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火星”衛星”探査計画MMX

皆さんこんにちは!JAXAの井上です。
今月は、月は月でも火星の月!火星衛星探査計画MMXについてご紹介しようと思います。

月という言葉には地球の周りを回っているお月様という意味と、惑星の周りを回っている衛星という一般名称の意味があります。ややこしいですよね。英語ではThe Moonという場合には地球の月、moonsという場合には一般的な衛星を指します。
そもそも火星には月が2つあるのはご存知でしたか?私はMMXに携わるまで知りませんでした。大きい方がフォボス、小さい方がダイモスです。

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図1: 火星とその衛星(NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems/Texas A&M Univ.)

MMXは火星衛星からのサンプルリターンミッションです。サンプルリターンと言えば、言わずと知れた「はやぶさ初号機」と、現在も小惑星リュウグウで大活躍中の「はやぶさ2」がありますね。
日本のお家芸となりつつあるサンプルリターンですが、MMXは「はやぶさ2」よりも格段にチャレンジングなミッションです。

まず、地球に持って帰ってくるサンプルの量が違います。
「はやぶさ2」の100倍以上の約10gのサンプルを持って帰ってくる予定です。そのため、サンプルの採取方法が異なります。「はやぶさ2」では弾丸を小惑星に打ち込み、飛び散った破片を吸い込む手法を採用していましたが、それではあまり多くのサンプルを持って帰ることはできません。MMXでは、筒状の装置を直接火星衛星に突き刺して一気に10g程のサンプルを採取することを考えています。ロボットアームを使って筒(これをコアラー機構と呼んでいます)を突き刺すという難しいチャレンジですが、将来の探査ミッションに役立つ技術です。

詳細についてはMMXニュースを読んでみてください。

http://mmx-news.isas.jaxa.jp/?p=226&lang=ja

http://mmx-news.isas.jaxa.jp/?p=382&lang=ja

また、サンプルを採取する際に天体表面に滞在する時間が長いという点も「はやぶさ2」と異なる点です。『あれ?はやぶさ2もリュウグウに着陸したんじゃなかった?』と思った方もいるかもしれません。「はやぶさ2」も着陸しているのですが、その接地時間はわずか数秒です。それに対してMMXでは、たくさんのサンプルを採取するために数時間滞在してサンプルの採取を行う予定です。
そのため「はやぶさ2」では必要のなかった着陸脚が必要になるなど、サンプリング運用も格段に難しくなります。(火星衛星の自転周期は数時間と短いため、夜になる前に離陸して日の当たる場所に退避しなければいけません。)
火星衛星は、イトカワ(約10マイクロG)のような他の小天体と比べると重力が大きい(フォボスで約1/2000G)ため、減速に必要な燃料が多く着陸速度が大きい等、小天体探査の中では量的に厳しい条件で着陸します。一方、小天体表面に探査機をとどめるために重力を利用しますが、地球の月(約1/6G)や火星本体(約1/3G)と比べると重力は小さいため、着陸時の転倒やリバウンドを抑えるために、一般的な月惑星着陸装置を採用することには注意が必要です。

こちらもMMXニュース記事に書いてあるのでご興味ある方はぜひ読んでくださいね!
記事中に動画も貼ってあります。
http://mmx-news.isas.jaxa.jp/?p=333&lang=ja

MMXは現在、プロジェクト化へ向けて検討を加速しています。探査機デザインもアップデートされました。
今後ますます注目されるミッションです!応援よろしくお願いします!!

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図2: MMX探査機Newデザイン(JAXA)



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井上博夏

研究開発員。インドアなディズニー好き。エンゲル係数高めな食いしん坊。大学時代の恩師である小野雅裕先生に影響を受け、2016年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社。宇宙科学研究所の月惑星探査データ解析グループに所属し、月極域探査ミッションや火星衛星探査ミッション(MMX)の検討に従事。

MMX Twitterの中の人
https://twitter.com/mmx_jaxa_jp
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