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紅葉を見ようということになり、「いい寺があるらしい」と言い出したのは年上の仲間で、幾人かで連れ立って出かけた。初めて降りる駅前の、ロータリーから出るバスに30分も揺られれば、そこには確かに素晴らしい赤が広がっていた。 皆大喜びでカメラを構え、群生したもみじを撮った。光の良い時間というのは短い、のだという。全体が深い森なので、そのあいまのもみじに美しく光が当たる場所を探し移動していく。 私はそれにすぐ飽きて、ひとりうろうろとしているうち、寺の裏に出た。 「奥に水車小屋があ
別れた恋人にもらったカメラが手元にある。 私たちは正直あまり会話が弾まないカップルだった。なりゆきで付き合ったというか、単にお互いにとって恋愛ごとのリハビリじみた試行でしかなかったと言ってもいい。そこでおそらく何か共通の趣味のひとつでもあれば変わるのではと考えて取り出されてきたのがそれだったのではないかと思う。 その人の家の近くの公園をぶらぶらしていたときに「使ってみませんか」とカメラを渡されたのが秋だった。 だから最初はもみじの写真から始まった。 色のある写真も撮った