愛とか恋とか

「やっぱまだ好きなんだよな~」
深夜の鳥貴族でチーズつくねを頬張る私に、泥酔気味の友人が語る。
また始まったよと内心少し呆れながらレモンサワーを流し込む。
川谷絵音似の友人は、去年の十二月に高値の花に手を延ばそうとし、あえなく崖から落ちたのだ。一ヶ月に一度飲む仲の私たちの会話は、必ずこの話題に行き着く。
一目惚れだったんだと語る彼の目には、涙が滲んでいる。ただ、それが彼女を想ってなのか、夜勤明けの寝不足からくるものなのか私は知らない。
いつものように会話を流そうと思ったが、夏休みもありしばらく会っていなかったのでしょうがない。何度も聞いた話を再び聞くことにした。

 彼女と出会ったのは、二年の後期の授業だったらしい。白い肌と猫目に惹かれた彼は徐々に彼女との距離を近づけていった。すぐに彼氏がいることが分かったが、彼は挫けず、アプローチを続けた。幸運なことに彼と彼女の共通の趣味が酒だったこともあり、彼らは飲み友だちとなった。彼女と飲みに行く前の彼の顔は緩みに緩んでいた。しかし、現在は、就活などの環境の変化に伴って彼女ともだんだんと疎遠になっている。これが私の知っている情報だ。

また同じ話を聞かされると思っていたが、いつも以上に酔っている彼は、「ここだけの話な、、」と語り始めた。
その事件は去年の十一月に起きた。LINEの彼女のアイコンが彼氏とのツーショットから花に変わっていたことに気づいた彼は全てを悟った。すぐに飲みに誘い、話を聞いたという。その日は二人とも浴びるように飲み続けた。終電を無くした彼は彼女の家に転がり込んだ。その後のことは想像に難くない。

ミックスジュースの甘ったるさが喉に張り付いているのを感じる。冷静なふりをしていたが、現実でそんな話を聞くのは初めてだった。衝撃を受けながらも、何度も同じ話をする彼に納得がいった。

やはり、男は金玉の奴隷なのである。悲しいがこれは男の性。愛だの恋だの講釈を垂れても結局は、金玉が司る。そんなことないと言う人がいるのも分かる。ただ、決して私は金玉の奴隷が悪いということを言いたいのではない。むしろ、金玉と社会に折り合いをつけ、結婚をし、家族のために働く世の中の「父」という存在に敬意を覚えた。これが大人になるということなのかもしれないとも思った。愛や恋と性欲は絶対に切り離せない。それは男も女もそう。恋愛で悩む女子校生たちにこの持論を説きたい。そして、愛や恋を高尚なものとして、聞き慣れたメロディーとともに歌う邦ロックバンドがより一層嫌いになった。

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