【宇宙 x デザイン】 SpaceX のデザインに迫る
宇宙デザイナーの山下コウセイです。リーマンサット・プロジェクトという宇宙開発団体でデザインディレクターをしております。
今日は話題のSpaceXについて、普段はあまりないデザインの視点で掘り下げてみたいと思います!
デザインって何?
さてデザインとはなんでしょうか。見た目の話?おしゃれにする手法?
実は“計画を記号に表す”という意味のラテン語”designare”が語源。つまりデザインとは、ある問題を解決するために考え、それを様々な形でものにしていくプロセスのことなんです。
キレイな観光地のポスターを制作 → お客の興味が向上する
駅の案内板を整理 → わかりやすくなる
カッコいい形の車をつくる → 乗る人、見る人のテンションをブチ上げる
例えばこういうこと。しかもこの上にあるデザインの例は、すべてSpaceXが力を入れていることなんです!すごいのは民間初の有人飛行やFalcon9の着陸だけじゃない。そんな視点でお話を進めていきます。
わかる!カッコいい!身近な宇宙開発
SpaceXは何にしても、ひと目見てわかります。
写真一枚からみてとんでもなくカッコいい。それは魅力的に見えるように、ドラマチックな”作品”として写真を撮っているからで、JAXAの記録写真とは大きな差があります。
まるで観光地のポスターのような魅力的な写真。
そしてミッションの目的は何なのか、何が新しくて、どういう過程で進行するのか。わかりやすくてカッコいい図解(UI)できちんと説明をしてくれますね。
見やすい駅の案内図のように。
CREW DRAGONも宇宙服もひと目でああコレは今までとは違うんだということが伝わる見た目をしています。
最新の電気自動車のように。
これらはすべて企業のブランディングとして、魅力的な見栄えになるような意図をもってデザインされているのです。
そして注目が集まれば、人やお金などのリソースも集まりますし、強豪との差別化にもなるし、働いてるスタッフのやりがいや誇りにもなります。
それに加えて「沢山の人に見てエキサイトしてほしいんだ!」というイーロンのエンタメ魂がそうさせている気がします。笑
CREW DRAGONのデザイン解説
大枠のデザインの次は、CREW DRAGONのデザインについて解説してみましょう。
シャトル時代には1000を超えるスイッチと計器があったコックピットは、システムの進化によってスクリーン数枚に集約されました。そのためコックピットの中央にぶら下げることが出来、広々とした空間になっています。
操作画面はシンプルにデザインされたタッチパネルで、誰でもiPadのように操作出来そう!エリートの宇宙飛行士が乗るとしても、操作が簡単であるに越したことはありません。
シートはパイロットごとにカスタム可能なカーボンシェル。まるでスーパーカーのシートのようです。こちらも広々とした空間になるよう、シンプルなフレームで固定されています。配置変更などの拡張性もありそうですね。
そしてそれらの革新的な構造を、ひと目見て分かるような白と黒基調のクリーンなインテリアでまとめ上げています。
狭くて長時間飛行する宇宙機において、空間を広く取るデザインはは快適性の向上につながり、リスク低減にもなります。
乗り込むパイロットの気分も上がるでしょうし、将来一般のお客さんを乗せる際にはこうした機構とデザインは活きるでしょう。
まさしく形態は機能に従うという、デザインの根源に沿った素晴らしい機体です。
SpaceX宇宙服のデザイン解説
CREW DRAGONのインテリアによく似合う、シンプルな宇宙服というのが第一の印象。機体とパイロットに統一感 が生まれていて、強い結びつきを感じることが出来ます。
タッチパネル操作に特化した宇宙用グローブだったり、機体とパイロットが簡単に接続できる機構が、スーツと座席についているなど様々な工夫が凝らしてあります。
このムダのない宇宙服のデザインはなんとホセ・フェルナンデスという、MARVELやバットマンなどスーパーヒーロのコスチュームデザインのレジェンドが手掛けております。マスクからのオーダーは「タキシード」だったそう で、未来感、宇宙感を持ちつつもエレガントな絶妙デザインですね。
僕個人の思いとしては、今の世の中ヒーローと呼べる存在は本当に稀ですが、宇宙飛行士だけは誰にとってもヒーローといえる数少ない存在だと思っています。そのスーツのデザインをハリウッドのレジェンドに託すという所に イーロンの宇宙愛とエンタメ魂を感じざるを得ません。笑
今日は話題のSpaceXをデザイン視点で解説をさせていただきましたが、この記事を通じて「すべてのデザインには 機能と理由がある」ことがお分かりいただけたでしょうか。
次回はこれから宇宙開発とデザインはもっと密接な要素になっていくという持論を軸に、もうすこし未来の話をして みたいと思います。
Photo by NASA and SpaceX
山下コウセイ
民間宇宙開発団体リーマンサットプロジェクト デザインディレクター
国立天文台の隣で生まれ育ち、親しみと憧れから宇宙を目指す、自称宇宙デザイナー。宇宙ベンチャーのブランディングから人工衛星や宇宙機のプロダクトデザインまでこなすデザインなんでも屋。でも本当は世界一周を夢見るバイクデザイナー。
Twitter: @KOSEXP
https://www.rymansat.com/
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