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「ブルーアーカイブはお前向け」と言われたのでやっている

―――そこで『ブルーアーカイブ』ですよ。
「いや~お噂はかねがね」
―――ブルアカはねぇ、かきもちに向いてると思うよ。
「ふむ……?」

居酒屋にて。「最近なんか良いのある?」

シナリオが良いよ、すごいよ、という話は僕の耳にも入っていたし、キャラの色気がすごい、ということは言われずとも僕の目に入っていた。

他人に勧められたものはよっぽど興味が湧かない限り触れようと思っている…のだが、気持ちとは裏腹に媒体や余暇の都合で、実際に触れられる機会は少ない。

スマホゲー。余暇ジャンルの頂点。でも「お前向け」とまで言われると…
まままそこまで言うなら! ねっ、顔を上げてください。そこまで言われちゃぁ、仕方ないですから。
そんな理由でもうすぐで1年ぐらいブルアカを遊んでいます。読み返したらプレイレポ以下の何かになってましたがよろしければ。

(Vol1を中心に、Vol3までのぼんやりとしたネタバレがあります。
余暇ジャンルの頂点なので進みは遅いです。1年やってまだVol3終わってません。)



僕「イメージしてたブルアカと違う」

舞台は学園都市キヴォトス。このゲームって学園ものだったんだ。本当にそんなことすら知らなかった。
システム??シャーレ……の、先生?あっ顧問ですか……。わかりましたはい、あっ謹んでお引き受けいたします…。あの…そのシス、シッテムっていうのは…??

いろんな固有名詞で丸め込まれ、いつの間にか「”シャーレ”の顧問先生」というなんかすごい権力を持つ人間になってしまった。
(なぁんだ…僕はてっきりブルーアーカイブを……)

世界を巻き込んだ大戦が集結しXX年…
しかし未だ世界は人々銃を持たなければいけないほど過酷であった。
「あんたを雇うわ」
戦地を生き残り、現在は平穏に過ごす主人公の前に突如現れた「社長」と呼ばれる人物は言った。

ミリしら文庫「 ブルーアーカイブ」あらすじ


でも確かにキャッチフレーズは「学園×青春×物語RPG」で、その通り爽やかな感じだ。
なんか街中でチンピラと銃を撃ち合ってるけど、別にそんな深刻そうでもなく結構ゆる〜く映る。治安はよくなさそうだけど。机に銃を置くな。

ひとまず納得したので次にガチャを引いてみると、見覚えだけはある子達がたくさん現れる。いつも寝てる子、怖い顔で舌ペロしてる子、エッチなのがダメな子、お時間頂いてく子……
ちょっとそこの女子!その青いバニー!ちゃんと制服着なさいよね!!

今見るとそんなに…なリセマラ結果

ところが肝心なストーリーVol1の舞台であるアビドス学園まで訪れると、コンセプトの「青春」とは遠い内容が展開されていた。

砂嵐による学区の砂漠化とそれに伴う対策費用確保の借金(9億!)により、生徒や住人はとっくに退去し、今や学校には借金返済を目標にした「対策委員会」メンバーの5人しか残っていないというのだ。
(進めるとわかるけど学生たちは教材でしか勉強していない。先生すら居ない。自主学習できて偉いねぇ…本当に偉い。)

とんでもなく嫌な苦労話だ。なんというか、それって青春どころか奴隷っぽく…

あっ

あ あ 赤髪社長!こんなところにあらせられたのですね!?

僕が勝手にキーキャラ扱いしていた、この名前をアルというキャラ。
二次創作でよく見かける「クールに振舞うとするがダメ」というキャラ造形は確かにそのままだったのだが、なにって彼女は社長である以前に学生だったのだ。

いや、なかなか大人っぽい恰好してるからてっきり…
この子がログインボーナスをくれるんだとばっかり…

本当に驚いたのでツイートしちゃった。
(幼女)とか居るけどこのゲームで手に入るキャラは全員学生…というか生徒なんですよね。最近やっと掴んできましたよ。

児童だ

ほな全員生徒と違うか…


歪な都市、ギヴォトス

「時間はかかるかもしれないけど借金を返そう!そうすればまた町が元に戻るかも!」
絶望的な現状でも各々のやり方や発想で解決へと進むアビドスの生徒達。
ぼんやりと、しかしその先の希望を遠くともちゃんと照らしている。それならば僕だって「確かにそうかも!」と思いながら見守れる。

アビドス「対策委員会」の5人。

しかしシナリオが進むにつれ、借金に関する暗い思惑が明らかとなり、他学園と一触即発になり、砂漠のど真ん中まで仲間が連れさられた挙句書類にサインをされず決意を蹴られたりする。

…そんな。
卑怯だが、しかしあくまでルールやチャンスを活用するだけで我を通そうとする「大人」という巨大な力に翻弄されるばかりだ。
突如現れたように見えて、しかしアビドスの上にずっとかぶさっていた悪意にこの子たちは抵抗する備えも方法も持ち合わせていなかった。


なんだかシナリオを進めれば進めるほどにキヴォトスという場所はひどく歪んでいる、という気持ちが強くなってくる。

なんで誰もいない学校の借金を生徒が返し続けなきゃいけないんだよ!?
なんで同じ学園の生徒を弾圧して学校から追放しなきゃいけないだよ!?
なんでパワードスーツとビル落下中に撃ち合わなきゃいけないんだよ!?
どうしても戦わなきゃいけないのかよ!こんな世界で!!
まず学生が銃を持たなきゃいけない事がおかしいんだ!!

