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Snookと元Snookの二人について②

ありがちに仲が悪化して事実上の解散となってしまったSnook。でも二人の縁は…

2010-2016

オスカルはヴェロニカにフラれ、ダニエルはLAGOMを運営しながら二人ともソロ活動へと意識が向いていきます。ちょうどこの頃、2人のアパートは150mくらいの距離にあり、オスカルは時折道端でダニエルにばったり会ったりしていたとのこと。オスカル曰く「散歩しに外にでるとよく、洗いざらしの髪のまま、カスタムした自転車を乗り回してるダニエルと出会ってたよ。軽くHej,hejって挨拶くらいはするんだけど、そんな時は結構悪くない雰囲気なんだぜ。でも、ダニエルがその頃ソロデビューの準備を進めてるなんて知らなかったよ」。

2010年の初夏にオスカルがソロアルバム「Vilja Bli」を、同じ年の秋にダニエルが「Svart, vitt och allt däremellan」をリリース。事あるごとに比べられることとなったソロ1枚目ですが、そのことに対してダニエルは「オスカルはぼくが音楽をはじめて最初の10年間を一緒に過ごし、同じバンドを組んでいた人だよ。似てしまうのは仕方がないね」と言いつつもオスカルのソロ曲に対しては「ぼくがやろうとは思わないような王道のスウェディッシュポップだよ」とコメントしています。一方のオスカルは「俺が(別れた)ヴェロニカの新譜を聴くなんて変だろ?それと同じでダニエルの音源も聴いてないよ」と。

この頃のインタビューではオスカルがヴェロニカの話を振られることが多く(ソロでのヒット曲Från och med duがヴェロニカのことを歌っていると思われるため)、ダニエルの方がSnookと元相方の話を振られることが多かった模様。ダニエルのソロでのヒット曲「Gubben i lådan」は「君にすべてを捧げたけれど、何も返ってはこなかった、だけどぼくは君のために1,000回だってそれを繰り返すよ」という歌詞で、しばしばこれがオスカルとの関係のを歌ったものだと解釈されています。ダニエルはこの曲について「僕とある人との関係についての曲だよ。僕はその関係の中で自分自身を見失っていたんだ。少し行き過ぎた忠誠心でもってね。その関係が上手く終わった時、僕はその関係の中で自分の一部を失ったと気付いたんだよ」と意味深なコメント。ダニエルのその答えに対し、インタビュアーは明らかにオスカルのことを含んで「その関係は友情、それとも恋愛感情?」と誘導質問をしますが、ダニエルはオスカルのことを含んでいるとわかった上で「友情と恋愛感情はどう違うのかな、同じものじゃないのかな」というとんでもない爆弾発言でうやむやにしています。

「(ぼくたち二人がこれ以上関係を悪化させることもなく、別々のステージに立って、それぞれの活動で成功している上で)もし誰かがSnookは終わった、って考えるのなら、これがSnookにとっての完璧なハッピーエンドだって僕らは感じるよ」

「ぼくらはもう親友ではないし、一緒にいることもないけど、それでもぼくはオスカーのミュージシャンとしての成功を見ることができることをものすごく誇りに思うよ。高校時代の親友でぼくと一緒にバンドを始めた彼が、ソロとして成功するのを見るのはとてもクールなことだよ」

同じ年にソロ活動をはじめたため、インタビュアーに「オスカーがソロで失敗すればいいって思ったりした?」と意地悪な質問をされ「そう思うことはできるよ、でも彼は失敗なんてしない。絶対に」

一方その頃オスカルは「背が低い(172cm)ってどんな感じ?」とインタビューで聞かれて「サイズがなくてね…女物着てるんだぜ」とか「スウェーデンでは小さいけど日本に行けば普通だろ?」とか答えています(かわいそう)。

