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洞爺丸沈没 その2(全9話)

それでは9月26日の出来事を時系列的に見て行きたいと思います。

韋駄天台風

3:00 
鹿児島に上陸した台風15号(マリー)は宮崎県のあたりにあり、時速は80Km/h最大風速35mの勢力でした。24時間後の進路は房総沖から三陸沖あたりと予想されていました。

秋の台風は一度日本海に出てから太平洋側へ抜ける事が多く、今回もそのような進路が想定されていました。

3:00 鹿児島から上陸して宮崎県付近にいる

5:00
台風は愛媛県の中部にあり、90Km/hの猛スピードで北東に進んでいました。瀬戸内海を通り、12:00頃に北陸へ接近する模様。

970mb、風速35m。

洞爺丸青森出港

6:30
ベテランの近藤船長が乗る洞爺丸は、下り(函館行き)3便として雨の青森港を出発しました。

近藤船長は「天気図」とあだ名されるほど気象に詳しく、ラジオの気象放送を元に天気図を描き、天気を読むのを得意としていました。この時点で台風が太平洋側に抜けるか、そのまま北寄りの進路を取るかはわかりませんでした。日本海に寒冷前線があり、その影響で北寄りに進むか東に進路を変えるかが断定できない状態でした。

風速東10m~15m。

8:00
函館気象台発
・当地方の南方を台風が通過する見込み(東北を横断して太平洋に抜けると
 予想

・昼頃から東の風が強くなります
・海上15m~20m

9:00
洞爺丸は陸奥湾を出て、津軽海峡へ差し掛かりました。東の風20m。台風は鳥取の北、日本海にあり、中心気圧968mb速度は110km/hで北東に進んでいました。

恐ろしく速度が上がっています。

11:05
定刻より5分遅れて洞爺丸は函館に到着しました。

11:30
函館気象台発
・台風が接近中。全域で暴風雨になります
・昼頃から暴風雨は強くなり、明朝は弱くなります
・陸上は20m~25m、海上は25m~30mの風
・降水量20mm~50mm

この頃、台風の予想進路は北寄りになると想定され、夕方頃に津軽海峡を横断する形になるのではないかと予想されました。

読み

12:00
NHK第一放送のニュース
「中央気象台午前11時30分発表。台風は午前9時、山陰地方沖合にあって、毎時110kmで北東に進んでいます。中心付近の気圧は968mb~(略)~今日夕方、奥羽地方北部から北海道に達し、夜半過ぎには北海道の北東の海上に去る見込みです」

これを聞いた近藤船長は天気図に最新の情報を書き込み、台風の位置を推測しました。このスピードで進んでくれば、津軽海峡へは16:30頃に到達すると推測しました。

洞爺丸はこの後、14:00に上り便として青森へ向けて出港します。出航後2時間30分ほどして台風とぶつかる事になりますが、それならば行けると判断しました。

なぜならば、少しの間はシケや風と闘わなければなりませんが、すぐに陸奥湾に入れる位置だからです。陸奥湾に入ってしまえば、波も風も穏やかになり、例え台風が来ても航行は可能です。

台風のスピードは110km/hと通常ではあり得ないスピードになっていますので、これ以上早く来ることは無いと想定されます。これよりスピードが落ちた場合は、陸奥湾に入り込んでから台風が来ることになり、なおの事余裕だと思われました。

その3へつづく



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