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優良運転者

辻村さんが仕事で、ある地域へ転勤になった頃の出来事だ。
以前は通勤でよく電車を利用していた。しかし、転勤先は交通の便も悪く、車通勤だ。
辻村さんは優良運転者として自信を持っている。
特に苦も無く、車を運転して勤務先へ向かっていた。
そんなある日、思わぬトラブルが起きた。車でいつもの道を通っていた時。
目の前に何かが飛び込んできたのだ。車体に強くぶつかり、鈍い音がする。
それはカラスだ。勢いよくぶつかったからか、カラスはピクリともせず息絶えている。
「可哀想なことをした」辻村さんに罪の意識が芽生える。
亡骸は適当な場所を見つけ、土の中に埋めたそうだ。それからしばらくして。
同じ道を車で運転していると、目の前にまた何かが現れた。
聞き覚えのある鈍い音。瞬間的に「やってしまった」という考えが頭に浮かぶ。
急いで車から降りると、目の前に野犬が倒れ込み、息絶えていた。
(偶然だ)罪の意識を上書きするよう、自分に言い聞かせる。
それからより一層、運転に気をつけるよう心に決めた。常に気を集中し、運転を行う。
けれど彼の気持ちとは裏腹に、またも同じ道で災難は起こる。
今度は猪で車体も大きく傷ついた。そんな辻村さんは現在、妻の運転で通勤している。
「自分があの道を通り続けたら、次は人を轢く気がします」そんな考えを吐露した。
けれど先日、妻も同じ道でカラスを引いてしまったそうだ。
彼は自転車通勤にするか、真剣に考えている。

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