周りと差をつけられるパフュームの知識vol04/フレグランス界の帝王メゾン・ゲランの軌跡「世界で最も売れている香水の一つシャリマーの魅力」

このコーナーは香水の歴史や経緯などはもちろん買うべきアイテムや基本的な知識などを連ねていきます。

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今回は、世界中の調香師の95%がこの香りの影響を受けていると公言するほどの香水である。シャリマーとそれを生み出したゲラン一家の軌跡について話していきたいと思います。

※GUERLAIN Shalimar「シャリマー」

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この香水を生み出した人が調香師の名家の血をひくジャック・ゲランという人物。

ゲラン家は化学を学んだ調香師、ピエール=フランソワ・パスカル・ゲランがパリのリヴォリ通りに店を開いた1828年に始まります。

ピエール・フランソワ・パスカル・ゲランは1798年、フランスの北、アブヴィルで生まれ、父は香辛料商人で、ピエール・フランソワ・パスカル・ゲランは香料製造会社で働いていました。
彼は、イギリスにわたって化学を学び、調香師としての修行を積んだ後1826年、ロンドンでジャン=マリー・ファリナのオーデコロンなどのイギリス人に人気なフランス製品の輸入会社をしていました。

2年後の1828年にパリのホテル・ムーリス一階に第一号店を開き、当時まだ田園地帯だったパッシーに工場を建て、鯨蠟をベースにローズ、ガーデニア、ジャスミンのふんわりした香りをくわえた石鹸「サポスティ」や「サントゥール・デ・シャン」「ブーケ・デュ・ジャルダン・デュ・ロウ」などのオードトワレを考案します。

1840年、ピエール・フランソワ・パスカル・ゲランはラペ通りの15番地に店を移転し、この頃からヴィクトリア女王やオーストリア皇后シシィをはじめヨーロッパ中の宮廷の麗人たちがゲラン製品を競うように求めるようになりました。

※ヴィクトリア女王

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※オーストリア皇后 エリーザベト(シシィ)

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それからもピエールは、さまざまな土地を訪ねて未発掘の香りをもち帰り、初めてのシプレ系フレグランスのひとつ、「シプレ」を発表します。このシプレは当時いままでになかった全く新しい香りとして知られるようになり、今では皆が当たり前のように使っているシプレ系やシプレ調などのジャンルはこの香水から始まったものです。



しかし、ピエールがもっとも栄光を極めたのが、1853年、ナポレオン3世の妃ウージェニー皇后に「オーデコロン・インペリアル」を献上した時、(オーデコロン・インペリアルはゲラン初のオーデコロン)この時「皇后陛下御用達調香師」の称号を授けられています。

この「オーデコロン・インペリアル」がすごく良くって、ベルガモット、ローズマリー、シトロン、オレンジフラワーが配合された、えもいわれぬ香りなんです。
この高貴な香水にふさわしい蜂のデザインのボトルは、ゲラン専属ガラス工房、ポルシェ・エ・デュ・クルヴァル社特製で、ヴァンドーム広場の円柱にインスピレーションをえた「チュイル(瓦)」の浮き彫りに、ナポレオン家の紋章である蜂が69匹あしらわれていた。以来、蜂はメゾン・ゲランの象徴のボトルデザイン(通称:ビーボトル)になっていて、緑と白のラベルにはナポレオンの皇帝章である鷲が描かれている。このボトルは今もゲランのお店で買い求めることができるのでぜひ一度手に取って見てみてください。

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1864年、ピエール・フランソワ・パスカル・ゲランが亡くなると、息子のエメとガブリエルが後を継ぎ、エメは香水の新作を手掛け、ガブリエルは経営を担当した。1870年に普仏戦争が勃発しても顧客は減ることなく、メゾン・ゲランの事業はますます拡大していきます。

