見仏上人シリーズ 雄島と五大堂とおしゃれカフェ 西行編
それでは西行戻しの松に行ってみましょう。
まずは位置関係ですが、車なら5分、徒歩なら駅から20分です。
ちなみに西行とは西行法師の事で、元々は武士でしたが出家して全国を回った人です。出家した理由は定かではなく諸説ありますが、失恋したからではないかとも言われています。
陸奥にもはるばるやってきて、藤原秀衡に会ったりその帰途に源頼朝に会ったりした記録が残っています。やたらと歌が上手な人で、当時のコンピレーショアルバムである新古今集や千載集などにもたくさんの歌が選ばれており、特に恋愛ソングが得意で、あいみょんとか米津玄師みたいな人だと思えば間違いありません。
さて、その西行戻しの松ですが、こんな謂れがあります。
西行が北面の武士だった頃、ある官女と契りを交わしてたびたび通っていました。官女は世間に漏れる事を恐れて「あこぎだ」と言ってたしなめます。ところが西行は「あこぎ」の意味が解らず、同僚に聞いても誰も知りません。悶えのあまり出家して全国を回り「あこぎ」の意味を知ろうとしました。
その途中で西行戻しの松までやってきました。するとお爺さんが牛に草を食べさせていましたが、いつまでも貪り食べているので「なんでそうあこぎなのか、いい加減にしろ」と牛を叱ります。これだ!と西行は「あこぎ」の意味を尋ねました。するとお爺さんは軽蔑したような顔で「伊勢の海 阿漕が浦に 曳く網も 度かさなれば あらはれやせむ」と古い歌を詠みました。
(意味:隠し事も何回もやっているといつか知れ渡ってしまう)
西行は自分の無学を恥じて、ここから引き返したそうです。そしてこのお爺さんは松島明神の化身であったと言われています。
もう一つの話は、西行法師がとある理由で松島寺に向かう途中ここまでやって来て、一面のススキを見て近くにいた鎌を持った童子に歌を読んで聞かせたというものです。
月にそふ 桂男のかよひ来て すすきはらむは 誰が子なるらん
するとそれを聞いた童子がすかさず、
雨も降り 霞も罹り 霧も降りて はらむすすきは誰れが 子なるらん
と詠みました。
驚いた西行が「そなたは何の仕事をしているのだ」と聞くと、「冬萌きて 夏枯れ草」を刈って生業にしていると答えました。西行は意味が解らず困っていると、その童子が「松島には才子博士雲の如し、お前のような小才を誇って恥をさらすより、速やかに立ち去った方がいいだろう」と諭したので、西行は恐れて引き返したという事です。
さてこのくだり、ちょっとわかりにくいので解説します。
桂男とは月に住むという伝説上のイケメンです。
「月に寄り添うように毎晩イケメンが通って来るうちに、穂が膨らんでいるススキのように妊娠したのはどこの娘かな?」
まぁ、子供には難しかったかな?と西行が下ネタで童子をからかったのです。すると童子が
「草木には雨も降るし、霞もかかるし、霧も降るように、美人には男性が寄って来るものです。で?穂が膨らんでいるススキのように妊娠したのはどこの娘かな?」
とあっさりと返されて馬鹿にされてしまったという事です。
そこで「お前は一体何者だ」と聞いたら謎かけのような返答をされたわけですが、あれは麦を刈って暮らしているという意味です。雪の前に小麦の種をまくと、雪の下で発芽して雪解けと同時に生長を開始し、一粒一粒が大きく育ちます。収穫するときには黄金色の麦の穂は枯れたように見えます。
さらに続きがあって、意味が解らず悔しい西行が「童には、岸打つ波の数こそ知るらん」(お前には岸に打ち寄せる波の数がわかるか)と問いかけると、「西行は 諸国西国周れども 天なる星の数は知るまい」(西行こそ全国を旅して回って毎晩星を見ているが、天の星の数はわからないだろう)とあっさり返されて、尻尾を巻いて逃げ帰るのです。
この童子は山王権現の化身だと言われていますが、なんと!天才と言われた宮千代だったという話も伝わっています。
面白い話ではありますが、実は西行に関するこのような伝説は各地にあるようです。松島には来ていないという説もあります。
次の記事で書きますが、西行には松島に来る理由があったのです。ここでようやく見仏上人が絡んできます。
とまぁ、歴史の話はここまで。この後は、西行戻しの松の傍にあるカフェでちょっと早いランチを頂きます。
11時開店ですが、眺望がいいので開店前に人が並びます。この日も5,6組いたでしょうか。ちょっと遅れた我が家でしたが無事窓際に座れました。
カフェからの眺めはこんな感じ。
店を出るまで1時間ちょっとかかっているので、最初の組に入れないと12時頃までは待たないといけないという事になります。
普段は食べないクロックムッシュといかいう、こじゃれたパンを食べました。いや、美味しいですね。
何故こんなカフェに来たかと言うと、今回の取材で一人で雄島に行くのは怖いので、家族を巻き込む必要があったのですが、なんでそんな島に行くの?一人で行ったら?という話になる恐れもあったので、しゃれたカフェがあるみたいだから行ってみない?と持ちかけて、11時の開店だからそれまで松島でプチ観光をしようと、いかにもついでに観光する態で来たからです。
なんで普段写真撮らないのに今日は撮りまくってるの?と鋭い所を突かれつつも、ビデオカメラを忘れたから、やむを得ず写真を多く撮っているんだと、西行をやっつけた童子のように切り返して事なきを得ました。
これにて現地取材は終わりです。見仏上人が修行していた場所のイメージが湧いたでしょうか。次回は見仏上人の事績を書いてシリーズを終わりたいと思います。
それにしてもシリーズと言う割に見仏上人がでてきませんね。
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