Noble is the Lord, and Magnificent she is also.

友人が数学の面白さについて考えていたので,僕も考えようと思う。僕は物理学を専攻していて,数学も趣味で少し勉強している。これらには基本的には違った面白さがあると思っている。(以下全部個人の意見)

物理学の面白さ

その友人は数学専攻で,数学の面白さを数学にあまり興味がないような人に問われると返答に困ると言っていた。僕は物理学の面白さを説明しろと言われても全く困らない。物理学の面白いところは物理学というアイディアそのものにある。消しゴムを斜め上に投げると飛んでいくが,毎回同じ種類の曲線を描いて飛んでいく。そんなことに普通気づくだろうか?しかも一般的に考えることで,消しゴムの運動だけではなく天体の運動を記述できるようになる。自然をなんらかの統一的な枠組みで記述しようとするアイディアそのものがとてつもなく面白い。
物理学の理論はある程度用意されているが,理論そのものに物理学はない。現実世界のモデル化に物理学は存在する。モデルが与えられればあとは微分方程式を解くだけの数学である。そういう意味で僕はまだ物理学をやったことがない。物理学で最も面白い部分である,モデル化を堪能できたという点でゴムの熱力学を一番最初に考えた人は羨ましい。
さらに数学と違って自由な思考が許されるのもいい。数学で面白そうなアイディアをもし閃いたとしても,そこから位相だの演算だのを考えて厳密性を担保しない限りそのアイディアは無価値という事実に個人的にはげんなりする。その点物理学の理論などあらゆるところで終わっているのだが,終わっているからこそ自由な発想ができていい。公理的にやったりすると台無しだと思っている。

数学の面白さ

数学の面白さについて。僕は数学も趣味で勉強するくらいなので数学を面白いと思っている。しかし物理学とは異なるところに面白さを見出している。物理学が現実をうまく説明するのが面白いのに対して,数学は現実に関係ないところが面白い!個人的な話になるが,僕は考え方が独特のようで社交的なように見せかけようと努力しているが基本的に人と話が合わない。人と会話して面白くないなと思いながら1日を過ごし,帰ってきて数学をやる...するとそこには浮世離れした自分だけの世界がある。数学をやることは内的世界との対話の1つの形である。外の世界は基本的につまらないので自分の思考の中に閉じこもって数学をやる。数学の抽象化に触れると脳がマッサージを受けているような気分になる。方程式の可解性や位相不変量の構成といった高度な性質の証明を学びおわり,振り返ると出発点はただの集合である。代数学,幾何学といった一見異なる分野そのものでさえも全て集合という1つの概念から生まれるという綺麗な枠組みは,数学の抽象化の帰結である。抽象化と統一とは表裏一体である。


共通の面白さ

上で色々語ったが,もし数学や物理学に興味ない人が上のような説明を聞いても,絶対に面白そうだとは思わないだろう。それこそが,数学と物理学に共通する少し不純(?)な素晴らしさである。つまりこんなに面白いのに面白さを理解できる人が少ないことだ。「数学(物理学)のどこが面白いの?」と聞いている時点で,質問者は面白さを理解していない。選ばれた人しか理解できないのである。自分が理解できる選ばれた人間であるということが素晴らしいし,物理学や数学を面白いと思わせてくれる。



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