ここがゲランの凄いところで、普通は戦争が起こったら香水なんて生活の必需品でないものをわざわざ買わないのが当たり前なんですが、メゾン・ゲランは逆に事業を拡大していくことに成功しているのがさすがゲランですね。ちなみに、詰め替え式で円筒形の容器から押し出して使うタイプの口紅を発明したのもこの時です。


エメは1889年にゲランの名作のひとつとなる「ジッキー」を創作します。(ジッキーは歴史上はじめての現代的香水とされています。)この香水は史上初のユニセックスな香りで注目をあびました。

一説ではもともと女性用に創られていたが、この香水にはジャコウネコの生殖腺の分泌物が含まてれいると聞いた女性たちが敬遠してあまり女性人気はなく、むしろ男性人気が高かったという話があります。現在は動物愛護の観点からあまりジャコウネコの分泌物は使われなくなり、(採取方法が結構残酷なため)かわりに合成香料で代用しているところがほとんどなので女性もあまり気にせずジッキーの購入を検討してみてください。

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ジッキーの中心的な香調はラヴェンダー、ペラルゴニウム、ヴァニラで、間違いなくエメの最高傑作であり、このジッキーがのちに「シャリマー」の原型となっていきます。

1890年からエメ・ゲランは甥のジャック・ゲランを助手にしています。
この時期からほとんどのゲラン製品に感じられるようになった独特の残り香を定着させたのがエメ・ゲランで、今でもどのような成分配合なのかは秘密にされていて、「ゲラリナード」(ゲラン風)とよばれて親しなまれています。




ジャック・ゲランは1904年には亀の形をしたバカラのクリスタルボトで「シャンゼリゼ」を発表。

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ジャック・ゲランは創作においてつねにロマンティックな詩人で。彼は花がひときわ香りたち、鳥たちがさえずりはじめ、夏の情感が高まる黄昏時の世界を作り出したかったようです。


ジャック・ゲランはさらにつぎの名香となるシャリマーの調香にとりかり、1921年には完成させ、1925年にパリのグラン・パレで開かれた装飾芸術国際博覧会の時に発表した。

シャリマーという名前の由来はシャーラマール庭園からきていて、シャー・ジャハーンの妻ムムターズ・マハルへの深い愛の物語にジャック・ゲランが触発されたことからつけたれたと言われています。
1921年、化学者のジュスタン・デュポンが従来以上に香気の強い新しいヴァニラ、すなわち合成香料エチルヴァニリンをジャック・ゲランに提供し、それを試しにジッキーのボトルに注いだのがはじまりでその時、それまでの香水にまったくなかったオリエンタルな香りがたち、ヴァニラによってみずみずしく軽やかだが、豊潤で官能的な不思議な調和が生まれた。

もちろん、合成ヴァニラを加えるだけでは新作の名に値しない。ジャック・ゲランはアコード(複数の原料の組み合われによってできるノート)を根気よく研究して官能性に満ちた香りを創りだし、シャリマーは瞬く間に世界的なヒットとなったのです。


アメリカ渡航の際、レイモン・ゲランの妻は売り出したばかりのシャリマーをつけて船から港に出たときには、ニューヨークはシャリマーの噂でもちきりになったというまことしやかな話しがあるぐらいです。(ちなみに1939年シャリマーのボトルはジョージ・キューカー監督の映画「ザ・ウィメン」に登場しています。)

このあともジャック・ゲランは栄誉にあぐらをかくことなく、たゆまぬ努力をつづけ、装飾芸術国際博覧会をきっかけに、ジャック・ゲランは東洋への憧憬を胸に、1929年、ジャコモ・プッチーニのオペラ「トゥーランドット」に触発されて「リゥ」を創作しました。

※現在「リゥ」の香水瓶はポーラ美術館で見ることができる。

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ジャック・ゲランにはジャン・ポール・ゲランという孫がいて、このジャン・ポール・ゲランは類まれな才能を持っていて、「ヴォル・ド・ニュイ」を作るのに必要なジョンキルのエッセンスが不足したとき、ジャン・ポール・ゲランは合成香料とナルシサス、ヴァイオレットリーフ、ジャスミン、チュベローズの天然エッセンスを組み合わせ、同じ香りを再現してみせて。

