死について
保育園にそこそこ時間ぎりぎりで息子を迎えに行ったら、
2歳くらいの子が、保育園の扉の前でじっと座っていた。
隣でお母さんが何か言ってる。
子「死んじゃった」
母「ね、死んじゃったね、さ、行こうか」
子「…死んじゃった」
母「(私が近づいてきたのに気付いて)さ、どいてどいて、通りたい人がいるよ」
近づいてみてみると、先日公園でも見かけた、一見ゴミムシっぽいけど、甲虫じゃない感じの羽虫、胴体が鮮やかなオレンジ色のものが、軽くつぶれていた。
俺「えっ…死んじゃったの…?」
子「死んじゃった」
母「そうなんですけど、触る勇気もないみたいで…」
お子さんの様子が、私の心をつかんだ。
たぶん、この子は生まれて初めてに近く、「死」というものを見つめていて、今すごく何か大きなものを受け止めている気がした。なんだかわからない大きな塊。言葉もまだ流暢じゃないから、「死んじゃった」を繰り返している…
その貴重な瞬間を、一緒に体感させてほしいと思った。
この子ができない、と思っていることを、代わりに、少し進めてみたら、どうなるだろう。
お子さんの前に座ると、子どもの目がまっすぐ私を見た。ふふふ。この場を体験する仲間として認めてもらったみたいな感じ。
俺「あーっ、本当だ、虫が潰れてるね。でも、まだ生きてるんじゃないかな~ おいおい、おいおい、がんばれ(と、カードでつついてみる)…あーこれは死んじゃったのかもね…」
子どもはまだ、じいいっと座ったまま動かない。
お母さま、子どもが離れたくなるまで、どうぞそのままで…と思い、立ち上がった。
子どもは、きっとすぐには「人間の死」を実感することはない。最初に実感するのは、きっと、虫の死なんだろうな~と思う。できれば、その瞬間が、子どもにとって自然なものでありますように。その「大事な瞬間」が積み重なって、子どもの時間は流れている。
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