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【宇宙 x デザイン】 宇宙開発の未来にデザインが必要な理由

宇宙デザイナーの山下コウセイです。
リーマンサット・プロジェクトという宇宙開発団体でデザインディレクターをしております。

さてデザインと聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
ファッション?建築?何れにせよ宇宙開発にはあまり登場しないワードですよね。

今回は前号に引き続き”デザインと宇宙”という話をさせて頂きますが、今回はもう少し未来のお話になります。

SpacceXのわかりやすい宇宙開発

前回のおさらいをしましょう。SpaceXが行っているデザインの施策について書かせていただきましたがポイントは3つ

・誰がみてもわかりやすく、興味を引く情報発信
・機能のアップデートに即した、美しい機体デザイン
・ヒーロとして演出された宇宙飛行士と宇宙服

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革新的かつ機能的なデザインが施されたSpaceXの宇宙船デザイン 引用:SpaceX

事業や技術が革新的であることに加えて、新しい切り口で誰にでも魅力が伝わる、まるでエンターテイメントのような宇宙開発をしているという話でした。

こうしたアプローチは今後の宇宙開発には欠かせない要素になると私は考えています。

憧れこそが未来を作る

現在国内で宇宙開発に関わっている人は非常に少なく、民間できちんと資金調達ができている新規プレイヤーはたった13社です。もちろんこの数字は現実的なビジネス規模が今日の時点でそれくらいというのもありますが、門戸を叩く人が少ないというのも事実としてあるでしょう。

SpaceXのように”ひと目見て分かるカッコよさ”があれば、人々に魅力が伝わりやすくなりより多くの”あこがれ”を生み出すことができるでしょう。また残念ながら今日の宇宙開発にはそれが足りていないと感じています。

ロケットも人工衛星も、進歩していくなかで極限まで洗練されてシンプルになりました。それはある意味究極の形、僕らのようなマニア目線では美しさを多分に見いだせます。でも今日活躍しているそれらと、昔のスペースシャトルやボイジャー、子供がひと目見てどちらがカッコいいと思うでしょうか。

そこにはかつて「わかりやすい」カッコいい外観があり、子供達の目にはヒーローとして映ったことでしょう。ああ宇宙に飛んでいく飛行機なんだ!と。

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退役したスペースシャトルと最近まで開発の行われていたアレスVの比較 引用:NASA

小野さんの著書に登場した、宇宙を目指す人達の心に感染する”何か”
本当に共感した一節ですが、この”何か”に感染するきっかけのひとつは、こうしたカッコいい見た目から来る”あこがれ”もあるのではないでしょうか。

”何か”に感染する人が増え、リソースが集まるようになれば、開発は加速し産業は大きくなります。現に日本最大のロケットベンチャーであるインターステラテクノロジスの母体が開発に着手したのは2005年、一方Space Xが創業したのは2002年とたった3年差です。少々乱暴な比較ですが・・・。

日本ならではをデザインする

この記事を読んでいる皆様は宇宙に関する好奇心や知識が豊富でしょうから、日本の宇宙開発が諸外国より遅れていることはご存知だと思います。

先ほどの項目ではSpaceXのようなわかりやすいビジュアルやカッコいいデザインが作り出す良い連鎖について書きましたが、次のステージではUXデザイン(User Experience 顧客体験)が差別化の為の強力な手段になります。

国内でもPD AerospaceやSpace Walkerなど、サブオービタルによる宇宙旅行を目指すベンチャーが増えてきました。こうした一般のお客さん向けのビジネスにおいて、今の時代最も大切なのはUXと言われています。

宇宙旅行に行けるようになったら、お客さんに選んでもらうための特別な価値が必要です。競合企業は世界中にあるでしょう。価格競争もあるでしょう。

そうなれば必須なのは日本ならではのサービス、おもてなし。チケットを買うところから、搭乗するその瞬間まで、どんな体験と旅を届けられるかが大切です。

現にUXが大切とされるSNSにおいては、AirbnbやInstagramなどデザイナーが共同設立者となることで、強力なコンセプトとビジョンを描けたサービスが、ユニコーン企業に成長しました。

需要が少ないことからロケットや宇宙機器の産業規模が限られている日本は、上記のようなソフトウェア面で勝負するのは唯一の勝機とも言えるかもしれません。

夢を実現するなら夢らしく

最後は私の個人的な思いになります。

誰でも宇宙旅行に行けるような、過去描かれた”夢のような未来”が実現できる時代になりました。そうしたワクワクする未来は、巨匠シド・ミードをはじめとするデザイナー達がSF映画などのなかで思い描いて具象化してきました。

そうした未来が現実になっていくのであれば、できるだけそのワクワクする姿をそのまま実現してあげることが、この時代に生きるデザイナーの役割だと思っています。

誰だって自分の乗る宇宙行きの旅客機は、最高にカッコいい方がいいですよね!

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2001年宇宙の旅の象徴的なシーンとSpaceXのCrew Dragon搭乗シーンの比較。
引用; ENGL 3180 THE TIMELESS AESTHETIC OF KUBRICK’S 2001: A SPACE ODYSSEY / SpaceX

ロジカルな視点とエモーショナルな視点、両方から宇宙開発を盛り上げていくことで、素敵な未来を構築していく、その役割の中にデザインという視点は間違いなく介在してくると思います。

前回と今回、最後までお読みいただきありがとうございます。
皆様はこの記事を読んで何を思い、考えたでしょうか。
ぜひ未来の宇宙開発について、語り合いましょう!


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宇宙デザイナー 山下コウセイ

民間宇宙開発団体リーマンサットプロジェクト デザインディレクター

国立天文台の隣で生まれ育ち、親しみと憧れから宇宙を目指す、自称宇宙デザイナー。宇宙ベンチャーのブランディングから人工衛星や宇宙機のプロダクトデザインまでこなすデザインなんでも屋。でも本当は世界一周を夢見るバイクデザイナー。

Twitter: @KOSEXP
https://www.rymansat.com/


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