手を推奨するポールさん。
ついに決着の時!!!
【92手目〜99手目】
△9三同金▲8五桂△7二飛▲9三桂成
△同銀▲8四角成△8二歩▲9三馬
ここからなんやかんや白熱した攻防を繰り広げ、
先手の和さんが見事、後手のとよしさんを討ち取った訳だが、地獄はまだまだ終わらない。
ここからが本当の地獄だ。何故ならば、B2の降級圏脱出をかけた大一番を戦ったこの2人が、終局直後に地獄検討室で『地獄の感想戦』を行う予定となっているのだ。もし仮に私が激戦の末、敗れたとよしさんの立場だったら絶対に嫌だ。
まともな精神状態で臨める気がしない。
しかしそれをやってしまうのが、
この『地獄研』なのである。
【100手目〜105手目】投了
△9三同桂▲8四桂△8三角
▲7四銀△7三飛▲同銀
ちなみに最後は明らかなタップミスと思われる手だったので、説明を割愛した。決して急に面倒くさくなったから端折ったわけではない。
次回、『指す順6th 地獄の観戦記(B2 第6回戦)〜第3章 時の旅人〜』お楽しみに。
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