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私の好きなミルクさんの歌 Vol.1

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個人的にいいなあと思ったミルクさんの素敵な歌をまとめておくものです。
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#うたよみん

私の好きなミルクさんの歌 005

五首目は静寂が目の前に展開されるような里山の風景を詠われたものです。 ・ 山の抱く学び舎に落つ星ひとつ蛍のように持ち帰りたし 山に囲まれた田舎の学校は私にも見覚えのある風景です。田舎だから星はたくさん見えるのだと思いますが、都会のそれとは異なる一粒が大きな光なのでしょう。まるで蛍のあかりに例えられる瞬きを持って帰りたいと思うのも無理はありません。ミルクさんは昔のものがすべて嫌いな訳ではありません。古の表現も、時には抜き言葉も使われています。 旧仮名のように「見え透いて」使

私の好きなミルクさんの歌 004

四首目は少し季節がズレてしまいましたが、初夏の少しトーンの落ちた色合いを感じる歌です。 ・ 知らず居て張られ朽ちたる蜘蛛の巣が流れるかたち夏へのかたち 気付かないうちに巣が張られ、気付かないうちに住人も住処も朽ちていってしまう、注意して見ていなければ見逃す景色が、風という普段は目に見えないものの形を空間に留めていることの無常感が伺えます。きちんと五つの波を持つ音感も心地よく、少しだけ近い将来(未来)への予感に似た高揚感もあります。確かに蜘蛛の巣はモチーフとしてよく用いられ

私の好きなミルクさんの歌 002

二つ目も静かな気付きを含んだ一首です。 ・ 十代の弦は張り詰め細く鳴りモスキート音を今は聞けない これも以前に聞いたことはあったのですが、「モスキート音」、調べました。 17キロヘルツ前後の高周波音のことで20代前半までの若者には良く聞こえるが、それ以降の年代の人には聞こえづらい音のことだそうです。 ミルクさんらしい、短歌を投げ捨てるように読んでいる若者を嘆いた歌だと思いました。同時に今その音が聞けないことへの哀しみも少し感じられます。聞き取ろう、理解しようと思ってはい