2013年にはオスカルが「Klappar och slag」、ダニエルが「Innan vi suddas ut」とそれぞれ2ndアルバムをリリース。「おれたち、お揃いのタトゥーを入れるべきだったかな」「でも、もう遅すぎる」と歌う「För Sent」はリノロスが明確にSnookについての曲だと言っています。一方ダニエルは「Tårarnas reservoar (涙の泉)」をSnook時代に出会ったけれど、若気の至りの馬鹿騒ぎのなかでアルコールに溺れたり、精神を病んだりしてもう会えなくなってしまった人たちについての歌、と言っていますが「ぼくらがどんなだったか覚えてる?」「ぼくらは同じプラットホームに立って、空想のお城を作っていたね」「壊れてしまった儚い約束は、今もこの胸に響いてる」というあたりはどう考えてもオスカルのことですねと…

オスカルは2ndアルバム関連のツアー後、人目にさらされるのは疲れたと無期限でソロ活動を停止、プロデュースなどの裏方業に専念しはじめ、ダニエルはLAGOMを撤収、トライアスロンなど長距離系スポーツに傾倒しつつもAviciiのアルバムにボーカルゲストをしたりしつつソロを継続。ここまで二人とも「Snook再結成は絶対にない」「Snookは黒歴史」としながらもお互いをメディア上でディスることは絶対にせず、「昔、親友だった人」であり「好きでも嫌いでもなく縁がない人」という形で没交渉の状態を貫き続けてきました。唯一例外的にリノロスが「1stをリリースしてから今年で10年だし、(解散せずにここまできてしまった)Snookの葬式をするためなら2人で会ってもいいかもな」と言っていますが、この穏やかで平和な没交渉状態はこれからも変わることがないと、ファンよりもむしろ本人たちが思っていましたが…

2016-2017

2016年以前に2人が最後に出会ったのは、2014年のニューイヤーパーティー。偶然出会った彼らはしばし座って思い出話なんかをする…わけもなく、ただ軽く握手をしただけ。それがリノロスとレイちゃんが元親友と会った最後のエピソードとなっていましたが、

2016年5月の中頃、全くなんの前触れもなく、レイちゃんのインスタグラムにリノロスとの2ショット、しかもセルフィーの2ショットがアップされ、

私だけではなく文字通りスウェーデンのメディアが騒然となる大事件が発生。

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(あまりのことに筆者はその後、このカフェに聖地巡礼しました)

キャプションには「ぼくらはÄrをリリースしてからの10年、たくさんのことを学んできたし、何も学んでなんかこなかった。だけど、最高のことはまだこれから」とだけ。各メディアからのリアクションをスルーし、ダニエルはkingsizemagにのみ「ただ友達2人が写ってる写真ってだけ。(あんまり詮索せずに)尊重してね」とコメントしています。

この頃ダニエルは4曲入りのEPをリリースし、夏のフェスツアーが始まったところ。再結成なのか何なのかもまるでわからず2人からの音沙汰はないまま8月14日。ダニエルは屋内フェスStay out west(大型フェスWay out westのスピンアウトで深夜帯の開催)でヨーテボリに。アンコールの「Gubben i lådan」の後で客電が落とされ、オーディエンスがこれでおしまいかなと思ったところで再び客電がつくとダニエルの隣にはオスカルが、という最高のシチュエーションで新曲を披露。実に8年ぶりに同じステージに立ったオスカルとダニエルの様子を、雑誌にインタビューを受けたお客さんが「めっちゃラブラブだった」と報告しています。

8月14日以降も公式からのアナウンスはなく、Snookの再結成なのかなんなのかもわからないまま、9月10日。今度はオスカルの地元であるストックホルム郊外のスンドビュベリで開催された単発ライブのアンコールでダニエルがゲストし、ヨーテボリと同じ曲を。この時も2人のラブラブな様子がインスタグラムなどで流れてきておりました。

そして9月21日。この日はダニエルのストックホルムのGröna lund公演。ツアーファイナルなのもあり、皆の期待が高まる中、朝から少しずつ情報が流れ、最終的には夜9時にOskar Linnros x Daniel Adams-Ray名義でシングル「Sitter på en dröm」をリリースするとのアナウンス。Grönalundのアンコールで二人が一緒にステージに立つのと時を同じくしてオンラインでの音源配信もスタートしました。

