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くらいなか

最近、夜仕事が終わって何もすることがなかったら密かにランニングをすることにハマっている。

とはいえ、暇な日なんてほとんどないので久しぶりに走った。いつも岩首から柿野浦まで走るのが定番になっていた。今日も同じように自宅から飛び出て柿野浦を目指す。

岩首を出てすぐ、違和感に気づく、、、。全く見えないのだ。

かすかに道路の脇の濃淡がみえるだけで、全く見えない。おかしい、なんでこんなに見えないんだ、、、。


そうか、月の光が全くないのか。

つい、数日前に新月だった。今もまだ月は細く夜の道を照らすまではいかなかった。

佐渡の海沿いは街頭なんてほとんどない。

かすかに見える濃淡が想像を引き立てる。最初はまるで目の前に壁があるようだった。

思わず、足がすくむ。


真っ黒な大きなものがふりかかってくる。

足元がなくなる。

大きな生き物が襲ってくる。

見えない何かにおしつぶされる。


だんだん、恐怖が気持ちの大半を占めていく。

心が挫けそうになる。呼吸が乱れ、足を止めたくなる。


そんな気持ちに支配されそうになった。

ふとっ海をみる。

新潟の街の光だ。ホッとする。

いつも、見えるあの光が今日見えてよかった。


冷静になると、何もいなかった。

黒くておおきなものはカーブミラーで、足元がなくなるのは黒いアスファルト。

大きな動物は佐渡にはいない。

見えないなにかは自分の妄想だった。

人は想像で殺される。

マイナスの考え方は一瞬で気持ちを支配して、心を砕く。


いつの間にか柿野裏だった。集落の奥からかすかに太鼓の音が聞こえる。


帰りは平気だった。

夜目が効いてきたのか、僕が長男だったからか。

いつも応援していただきありがとうございます。 多分、山にいくか不思議なものを食べる力になります。