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異世界に迷い込む

昨年末のこと。
塾から帰ってきた息子が、同じ塾に通う同級生二人とコンビニに行くからお金を頂戴と家内にねだっていました。
冬休みということもあり、21時30分頃でしたが、早く帰ってきなさいよと注意を受けながら出かけて行きました。

22時30分頃になり、随分遅いなと家内がスマホのGPSで調べてみると、どうやらコンビニではなく少し遠いところにあるドン・キホーテにいるようです。
あいつもうすぐ受験なのに何やってんの!と家内はご立腹です。
そして23時を少し過ぎたあたりで息子が帰ってきました。

当然のごとく家内からさんざん小言を言われたわけですが、それが終わるのを待っていたように息子が話し出しました。
僕はパソコンでゲームをしながらそれを聞いていましたが、内容はこんな感じのものでした。

ドン・キホーテから出て大通りを三人で歩いていたら、妙に薄暗い一角に差し掛かった。
よく見るとガラス張りで中がガランとしていて何もない廃墟のような建物があり、そこにある看板がホラーゲームに出てくるように切れかかったような電球の明かりでうすぼんやりと灯っていた。
字は薄れていて良く読めなかったが「オシランド」と書いてあったように思う。
そして薄暗い細い道しか無いのに、P(駐車場)この奥のように矢印が書いてあった。
気がつくとそれまで車がたくさん走っていたはずなのに、大通りは車が通らず急に静かになった。
見れば見るほど気味が悪い看板で、怖くなって三人で走って帰ってきた。
気がつくと車も普通に走っていて、辺りも明るくなっていた。

普段車ではよく通る道ですが、歩いて通る事は無いので息子も詳細な場所がわからず、家内が場所を特定しようと、息子にあれこれ質問していましたが、あやふやな回答しか返ってきません。

「オシランド?」何か保育園のようなものか、それともフィンランドのフが欠けて暗がりでそう見えたのか・・・・どうもピンときません。

そのうち何とか息子のつたない情報を基に、家内が場所を特定しました。ストリートビューで息子に確認するとこんな感じの建物だったと興奮気味にうなずいています。
僕もストリートビューの画面を見せてもらって「オシランド」の謎が解けました。
かつてそこは「すしおんど」という回転寿司屋さんでした。
恐らくそれがはっきり見えずに「おしらんど」に見えたのでしょう。
息子が生まれた頃に無くなったので、お店の存在は知らないはずです。

そこで息子に「それさぁ、すしおんどって書いてなかったか?昔そういう名前の回転寿司屋がそこにあったんだよ」というと、「明かりが暗くてはっきり見えなかったかったけど、そうかも知れない」とのことでした。

でもここで一つ疑問が湧きました。
そのお寿司屋さんがあったのは15年ぐらい前でしょうか。その後も店舗が入れ替わり、今はインテリアなどを扱うお店になっています。
なのに看板にお寿司屋さんの名前があるのはおかしいし、息子が見たというホラーゲームに出てくるようなうすぼんやりと照らされた看板なんてあるはずがありません。

すると家内が息子を脅かすように言いました。
「場所とか建物には念が取り付くことがあって、きっとその建物も回転寿司で賑わってた頃が懐かしくて、あの頃は大勢の子どもも来てくれて楽しかったなぁって思ってさ、あんたたちを引っ張り込もうとしたんだよ、きっと。良かったねぇ、そのまま奥に進んで行かなくて。ひょっとしたらもう二度とこっちの世界には戻れなかったかもよ。神隠しってこういうことなんじゃないかな・・・遅くまで遊んでるとこういうこともあるんだよ」
息子は怖がって変な顔になりながら、友人にも教えてやろうと部屋に戻って行きました。

息子が見たのは一体何だったのでしょうか・・・・



これで終わると世にも奇妙な物語みたいな話ですが、真実は一つ!身体は大人頭脳は子供の名探偵ぺれぴちが謎を解くために現地調査に赴いてきました。

お店はやはりカーテンなどを扱う店で、普通に営業しています。
建物にもそのお店の名前しか書いてありません。
そしてお店から少し離れた道路沿いに件の看板がありました。
しかし看板は使っていないようで真っ白です。ストリートビューで見た時と一緒です。
やはり息子は異世界に迷い込んだのか。


そして今日の夜、息子が通ったのと同じぐらいの時間に再度調査のために現地に向きました。
そしてそこで見てしまったのです。
異世界への入り口を・・・・



これ怖いって

僕のスマホのカメラは暗いところに強く、暗いところで普通に撮ってもかなり明るく写ります。
この看板もだいぶ明るくはっきり写っていますが、実はこれ肉眼だと明かりが点いているのがよくわからないぐらい薄暗いのです。

ちょっとお店の人!これって毎晩電気が点いてるの知ってるの?電気代無駄じゃない?
つか、たしかに看板が気味悪い事になってるし。

結局息子たちはこの看板を見てなんとなく怖くなってしまい、さらに店舗はガラス張りですが、中は暗いのでガランとしていて廃墟のように見えて、大通りは手前の信号が赤になって1分ぐらい車が来ないタイミングがあって、さらに当時は細い道を入った店舗の裏手が駐車場だったし、このあたりだけ丁度街灯が途切れて薄暗いしというのが異世界の真相でした。

去年越しの謎が解けてスッキリしました。


さっき息子に「どうだった?」と聞かれたので、「やっぱりただの白い看板しか無かったぞ」と言ったら怖がってました。

おしまい

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