「Sitter på en dröm」のプレスリリースは以下の通り。

今年の春、何度か一緒に散歩をしたり、一度はしこたま酔っ払ったりしたあと、ぼくらは一緒にスタジオに入ることを決めたんだ。これはこの10年間なかったことだよ。ぼくらはそこでいろんなものに出くわしたんだ、例えばお互いのソロアーティストとしての成功とか、美味しいテイクアウトのコーヒーとか、それから、いくつかの解かれないままだったわだかまりとか。それに、ぼくらの名前における誇りもね。今、ぼくたちはSitter på en drömを皆にシェアするよ。ぼくらがこの曲を作ったんだよ。ぼくらが この曲をゼロから、一緒に。

また、Spotifyに上がったプロモーション動画ではこんなことも。リンクを貼ったのでぜひ見てください。

「ことの成り行きは完全に自主的なものだったよ、なぜならぼくらのどちらにとってもこれは予期せぬ出来事だったから」「俺たちが最後に一緒にいた頃から、マジでたくさんのことが変わってしまった。でもそこには何かしら変わっていないものはあったし、これからどうなるかは無視して前に進みたいっていう直感的な本能を俺たちは持ってたんだ」

プレスリリースでも「名前における誇り」と言っているように、この曲はSnookではなくあくまで成功した二人の独立したアーティストであるOskar LinnrosとDaniel Adams-Rayの連名としてリリースされた曲であることが重要なようです。「Snookの再結成は絶対にない」という言葉は実質守られているわけです。

2017

多くの人が今後の2人での活動に期待をしましたが、リリース後は特にこれといったアナウンスも2人の絡みもなく、ダニエルはスタジオに入りつつトライアスロンの大会に挑み、オスカルは4年間のソロ休止から復帰、新譜をリリースし夏のフェスツアーに出かけます。これで二人とも自分の活動に戻ってしまったなぁ、と思っていた8月末、オスカルのEPがリリースされたタイミングでダニエルが収録曲の「Oavsett」へのリアクションをインスタグラムにアップ。「chef d'oeuvreという言葉を検索してごらん。ヘッドホンをして、雑音はシャットアウトして聴いて。ぼくの兄弟、オスカーはきみの周りの重苦しい空気に波を起こして、くだらないものから何か美しいものを作り出してくれるよ」。ダニエルはこの時、オスカルがアップしていたプロモーション動画の中の、ちょうどダニエルと仲が一番良かった頃(デビュー前)のオスカルのスクリーンショットにこのコメントを加えていました。そしてオスカルは「なぁ兄弟。写真に写ってるその子、俺たちがはじめてレコーディングした部屋にいるその子が誰だか、お前は知ってるよな。お前がこの曲を気にってくれたことは俺にとって大きな意味があるよ。もし、誰かとコーヒーが飲みたくなったら俺に知らせてくれ」と直接コメントで返しています。ちなみにOavsettのサビは「お前がこれを聴いてくれていることを望むよ」です。

9月頭。ダニエルは9月5日から9月末まで、Strandvägen1というビストロで毎日日替わりゲストを呼んでの20公演というハードな企画を控えており、一方オスカルは9月2日のストックホルムでのフェスPopagandaでツアーファイナルを迎えようとしていました。9月2日の午前中、ダニエルのインスタストーリーには5日からのライブ衣装のフィッティングをしている様子がアップされ、「ああ、ダニエルはダニエルの仕事をこなしているなぁ、それぞれ自分の活動を全うしていて素晴らしいなぁ…」と思っていたら、Popagandaのオスカルのステージ、まさかのアンコールでSitter på en drömのイントロ、ニコニコしながら今朝見た衣装のままでステージに現れるダニエル…そう、私はその時その場にいたんです。Popagandaの会場で、二人がSitter på en drömを披露するのを見たのです……最前列で…………

そしてオスカルの夏ツアーは無事終了し、今度はダニエルのStrandvägen1がスタート。どこかのタイミングでオスカルのゲストはあると思われましたが、9月21日、そうSitter på en drömをリリースしてからの1周年記念でStrandvägen1にオスカルが登場し、ソロの曲を2曲やった後、Sitter på en drömと、とうとうSnook時代の曲(Kommer ifrån/Längst fram i taxin)を一緒にやることに。本当にここまで、2人がSnook時代の曲を「笑顔で一緒に」やれるようになるまで短いようで長い10年間でした…

