🌘車内で暇つぶし

「楓ちゃん、電車ぜんぜん動きそうにないね。」
「うーん。急停車してから20分も経つのに。」
「ついてないね。まだまだ動かなさそうだし。」
「渚ちゃん、なにか遊べるもの持ってないの？」
「なにもない。楓ちゃんは？」
「ないよ。いつものこれぐらい。」
「でた、駒袋。将棋できないの？」
「うーん。大駒と金駒が圧倒的に足らない。あと、王様も。」
「全然だめじゃん。」
「でも、桂馬と香車なら20枚セット買ったばかりだよ。それを他の駒の代わりにするとか。」
「見分けつかないから。」

「他には入ってないの？」
「えーっと、あったよ、イーピン。」
「麻雀牌！」
「あと、スーピン。」
「しかも、4枚ずつ！　なんで持ってるの？」
「家族で麻雀してるときに、みんながイースーピン待ちにならないように、抜いてきた。」
「ひどい。せっかくリャンメン待ちなのに。」
「ところが空テンなんだな、これが。」
「楓ちゃん、ズルすぎるよ。」
「あとは、西が4枚。」
「それはなんで？」
「国士無双対策だよ。」
「ズルいなぁ。あれ、でもイーピン抜いてるから、国士はそもそもムリじゃない？」
「あっ、確かに。」
「抜いた意味なかったね。」
「西は今度返しておこう。」
「ピンズも返しな。」

「他には？」
「スペードの3もあるよ。」
「なんでトランプ1枚だけ？」
「大富豪で安心してジョーカー出したいんだもん。」
「理由それだけ？　じゃあ、このカードは？」
「花札。桜に幕と菊に盃の花見酒セット。」
「5点、持ち歩いてる！」
「前は、芒に月もあったんだけど、どこかで失くしちゃった。」
「月見酒じゃん！」
「でも、月はイーピンでいいんだよね。似てるから。」
「だめじゃないかな？」

「あとは、これかな。」
「なにそれ。」
「タロットカード。」
「なんで持ってるの？」
「今日の朝の占いのラッキーアイテムだったから。」
「そんなことある？　どこの局の占い見てるの？」
「だから、適当に1枚引いてきた。」
「死神のカード！」
「これ持ってるから、今日の楓ちゃんはラッキーなのだ。」
「よくそう思えるね。」
「ラッキーアイテムだよ。」
「死神だよ。それに、電車止まってるし。普通にアンラッキーじゃない？」

「で、渚ちゃん。これだけあったら、なにか遊べないかな？」
「バラバラすぎて、思いつかないよ。」
「神経衰弱は？　イーピン揃えたら勝ちとか。」
「見た目でわかるじゃん。」
「そっか。」
「仕方がないな。振り駒でもしようか。歩の代わりに桂馬で。」
「分かった。では、楓ちゃんの振り桂先で。」
「いいよ。」
「おっ、成桂が3枚出たので、渚ちゃんの先手です。」
「やったー。ところで、何の先手？」
「うーん、それも渚ちゃんが決めて。」
「そんな適当な！」