あまりに完璧な調合だったため、ジャック・ゲランはジョンキルの天然エッセンスをどうにかして手に入れたのだと思ったほどの天才がゲランの四代目調香師になるのですがこのジャン・ポール・ゲランを語るともっと長くなってしますのでこの話はまたどこかで話したいと思います。


シャネル№5を創った調香師エルネスト・ボーは、「このヴァニラのつつみで、私ならカスタードクリームを作るくらいが関の山だったろうが、ジャックゲランはシャリマーを創った。」と賛辞を贈っています。

この伝説の香水、シャリマーもティエリー・ワッサーの手で現代的に生まれ変わって現在販売されています。


2008年には夏に向けてシトラス系を強調した「ロー・ド・シャリマー」


2011年には軽やかさを演出した「シャリマ・パルファン・イニシアル」


2014年にはベルガモット、シトロン、ホワイトムスクがオリジナル版に新たな表情を加え、現代的な解釈となった「スフル・ド・シャリマー」を発表しています。



今回はここまで。

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ここからはゲランの香水をざっと紹介していきたいと思います。

メンズとレディースに分けて紹介したいと思います。たまにウィメンズがあるので重複していてもお気になさらず。

パルファン→P

オーデパルファン→EDP

オードトワレ→EDT

オーデコロン→EDC

と表記させていただきます。

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まずはメンズ編

ゲランのロムイデアルシリーズから何個か紹介したいと思います

▼GUERLAIN ロムイデアル EDP

PRICE: 9,800円 (50ml)

トップ:アーモンド、ベルガモット、

ミドル:スパイス、ブルガリアンローズ、インセント

ラスト:バニラ、トンカービン、サンダルウッド

トップノートはベルガモットのフレッシュな香りが特徴的、ミドルからラストにかけてバニラの香りが目立ってくるが、安物の香水のように甘ったるいバニラというよりも、すっきりとした甘い香りなので、高級感が感じられる。ほかにも色気がすごくでるが香りとしては少し重いのでカジュアルな服装や夏場にはつけるのは控えた方がいいかもしれない。年齢は30代前半から使える印象。

値段もそれほど高くはないが香りを確かめたい人には1.5mlのアトマイザーが800円で買えるサイトがあるので、貼っておきますね。良かったら買ってみてください。

▼▼香水の館(GUERLAIN ロムイデアル EDP)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00246/



▼GUERLAIN ロム イデアル エクストレム EDP

PRICE:9,800円(50ml)

トップ:アーモンド、ピンクペッパー

ミドル:シナモン、プラム、ヘリオトロープ

ラスト:シダーウッド

ピンクペッパーのすっきりとした甘い香りが特徴、ロムイデアルEDPよりもすっきりとした香り、若い人にはこっちの方がおすすめです。季節は秋、春におすすめですが、真夏日でなければ夏でも使える香水だと思います。年齢は20代前半から使える印象。

こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN ロム イデアル エクストレム EDP)

PRICE:800円(1.5m)​

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a01658/



▼GUERLAIN ロム イデアル インテンス EDP

PRICE:9,800円(50ml)

香料:ホットペッパー、カルダモン、アーモンド、レザー、ブルガリアンローズ、シスタス、パチュリ、バニラ、サンダルウッド、スモーキーノート

トップはスパイシーで少し鼻につんとくる香り、全体的にスパイシーなすっきりとした香りとアーモンドの甘い残り香が特徴的。
時間がたつとお香のような香りに変わってくるので、若い人にはあまりお勧めしない。年齢層が高めで、50代からつける香水のイメージ。

こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN ロム イデアル インテンス EDP)

PRICE:800円(1.5m)​

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a01174/


▼GUERLAIN ロム イデアル クール EDT

PRICE:8,500円(50ml)

