見出し画像

パーソンズタウンのリバイアサン(怪物)

昔々から始まる物語のようなタイトルですが、これはある望遠鏡の二つ名です。

1800年代半ば、アイルランドに一人の天文学者がおりました。

その当時、望遠鏡の制作方法は各国、あるいは各工房で門外不出の技術とされており、誰でもが簡単に手にできる訳ではありませんでした。

彼は、独学で望遠鏡の制作を試行錯誤し、当時では最大の口径72インチのニュートン式反射望遠鏡を制作しました。1917年、ウィルソン山の天文台に口径100インチの望遠鏡ができるまでは数十年にわたって世界最大の望遠鏡でした。

彼の名は、ロス卿として知られていますが、本名はウィリアム・パーソンズ。詳細なM51渦巻銀河のスケッチや、ハッブルが天の川銀河を星の集まりだと考えるきっかけになる星雲研究などを残した人です。

アイルランドは、この時期ジャガイモ飢饉と現在では呼ばれている非常に厳しい時代でしたが、貴族でもあった彼は、人々が飢えない様、まずは分配に力を入れたといいます。そして、その間は望遠鏡の建設は中断したと。

きっかけは、先月のブラックホールの写真撮影に成功した、という話題から調べた話の中に出てきた人でしたが、人の上に立つものとして、一番大事なことをきちんと行った人だと知ってすっかりファンになってしまいました。ちなみに、6月17日がお誕生日だったようです。(ふたご座ですね)

望遠鏡自体は、あまり稼働できなかったようです。天候があまり良くないところとのこと、でもきっとその時代の最新鋭の機器で宇宙を知ろうとした気持ちは、今新しい望遠鏡で世界がさらに開けたように感じるのと同じように新鮮に宇宙を感じられたんじゃないかしらと思います。

画像1
パーソンズタウンのリバイアサン(怪物)/ミツマチヨシコ

ミツマチヨシコ
2002年から活動中の切り絵作家。水彩、漫画、動画なども作る。
作風はノスタルジック。ファンタジーとバンプオブチキンをこよなく愛している。
内なる宇宙をこの世界に持ち出し、未知なる外宇宙に思いをはせる日々。

2022年 6月号より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?