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2020東京オリンピックシリーズ #3 ~女子バスケットボール編/日本が世界で勝ち続けるために

2020東京オリンピックで活躍を見せた競技の一つ、女子バスケットボール。
予選から決勝まで多くの試合を楽しませてもらいました。
決勝戦のアメリカ戦を観戦する中で、「私だったらここの強化をしたいな~」というイメージが出てきましたので、今回はそのお話をさせてもらいます。
キーワードは「どうやって高さに対応するか」ですね!


1、日本と世界の差

今回の大会を通じて、特に準決勝のフランス戦、そして決勝のアメリカ戦の中で、きっと誰しもが感じたこと、
「相手でかい!!!」でしたよね笑
決勝戦のアメリカ戦に関しては平均身長で10cmもの差があり、ゴール下の選手は203cmと!!
試合を見る前からアメリカは大きいんだろうなあとは思っていたものの、
実際に試合を見る中で、リバウンドにシュートブロックに局所局所でその高さに封じ込まれてしまう場面を目にしました。
と、同時に、私は「ここを強化できれば絶対におもしろいことになる」と勝手にイメージが湧き出てしまったのです笑
私は今回日本代表チームで試合に出場していた赤穂選手の練習を身近で見ていた経験があったこと、また彼女の体の特性が大まかに想像できるからこそ、そのイメージが具体的になったのかもしれません。

ただし、今回のこのお話はあくまで「日本が世界で勝ち続けるために、そして世界のどこの国にも対抗できるバスケットボールをするために」という前提のもとのお話です。
別の記事にも書きましたが、日本代表選手になるくらいの選手ですから、
日本国内のリーグではトップクラスの選手であり、国内リーグで勝つことを目標にするならば、その強化ポイントは全く異なります。
今回の記事はあくまで「世界で戦うこと」を前提としたお話です。
日本が世界の舞台で戦うために圧倒的に不足しているもの、それは「高さ」ですよね。

2、伸び代はここ! →腕の付け根

では具体的にどこを強化するのか。
それは「腕の付け根」です。

画像1

画像引用:photoAC

肩甲骨が肋骨とジョイントしている部分です(この青マークの部分)。
このパーツは体の中でどんな役割を果たしているのか。

画像2

画像引用:クライマーズバイブル(上巻21ページ)

この部分は、「木」に例えると、枝と木の幹のジョイント部分にあたります。
このジョイント部分に柔軟性と強さがあれば、雨風にさらされても折れることなく、そして枝葉に誰かがぶら下がっても簡単に折れることはありません。柔らかいだけでもだめ、硬く強固なだけでもだめ、柔らかさと強さの両方が求められるパーツです。
バスケットボールにおいて(スポーツ全般そうですが)、腕はとても重要な役割を果たしています。当たり前ですがボールを操作するのは腕です。
ドリブルはもちろん、リバウンドを取る、そしてシュートを打つ時にも腕を使います。

ここを強化することがアメリカの高さに対抗する鍵となるのです。


3、期待できる効果

では、ここを強化することで具体的にどのような効果が期待できるのか。

① リバウント(空中戦の高さと強さ)
「リバウントを制するものは試合を制す」と、とある漫画で読みましたが笑、リバウンドが取れなければ日本の攻撃が始まりません。
この腕の付け根を強化することで、まず押し負けずにボールをタップし、ボールを確実に自分の手元に引き寄せる力が向上します。
実際に試してみればわかりますが、手を上にあげた状態で、誰かと競った時に、腕に力を入れても対抗できません。この付け根の部分が強く安定することで、その先の腕の強さが生きてくるのです。腕を上に挙げた状態で、キープできなければそれだけで10~20cmの高さを失うことに繋がります。

② シュートの安定性とバリエーション(距離)
シュートを放つ根本の安定性が高まることで、より手首の力を上手に、そして強く使うことができるようになります。
ゴール下のシュートはもちろん、あらゆるジャンプシュートの精度を上げることができ、またボールの飛距離も変わってくるため、シュートのバリエーションが広がり、安定性・確実性も出てきます。

③ 相手のブロックに対抗する力
②のシュートの話と関連しますが、シュートを打つ前に何かしらの接触があった場合、相手のブロックやフィジカルに対抗しながら自分がシュートを打ちやすいポジションをつくり続けることが重要だと思います。
今回試合の映像がスローモーションで流される場面が何度かありましたが、接触がある場面では相手の体の強さに負けて、シュートを打つ前の体制の段階で既に負けているような場面が見受けられました。
接触が無い場面でのシュートの強化も重要ですが、多少の接触があっても、
そこをガードし、自分がシュートを打ちやすいポジションを維持し続けることも重要だと考えます。
腕の付け根が安定することで、実は下半身にも力が入りやすくなり体全身で相手のブロックに対抗することができるようになります。

ここまでは主に腕に特化した効果をあげてみましたが、もう少し視野を広げてみると、腕の付け根を強化することで上半身の力が安定・向上し、フットワークにおける下半身の負担を軽減することができます。
またリバウンドの際のスクリーンアウト(ポジション取り)にも貢献できるでしょう。
そして何より、私が一番懸念している女子アスリートの「膝」を守ることにも大きな関連性があります。この腕の付け根の部分(青いマーキングの部分)は腹筋を介し下半身に連動しています。腕の付け根の強化に始まり、併せて体幹部の動きを工夫することで、足の内側(内もも)の力を向上させることになるため、女子アスリートの膝の怪我の予防へと繋がるのです。
今回残念ながら 渡嘉敷選手が膝の怪我でオリンピックに出場できなくなってしまいました。選手の怪我による離脱はチームの戦力にも関係しますし、何よりもご本人が一番悔しいのではないでしょうか。怪我を「100%」予防することはできませんが、100%に近づける工夫はまだまだ、まだまだできることがたくさんあります。


4、おわりに

私はバスケットボールの指導者ではないので、具体的な戦術論は述べられません。
ただ、私の、体の面からその競技を捉え、怪我を予防した上で選手のパフォーマンスを構築するという視点に立った時には、このような強化ポイントをあげることができます。
ちなみに、この「腕の付け根の部分」のお話は私がクライミングとの関わりを通じて得た視点です。
私の経験から得てきた「手」の概念をクライマー以外の皆さんへ提供する、
これからの私のわくわくの源泉です。

日本女子バスケットボールが次の階段へ登るサポートをぜひしてみたいなぁ、トムさん(去就未定となっているそうですが)とお話してみたいなあと思いながら今回の記事を終わりにしたいと思います。


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