トップ:スペアミント

ミドル:アーモンド

ラスト:パチュリ

ライムとミントの上品で爽やかな香り、とてもすっきりしているのでおそらく夏場のような暑い日につけることを想定してる。ミントをベースにしているので爽快感はあるがあまり色気がないのと揮発が速いため、使うときはアトマイザーなどに入れて持ち歩いた方がいいと思います。


こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN ロム イデアル クール EDT)

PRICE:800円(1.5m)​

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a01177/



▼GUERLAIN オム EDP

PRICE:10,900円(50ml)

トップ:シトラス

ミドル:グリーンウッディ

ラスト:パチュリ、シダー、ベチパー

爽快感があるがシトラスの香りというよりモヒートのようなスパイシーな香りに近い、時間がたつと徐々に落ち着いたグリーン系(草っぽい)香りに変わる。
個人で楽しむ分にはいいが、洋服に合わせようとすると結構難易度が高い気がします。
季節は夏につけることをおすすめします。
年齢は若い人の方が似合う香り、40代以上だと若作りしているような印象を与えてしまう可能性があります。



こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN オム EDP)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00249/



▼GUERLAIN アビルージュ EDT

PRICE:8,500円(50ml)

トップ:ライム、ビターオレンジ

ミドル:パチュリ

ラスト:バニラ、ベンゾイン

柑橘系のさわやかな香り。EDTなので全体的に軽い香りで扱いやすい。無難な仕上がりといった印象。正直あまりお勧めしないです。


こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN アビルージュ EDT)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00251/

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ここからはレディース編

▼GUERLAIN シャリマー EDP

PRICE:12,600円(50ml)

トップ:フローラル、ベルガモット

ミドル:アイリス、ジャスミン、ローズ

ラスト:バニラ、トンカビーン

凄く深みのある甘い香り、オリエンタル系の代表的なフレグランス。オリエンタル系の香りが知りたい人はアトマイザーを購入するのもいいかと。今後の香水選びに役に立つと思います。

さて、香りの印象としては

年齢層が高めの貴婦人がつけているイメージで、若い女性がつけるとおばちゃん臭くなるかもしれません。

季節は春、秋、冬がいいでしょう。
オリエンタル系のフレグランスにはよくあることなんですが、匂いが柑橘系と違ってとても重いので、夏につけると周りの人の気分を害してしまう可能性があります。

こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN シャリマー EDP)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00224/



▼GUERLAIN シャンゼリゼ EDP

PRICE:18,000円(100ml)

トップ:カシス、アーモンドフラワー

ミドル:ミモザ

ラスト:ハイビスカスシード、アーモンドツリー

フルーティーでフローラルなすっきりとした甘い香り、パリの春をイメージしてつくられたフレグランスだけあって匂いにまったく重い感じがしない。

個人的には今回一押しの香水で、全体的に柔らかく、すっきりとした香りなので夏につけても違和感なく使える。
渋谷や、中目黒などにいるおしゃれな女性がつけているイメージ。

すっきりとしたフローラル系の香水を探している人にはぜひお勧めしたい。


こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN シャンゼリゼ EDP)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00234/



▼GUERLAIN モンゲラン EDP

PRICE:12,000円(50ml)

トップ:ラベンダー

ミドル:バニラビーンズ

ラスト:ジャスミン サンバック

モンゲランは女優のアンジェリーナ・ジョリーにインスパイアさてた香り。

バニラの甘い香りが強いので夏場はあまりおすすめしないが、個人的には、女性としての色気を感じるので、夜に男性と会う時に少しだけつけていくといいと思います。

それにしてもこの香水はほんとに色気がすごい。ある意味自分に自信がないとつけれないかもしれません。
個人的には恋人につけて欲しい香水です。

こちらもアトマイザーを紹介しておきます。

▼▼香水の館(GUERLAIN モンゲラン EDP)

PRICE:800円(1.5ml)

https://item.rakuten.co.jp/kousuikan/a00202/


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