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アナタハンの女王 その1

あーあ、世の中から自分以外の男は消えてなくならないかな。

男なら誰でも中高生の頃に一度は思った事があるはず。
大抵それは、自分が気になっている子が、イケメンの先輩や、スポーツ万能の秀才同級生に憧れているのがわかった時に思います。

冷静に考えれば、世の中の男が自分だけになったとしても、きっとその子が振り向くことは無いのですが、そこまで考えられないんですね。
それどころか大人になった今、リアルにそういう状況になった場合を考えると、非常に恐ろしい事になるのが解ります。

ちょっと想像してみましょう。
この世界で男は僕だけになったとして・・・

まず、男が一人しかいないのであれば、人類は今の子供たちの世代で滅びる、ならばその日までせめて楽しく暮らして、人類が地球に生きた証を残しましょう的な国連憲章のようなものが提唱され、女性だけになった地球では、国同士の紛争は無くなり、平和な時代になります。
女性たちは力を合わせ、人類最後の日まで楽しく暮らすように努力します。

そんな中、年に1度ぐらいワイドショーで「人類最後の男性ぺれぴちさん」みたいに見世物的に取り上げられます。
自分たちの代で人類を終わらせようとする女性たちは、子孫を残してはいけないという不文律を作り、誰も相手にしてくれません。

やがて自分が死ぬと、国立科学博物館あたりに、防腐加工を施されて素っ裸で「人類最後の男性」として展示されます。
それを見た人たちは、せめてこれが最後の男性じゃなければ、人類ももう少し続いたかもねー。
こんな遺伝子なら残さなくて正解だったねーと言い合います。

そんな目に合うので、この世の中には男性がたくさんいた方がいいです。

では、この世の中の女性が一人だけになったらどうなるでしょうか。

かつてそういう事件がありました。

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昭和19年6月12日、当時太平洋で海軍の最大の根拠地だったトラック島に向かっていたカツオ漁船2隻が、米軍機の空襲を受けて沈没します。
彼らは海軍に徴用された船で、トラック島近辺の島々に物資輸送を行う輸送船として徴用されたのです。
乗組員は水兵が2名と軍属扱いの漁師8名の10人ずつ、2隻合わせて20人が乗り組んでいました。

彼らは命からがら近くの島に泳ぎ着きました。この島はアナタハン島という島でした。

アナタハン1

赤いピンがアナタハン島

アナタハン2



更に翌13日、もう1隻の徴用漁船も空襲を受け、アナタハン島へ逃れてきました。
3隻の乗組員は奇跡的に30人全員がアナタハン島へ上陸することができたのです。

島は横長で、東西7.5km 南北3.5km と小さく、平坦地は殆どありません。
少数の原住民しかいないと思って上陸した彼らの前に、日本人の男と若い女が現れました。
男は南洋興発の社員で農園技師、女は南洋興発で働く別な男の妻でしたが、夫は他の島へ行き消息不明になっていました。
(この頃、サイパン島に南洋興発という会社があり、製糖業を中心に南洋諸島を次々と開発していました)

こうして計32名の日本人が共同生活をすることになったのでした。

次回最終回へつづく






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