パフォーマンスビルダー三浦の視点 #7 ~女性アスリートとジャンプの伸びしろ:女子フィギュアスケート編
冬のスポーツ界を鮮やかに、華やかに彩るフィギュアスケート。
華麗な衣装と音楽、そして体を用いて美しさを表現するフィギュアスケートは多くの人の心を掴んでいると思います。
今回は、フィギュアスケートの中でも特に「女性×ジャンプ」というトピックを取り上げてみたいと思います。
その理由は、「難しいから」です。
現代のフィギュアスケートにおいて、ジャンプの難易度は年々進化しています。
女性アスリートの場合は、元々男性アスリートと比べて「跳ぶ」という運動が難しい上に、体の成長の過程において、体重や体型の変化のタイミングで、ジャンプに悩む選手が多いように見受けられます。
パフォーマンスビルダーの視点から、どのような取り組みが考えられるのか、今日はそのお話です。
1,女性の体の特性~だるま落としの視点から
以前女性アスリートの体の特性に関する記事を書きました。
この記事で述べているように、女性は男性に比べて圧倒的に上半身の力が弱いのです。
まず、ここが女性が男性に比べてジャンプが苦手である理由です。
フィギュアスケートに限らず、「ジャンプ」というと「脚」で跳ぶイメージが多いかと思いますが、ジャンプに必要なのは「上半身の力」です。
ジャンプをする際にはその前段として、ぐっと体を曲げて沈み込む瞬間があるかと思いますが、その状態から上半身の力で体を上に持ち上げ、引き上げるからジャンプができるのです。
この引き上げる力の弱さ、それが女性がジャンプが苦手な理由であり、女性のジャンプ力の伸びしろでもあります。
さらに、もう1点。
ここに成長のタイミングが加わります。
私がパフォーマンス構築の際に重要視していることとして、「人間の体の構造をだるま落としのイメージで捉えること」があります。
まだ体の軽い小学生のうちには、ひとつひとつのコマの大きさに差はなく、
きれいに配列されているだるま落としですが、女性の場合は子どもの体から大人の体へと発達していくタイミングで、このだるま落としの各コマの大きさに変化が生じるのです。
上半身のコマが小さいという、もともと女性が備えている特性が、成長や発達の過程の中で顕著になってくるわけです。
この体の変化が理由で「これまで跳べていたジャンプが跳びにくくなる時」が女性アスリートには訪れてしまうのです。
2、 成長期のバランスの変化に対する対策及び解決策
ではこの事実にどのような対応策が考えられるでしょうか。
※上半身の強化を考える
「上半身のコマが小さい」ことが女性の体の特性の一つなので、そのコマを強化することが重要です。
具体的には、手首や腕から肩甲骨、背中の強化をすること。
これにより、体を上に引き上げる力をつけることができます。
なおかつ、ただ筋肉をつけるのではなく、人間の体の特性の一つである上半身(背中)やお尻の力を連動させて、「もりもり、むきむきの体の強さ」ではなく「しなやかに連動した体の強さ」を手に入れるようにします。
背中の力とお尻の力を連動させながら強化することで、ジャンプの高さも手に入れることができます。
まさに、フィギュアスケートのジャンプも四駆の体づくりですね!
フィギュアスケートの場合は、
●ジャンプの高さ(耐空時間)を手に入れられること
●怪我の理由となる下半身の疲労の蓄積を減らせること
…膝や足首、また下半身全般の筋肉への負担を減らすことができ、
より長い時間質の高い練習を繰り返すことが可能になります
●ムキっとたくましくなりすぎない美しい足の筋力も手に入れられる
…足の筋力が過度に発達しすぎることで、股関節の柔軟性が
失われる理由にもなります
このようなメリットを得ることができます。
このように、まず「ジャンプ(跳ぶ)」という動作のポイントを習得し、その上でトウループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセル等の多様なジャンプの跳び分けを考えていくことが有効だと考えます。
また、これらの強化を行った上で、実際にジャンプに回転を伴わせる際には、腕の動きが重要な鍵を握っています。このトピックに関しては、また別に記事を書ければと思います。
3、 おわりに
このようなアプローチが「女子フィギュア選手生命の長さ」に繋がると考えています。
選手としてパフォーマンスのピークを迎える年齢も低年齢化している側面もあるはずです。
けれど、本来は年齢を重ねる中で得られることがたくさんあり、その経験を活かしてより長く、よりハイレベルなパフォーマンスを生み出すことができるのではないでしょうか。
今回はフィギュアスケートのジャンプを取り上げてみました。
フィギュアスケートを始め新体操等の芸術系の競技の場合は、女性特有の体の美しさや強さを存分に表現できるものでもあります。
そのため女性の体の特性を考慮し、その特性に合わせた体づくりをすることでより多くの、魅力的なスケーター、選手が活躍する日が訪れますように。
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