11月にはダニエルがHUMANという名義で活動を始め、その第一弾シングルをリリース。今度はオスカルがインスタグラムで「おれの3日年下の弟のダニエルは常に前に進み続ける。そういうところにずっと感服してきた。おれがバカみたいにジョギングで彼に付いて行った時を除いて」とリアクション。その一週間後、オスカルの新譜の完結編「Väntar på en ängel(waiting for an angel)」がリリースされた際は、ダニエルがオスカルの自宅のスタジオでのプライベートなリリースパーティーに(最近飼いはじめたビギーちゃんというわんこを連れて)遊びに行き、翌日には「Sankt Oskar(聖オスカー)は34年間飛んできて、今日きみのステレオに降り立ったんだよ」とängelにかけたとんでもない推薦コメントを更新していました。2017年11月現在、2人の関係はここまでリラックスしたものに変化してきています。

その後(2023年1月追記)

オスカルはその後本格的なソロ活動はしておらず、裏方業を中心に動いており(もしかしたら主夫業がメインなのかもしれない)、一方ダニエルは2021年にもアルバムをリリース、テレビ番組のSå mycket bättreに出演したり、忙しくしています。Snookは2023年になってもやはり再結成しておらず、私は大変嬉しく思っています。

ちなみにダニエルはSå mycket bättreの中でも、Snookについて改めて語っています。

ぼくたちは兄弟のような存在だったんだ。同じように話し、同じような服を着てね。(略)2007年にMTVヨーロッパのミュージックアワードを受賞し、授賞式にも行ったんだ。アフターパーティーには憧れのアーティストがたくさんきていたけど、とてもつまらなかった。ぼくたちはもう同じことを同じように喜べなかった。今は一番幸せな瞬間のはずなのに、ぼくたちの部屋はただ静かであることに気づいた。もう終わりにすべき時だったよ。

ダニエルがSå mycket bättreに出た頃、スウェーデンの大衆紙にこんな記事が掲載されました。「元Snookの二人の現在の関係は?」というような内容なんですが、これがいわゆる「調査してみましたが分かりませんでした/いかがでしたか」レベルの記事……実際のところ、二人がどのような交友関係を持っているかははっきりとはわからないんですが、ごくごく稀にダニエルがオスカルとほぼプライベートで一緒にいる様子をひっそりストーリーにあげていたり、インタビューで「先日もオスカルはね」みたいなことを言っているので、全く交流がないわけでもなさそうですし、むしろこちらが思っているよりも仲良くしている可能性さえありそうです。

また、ダニエルが2021年に出したアルバム「Döda hjärtan kan slå igen」のうちの1曲「Bara vinden tårar mig」は、Snookとオスカルとの関係、そこからのソロ活動を回顧するリリックになっています。Snookの一枚目のアルバムタイトル「Vi vet inte vart vi ska men vi ska komma dit」を引用したリリックもアルバムの中で最も物悲しい曲調も、非常にエモーショナルな1曲にしあがっています。

最後に

Snookは大人への入り口としては最適だった。ダニエルと旅をするのはとても楽しかったよ、しばらくの間は。あくまでSnookはライフワークではなく子供時代のお遊びだったんだ。

大人になりはじめると、いろんなことがより難しく辛いものになっていくなんて学校では教えてくれなかったし、そういったことを乗り越えて大人になると、今度は色んなことがより楽しく、簡単になっていくということも教えてくれなかった。人は、最初から完成されているのではなく、ゆっくりとそうあるべき人物に成長していくし、今の俺とダニエルがそうなんだと感じてるよ。

俺たちはSnook時代の問題をうまく解決したし、これから先、俺たちの関係が辛いものになることはないよ。ただ、これからもダニエルと俺は別の道を歩むけれども。

2017年10月に発売された雑誌「King」のインタビューでオスカルはこんなことを言っていました。この言葉通り、Snookはあくまで過去であり、大人になった2人が同じ道を歩むことは今後ないかもしれません。けれど、二人が普段一緒にいることはなくともお互いにソロアーティスト同士としてリスペクトしあい、「昔、親友だった人」の思い出を大事に扱い続けてくれるのなら、ダニエルが言うようにこれはこれでSnookにとっての完璧なハッピーエンドなのだと思います。

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