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コミックス感想 杉基イクラ『ナナマルサンバツ』19巻 クライマックス直前!大波乱のSQ大会準決勝!今回の主役は間違いなくキノコ頭、南!

 ヤングエース連載開始時からもう10年近く追っている『ナナマルサンバツ』の最新19巻が先日10月2日に発売していたので、ざっくりと『ナナマルサンバツ』の紹介とその感想を投稿します。

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概略:ナナマルサンバツとは?

 今でこそ東大王Quiz Knockなどの影響で注目度の上がってきた競技クイズを、10年以上前から少年漫画として真っ正面から描いてきた作品です。当時『サマーウォーズ』のコミカライズをされていた杉基イクラ先生の新作ということで連載前から注目していたのを覚えています。(貞本先生本人と見紛う画力と侘助周りの描写が本当に秀逸でした!)

 タイトルの『ナナマルサンバツ』とはそのままズバリ 7◯3× というクイズ形式のこと。(7問先取で勝ち、3問誤答で失格の意味)
 「確定ポイント」をはじめとした、競技クイズで勝つための高度なテクニックの数々に、連載当初から未だに衝撃を受け続けています。

前代未聞の競技クイズという題材 工夫の数々

 連載当初は競技クイズの紹介をしながらも、クイズ初心者であるヤングエースの読者層を置いていかないよう様々な工夫がされていました。

①オタクでもわかる小ネタがクイズの鍵?

 シリーズ序盤では各話の鍵となる出題にネットスラングや流行りのアニメ・ゲームネタなどが扱われていました。一見ガチ目の問題も中二病患者が反応しがちなものだったり。クイズ初心者にも馴染み深いネタが扱われることでドラマチックな場面で「これなら俺でもわかる」と共感できました。

②適度な青春ラブコメ

 主人公の内向的な越山君に対してやたら距離感の近いヒロイン深見さん。
 この二人が下品にならない適度なレベルで青春ラブコメしているのでクイズパート以外でも飽きさせません。……未だにどこまで二人が相手を異性として意識しているのか怪しいくらいゆっくりですが(笑)
 それにしてもミステリアスだった深見さんがまさかあそこまで残念美人になっていくとは、連載当初は予想できませんでした。(片鱗は確かに多々あったが。やはり中一ランドセルの変態兄妹のインパクトか)

③主人公以上にクイズ初心者、井上大将という存在

 これは持論になりますが「なんだかんだで才能ある主人公と違って、読者が簡単に見下せて優越感に浸れる格下の友人キャラ」って結構いると思います。読者は彼らの小者な言動や慌てぶりを見てバカにしながら、その実一番その行動に共感してしまうタイプ。『ハルヒ』の白石とか『ダイの大冒険』のポップ(序盤)とか。劇場版ドラえもんで真の視聴者目線のキャラクターは英雄のび太ではなく、実は臆病なスネ夫なのです!

 『ナナマルサンバツ』にも井上大将という若干デブいオタクキャラが出てきます。最初は深見さん目当ての下心からだった井上は、正直「主人公の引き立て役かな?」という印象でした。
 だがしかし!そんな彼も巻を進むごとに越山くんやライバルたちに影響され、笹島部長の的確な指導のもと地道な努力を積み重ねて成長していきます。その意外な活躍に毎回「おお!」と驚かされ続け、気がつけばシリーズ終盤には「全国大会で運営や強豪校から注目されるルーキー」とまでに!!
成長速度だけでいうなら越山君以上ですよ彼は(キルバーン風賛辞)

……でもまあいわゆる「おれら代表のオタクキャラ」扱いするにはコイツ、コミュ力高過ぎ!気配り出来過ぎ!行動力ありすぎ!隠れた特技多過ぎ!と結構大概なスペックしていて不適な気もするんですがね(前提崩壊)

