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学振落ちたけどおじさんだよ

「学振」という言葉を聞いたことはありますか?
研究者の人だと耳にしたことがあるかと思いますが、そうじゃない人からすると、何のことかと思いますよね。

最近に学振の合否発表があり、SNS上でも話題になっているので、今回の記事では取り上げようと思います。


学振とは?

「学振」とは、日本学術振興会の略称なのですが、その団体の特別研究員制度のことを指す場合があります。

特別研究員制度は、大学院生が出願し、特別研究員に採用された際に、「学振に受かった」と言うことが多いです。

特別研究員制度には、DC1、DC2、PD、RPD、CPDの5区分があります。詳しくは、こちらのサイトが参考になりますので、興味のある方は見てください。

この記事では、DC1、DC2に絞って話をします。DC1、DC2に採択されると、2年間もしくは3年間、研究奨励金や研究費をもらうことができます。研究奨励金とは、特別研究員に月々一定の額が支給される奨励金です。DC1、DC2には月に20万円を支給されます。使い道は自由であり、報告の義務はありませんので、生活費の足しにできます。一方で、科研費(特別研究員奨励費)は、研究に必要な費用を申請し、年単位で最大150万円をもらうことができます。科研費の用途は研究のみです。

ただし、研究奨励金については、いろいろな不満の声がありそうです。
(採択されたことないから、知らんけど)

特別研究員のメリット

メリットは3つです。

1.研究に集中できること
2.研究費を確保できること
3.特別研究員に採用されること自体が1つの業績となること

アカリク:学振の特別研究員制度とは?区分や申請スケジュールについて解説

1点目と2点目については、先ほど説明した研究奨励金や科研費がもらえることで、経済的な余裕ができるというメリットです。生活費を稼ぐ必要性が減るため、研究に時間ができ、生活にゆとりができます。経済的な不安が軽減し、生活費のために働く時間を削ることができるため、精神面においても時間的な面においても研究に集中することができます。

3点目については、特別研究員に採用されるのは申請者の約2割程度であるため、その上位2割に入ることができるほどの非常に優秀な研究者であるという証明になります。

私の先輩や同期は、特別研究員に採用されている人が多く、優秀な人が多かったです。みなさん、その後のキャリアは大学の先生になった人が多い印象で、そのために、大学院のうちに業績を着々と積み重ねていました。

院生時代は学振に落ちたことしかない

自分は、DC1にもDC2にも採択されたことはないです。
申請しましたが、全敗でした。
学振に落ちた時は、周りの人からいろいろな言葉をいただきました。

  • 次は取れるよ。

  • このままでは大学に就職できないよ。

  • ドンマイ(笑)

  • 気にせず、研究しよう。

  • 論文が採択されることを優先しよう。

  • 惜しかったね。

  • 生活はどうするの?

  • 博士課程に進学するの?

でも、自分には、何一つ響かなかったです。
相手が、学振に採択された人や、大学に就職して教員をしている先生だからだと思います。
同じ目線で言ってくれているように感じることができませんでした。
学振に落ちた人への言葉がけは何をいっても暴言になると思います。

自分は、経済的に余裕がなく、奨学金(借金)を借りながら、大学院に通っていたので、研究奨励金があればいいなと思っていました。
採択されることで、研究も前進すると思いましたし、経済的にも余裕ができるので、採択されてほしかったんです。

学振に落ちた後の生活は悲惨

自分は、学振に落ちた結果、色々と大変な思いをしました。
苦労話をするつもりはないですが、同じような境遇にならないようにするための何かしらのヒントを得てもらえればと思い、ここに記します。

論文が通らなかった

自分の研究成果は、論文として中々、認められなかったです。
指導教員との相談の上、国内の学術誌に投稿していましたが、ほとんど不採択でした。

https://x.com/daihiko/status/1707586799395307939?s=20

論文が不採択続きで業績が積み上がらず、その結果、学振にまた落ちるという負のスパイラルになりました。
論文が通ったのは、結局、博士課程の2年生の頃でした。
ちなみに、学振に採択された人は、修士課程のうちに、論文が通っていることが多い印象でした。

自分は、この状況を見て、マタイ効果だと常々思っていました。

マタイ効果とは、条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれるという現象のことであり、それは科学界以外の様々な分野でも見ることができる。

Wikipedia:マタイ効果

ちなみに、マタイ効果は、研究業界に限った話ではないです。金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏にといった表現がありますが、これはマタイ効果を端的に言い表した表現です。

奨学金の返済額が1000万を超えた

日本の奨学金は、借金です。
最近だと、大学生も大学院生もほとんどの人が奨学金を借りていると思います。
自分は、大学から奨学金を借りており、大学院の博士課程までで、計1,300万円ほどの額を借りることになりました。
大学院修了後には返済地獄が始まることを気にしつつ、研究を行っていました。

精神的に辛かった

今は、アカデミアから離れましたので、健康的な生活を送っていますが、当時は、とても不健康な生活を送っていた気がします。

大学院生時代は、不安しかなかったです。
周りに優秀な人が多く、その中で競争するような環境だったことが、自分にとっては向いていなかったし、精神的に辛かったです。

24時間、研究のことだけを考えていましたが、論文や学振に採択されず、成果が全くない状況で、大学院を修了できるかどうかが心配でした。
その心配を理解してくれる人もいませんでしたので、自分でなんとかするしかない状況でした。

最悪死んでもいいかと思って研究していた

正直なところ、この一言に尽きます。
今は、何とか生きています。
研究者キャリアとしては、大学(アカデミア)を離れ、企業に就職しました。

学振落ちた人や同じ境遇の人がいれば、話し相手ぐらいにはなれるかもしれません。
良かったら連絡ください。


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