どういう訳か彼女たちは僕ら人間より頑丈だ。
ちょっと人間より強くて、弾倉数個分をまともに食らっところで”気絶”程度で済むから、だからこのぐらいどうってこともないって言いたいのか?

しかもそんな生徒たちを殺す特別な方法も用意されていたりして… 

これが「学園×青春」なのかよ!!これが!?

もうやめようよ!そこまでしてここに留まる必要無いって!!
みんな付いて来い!銃なんて無くても良いところまで行こう!

         

こんな世界で一体誰が

…ずっとそんな事を思っていたが、ふと気づいた。彼女達は学校再建に本気だったこと。
「どうして自分たちが身を捧げきゃいけないんだ」だなんて一言も発してなかったこと。
どうすれば良いかを楽しそうに、ふざけながらでも解決へ向かおうとしていたじゃないか。

僕だけか。本気の気持ちと行動を「逃げればいい」なんて反故にしようとしていたのは。僕だってあの時「そうかも!」と思ったはずなのに、すぐにそんなこと忘れて無理だと諦めて逃げようとした。

みんなでみんなの学校を取り戻したかったんだ。「外なら平和に過ごせるかも」とか思ってる場合じゃない。
おそろいのマスクを被ったり、延々と格ゲーで連敗したりする。そんなちょっとした悪ふざけや苛立ちだって他の誰かがいなきゃできないことだ。
"みんな"のいるキヴォトスじゃないと。

その幸せを享受するために。大人がいなくてもそれができるように。だから銃を持たなきゃいけなかったんだね。
奴隷っぽいだなんて失礼な連想をしたけど、僕からそう見えただけで本人がそんな事思ってなければ明るくしっかり前に踏み出せるんだ。

でも、だからこそ余計に思う。こんなに過酷で歪んだ世界でともる、かすかな明りを誰が守れるっていうんだ。”もや”のように掴めない望みを誰が取り返せるっていうんだ!
誰かッ、誰か大人の人呼んで!!






……僕だけか。



彼女達の『                         』

……そういえば、僕たちには青春と呼ばれる時間があった。
陳腐であまりに使い古された言葉すぎて、その時にはこれが青春だなんて微塵にも思いもしなかった、そんな時間。

今、ふとその時を振り返るとこう思う時がある。
「当時はやろうとこそ思わなかったけどそういえば学生の頃っていろいろできたな。もっとアレコレしておけば良かった」と。

大事にしまっていた思い出。なにも未練なんてない。
少しだって後ろめたくないはずなのに、不意にそんな考えが頭を覆って、誰にも言われてないのに後悔を強要させられる。
それは”青春”がもう僕たちには来ないということを嫌というほど知らされてしまったからだ。だから余計にそう思わされている。
日々を大事にするにはもう遅いんだって。



Vol3 3章。思惑と裏切りが交錯した結果、そこではこれまでの比にならない規模の出来事が起こってしまった。
銃声と爆風で巻き込んだ全てを傷つけ、最後は雨のせいでもう誰が泣いているかもわからくなってしまった。

”最強”だってしおしおになっちゃった

しかし、雲を切って最後に訪れたのはズルいぐらいのハッピーエンドだった。
ある一言が。先生のたった一言がそれを呼び寄せてしまった。

状況や方法はどれも違ったが、僕…もとい先生はVol1もVol2も変わらず生徒を救ってきた。
その理由はたった一つで、それは僕が大人だったから。そして生徒が本気で”みんな”を求めていたから。

かつて僕たちには青春と呼ばれる時間があり、それがもう来ないということを知っている。
そんな中、眼の前が子供達がささやかな幸せを過ごせるような時間を求めていた時、彼女達が後に「青春」と呼ぶ本気の今が不完全燃焼となろうとしているなら寂しい。
人と撃ち合ってまで得た、かけがえのない時間すら大人の発揮するズルさのせいで我が物にできないなら悔しいと、そう思う。

学校の再建。エデンの発見。それを掲げる子どもたちを前にした時、すごく青い理想だと思った。だけどそんな様子が今の僕には同じぐらい眩しく見えた。見届けたいと思った。
そんな彼女たちに僕はどんな施しを与えられるのだろう。

だから今度は彼女達の「ズルい」を僕のズルさで叶えてあげた。
光が消えそうなとき、代わりに照らしてあげた。

彼女たちの『青春』を全うできるように。
僕たちが知らず知らずの内に照らされてきたように。


ルールやチャンスを活用して我を通せるのは大人だけだから。
だからこのぐらいどうってことも、ないんだ。

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