④全員に青春がある魅力的なキャラクター

 クイズの強豪校が多数登場するこの作品、そのぶんキャラクターも多いです。(1校につき基本4名以上ネームド、Bチームや運営側なども多数)
 にもかかわらず、キャラクターほぼ全員にクイズにかける情熱や大会に臨む背景が語られており、魅力が増し増しに!まじでモブキャラがいません!
 主人公とライバルたちのぶつかり合いをただ横で眺めているだけでなく、絶妙なタイミングで刺しにくるので油断できません。「チャラ男が賑やかしに来たのか?」って第一印象だった恵比寿高校の大活躍ぶりとか!!この漫画意外な伏兵多すぎ!(歓喜)
 主人公たちの活躍以外にも推しの高校やキャラの勝敗に一喜一憂。ドラマの緩急が見事です。

とまあ、どういう作品か語り出すとこのように止まらないのでこの辺でそろそろ19巻の感想に入ります。

19巻感想(ネタバレ全開注意!!)

 表紙は御来屋くんがセンターで他の強豪の主将勢揃いというオールスター。次巻完結ということもあり感慨深いメンツです。
 SQ準決勝ステップ2の終盤戦、足切りラインをかけての生き残りサバイバルも佳境、という場面から始まります!なんですが…

お前が先に落ちるんかい!

 冒頭からツッコミました。前巻の時点でほぼ命運の尽きていた楠女学院(余談ですが僕の推しチーム)はともかくとして、まさかの優勝候補、帝山・河野チーム敗退!散々煽って、実力差見せつけて、舐めプまでしていたのに!?
 内容的にはクイズの純粋な実力というより、STEP2の出題形式と運動音痴な虎壱の相性が最悪だったのが致命的過ぎたということなんですが。(答えが先にわかっていても運動力で対応できない)

 掲載当初、衝撃を受けたこの展開ですが、冷静にコミックスで読み直してみると、帝山・河野チームというのは徹頭徹尾トリックスターのチームであって、競技クイズの青春をかけた最後のライバルチームには似つかわしくなかった?、ということなのではないかと思います。
 既巻で河野チームメンバーの凄さは十分見せつけており、竜壱と笹島部長の因縁も解消済み、虎壱の圧倒的ながら不安定な部分の描写もあって、と敗退に至る伏線ははられていたのかな、と。
 帝山・河野チームは主将河野のリスキー過ぎるスタンスが他校とは異質過ぎてずっと違和感があったのですが、既に一度優勝している彼にとって連覇は第一目標ではもうなくなっていたのかな?と思うようになりました。前回大会で勝利至上主義に陥った開城が自滅していく様子を間近で見ていたわけですし。「目の前のクイズそのものを楽しみ尽くす」という点では、予選から終始一貫していましたしこのチーム。

 最強キャラ候補の竜壱が不戦敗ということで、若干まだ消化不良感はあるものの、後輩である森崎の成長を促して河野チームの役目は引き継がれた、ということでこの辺で。 (推しである楠女学院にトドメを刺さされたゆえ、僕は森崎くんに私怨はありますw)

いよいよ本命STEP3開戦!!

 麻ヶ丘例会以来となる越山VS御来屋がついに実現。リアルタイムで7年ぶりくらい?感慨深いです。
 他のメンバーも「文王」大蔵をはじめとした主将級の豪華な面々。新たに説明された追加ルールにより、獲得陣地の相談役として、各チームセコンド枠を設けることに。笹島、深見兄ら最強クラスのメンバーもここで再び出番が!最終決戦感が俄然増します(準決勝なのに)

相変わらずヒロイン力発揮しまくる御来屋くん

 宮浦の御来屋くんも当然セコンド役として芦屋センパイを指名するわけですが、ここで「なぜ芦屋センパイなのか」と長々思い出を唐突に語りはじめます。周囲の反応に気づかず喋り続ける御来屋に、そのあまりのこっぱずかしさから赤面して出てくる芦屋先輩。完全に「恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて僕は好きです」のアレ。ざわざわ。
 麻ヶ丘女学院では新名×芦屋が主流のようですが、これ見てまだ息できてるのでしょうか?それとも政変起きるのでしょうか?

 自信過剰で負けず嫌いで人見知りするくせ寂しがりやで虚弱体質で数学の話すると止まらない理系オタク、萌の過積載キャラ御来屋千智。やっぱこの漫画のヒロインは君だと思う。(深見さんは笹島部長信者、重症ブラコン、越山君へのコンプレックスって業の深い要素が合わさってヒロイン→戦友ポジに移行した印象)

キノコ無双のSTEP3!ルイージ南の逆襲!

 やっと記事タイトルで触れたキノコくんこと、ルイージ高校南十矢の話ができます。
 SQ本戦から登場の彼とルイージ高校は、いきなり帝山や開城に煽りいれたりしてきて露骨に噛ませくさい印象だったのですが、面白留学生エリオット・武流の参戦あたりからやたら賑やかなチームと印象が変わりました。エリオットの謎行動やミスを「仕方なか」と素直に受け止める苦労人ぶりにイメージが軟化したのだと思います。

 前回のラウンドでは深見兄に押し負けた南でしたが、このラウンドでは3年連続3位の雪辱を果たすべくラッキーボーイエリオットをセコンドにつけ、大会にかける執念がいよいよ全開に!(実は初登場時は「2年連続3位」表記だったのは内緒。正確にはルイージ高校としては3年連続、南個人としては2年連続なので、誤植とも言い切れない微妙な表現ですが)
 鬼神のごとき強さを発揮する南の前に、開城の大蔵を除いてほとんど他が相手になりません!越山との初対決であっさり完勝したばかりか、直後敗戦から学習した越山とのリベンジマッチも制する手のつけられなさ!主人公補正キャンセル!
 そのあまりの強さに笹島さえ「優勝候補プレーヤー」と認めるほど。2年生世代バケモノ多すぎ!!

帝山・森崎チームの伏兵、志賀尚弥開眼!

 そんな無双状態の南や覚醒入った御来屋君にボッコボコにされる帝山・森崎チーム志賀尚弥(3年)。そこそこ器用で無難にこなすスタンスだった彼にとって、規格外モンスター達を相手にすることは酷でした。
 そんな弱気な志賀に発破をかける森崎。後輩の成長と一丸となった帝山チーム全員の声援を受けて、ついに開眼!ひたすら泥臭い戦術と執念で南に一矢報います。糸目キャラが目を開くと強い法則は健在。

万年3位の呪い!それでも折れない南の執念!

 志賀の逆襲と大蔵の追撃、さらにまた志賀の決死覚悟の「オールイン」宣言により一転窮地に陥る南。
 そんな余裕のなくなった南を不安気に見つめるルイージ高校1年に、2年のゲスメガネ瀬戸口が「呪い」の話を聞かせます。
 3年連続3位。客観的には極めて優秀なその成績も、努力を積み上げて優勝をめざしてきた当事者達からすると自己否定に等しい結果。3位は所詮敗者でしかない。楽しくてはじめたクイズのはずが、優勝への期待が重圧へ変わりいつしか呪いになってしまった。南はその呪いがあるから最後まで決して諦めることはない、と。
 
 負の連鎖を自分たちの世代で断ち切るために南の執念が再び燃え上がります。さながら枢木スザクの「生きろギアス」。FLOW状態に覚醒した志賀相手にフェイントダイブまで使って誤答を誘発、疲労困憊の泥試合の末1p差で下します。これによりSTEP3はルイージの1位通過と帝山・森崎チームの敗退が確定。
 この結果を受けて、来年へのリベンジに燃える帝山と「南一人が業を背負う必要はない」とさらに結束を深めるルイージの面々。
 この19巻の主役は間違いなく南とルイージ高校でした!またキャラが化けたよ!

決勝進出残り2枠 開城・宮浦・文蔵 因縁の最終決戦

 南が主人公しまくっていた反動で、ほとんどいいところなく終わった感のある越山君。崖っぷちからついに正答して、反撃開始!というところで今巻は終わります。
 次巻で完結らしいのですが、そうなると尺的に決勝はハイライトで、主要キャラの残ったこの準決勝をドラマ的な実質最終決戦とする感じがしています。(本誌は最近読めていないので、コミックス発売まで最終巻のネタバレは遮断中です)

 最終20巻は11月4日発売予定とのこと。10年以上読み続けてきた作品だけに楽しみであり寂しくもあり。また最終巻読んだら感想を書こうと思います。

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