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Digital HRについて割とガチで考えてみた。

2018年4月12日-13日と2日間にわたって行われたPeople Analytics World 2018。このカンファレンスでは世界中のPeople Analyticsの事例がkeynoteを通して紹介されていました。

そんな中で、頻繁によく耳にした単語が「Digital HR Transformation」という単語。日本のHR系のカンファレンスでもたまに耳にするものの、エンゲージメントや働き方改革という語に比べると語られる機会が少ないと思います。

しかし、People Analytics Worldでは「Digital HR」一色。Keynoteのスピーカー達は、口をひらけば「Digital HR」。

Digital HRとは

では、そもそもDigital HRとはなんでしょうか?google先生に聞いて見ると、デロイトトーマツのHPがまず表示されました。

近年のデジタル化の大波を含む急激な環境変化により、会社・従業員の パフォーマンス最大化のためにHRの果たすべき役割が、 「制度/プロセスの構築」から「エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値:EX)の設計」へとシフトしつつあります。

私たちデロイト トーマツ コンサルティングでは、SMAC技術を活用したソリューションを元に、創造力溢れる職場やエンゲージメントを高める育成・評価制度などの実現を通して、 エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値)の改善に向けた変革をご支援します。

「SMAC技術」とは。Digital HRにおけるテクノロジーの特徴をまとめた言葉で、Social, Mobile, Analytics, Cloudの頭文字をとったものです。

Social
slackやP2Pのピアボーナス、また360度フィードバックなど、組織内でのコラボレーションを促進するツールなどがSocialにあたるでしょうか?また、タレントマネジメントシステムで、他の社員の紹介文などを見ることもSocailです。つまり、組織をよりConnectするテクノロジーと言えます。

Mobile
Mobile Firstの時代にHRのシステムは少し取り残されてきたかもしれません。しかし、Digital HRの世界ではMobile Firstです。社員からすると、いつでもどこからでも、コミュニケーションがとれ、同僚にフィードバックができ、さらにアンケートに答え、自分の給与履歴や勤怠履歴が確認できる。MobileでHRへのアクセスが身近になります。

Analytics
様々なデータをもつHR。データドリブンに意思決定し、組織を改善するためにはAnalyticsが欠かせません。

Cloud
いつでもどこでもリアルタイムのデータを確認したり、解析のために様々なデータを1つにつなげるにはCloud技術が必要になります。

このように、Digital HRが、SMACのようなテクノロジーの変化のもとで行われるということは分かりました。ではなぜ今のタイミングで声高に叫ばれているのでしょうか?その答えは「第4次産業革命」です。

第4次産業革命とは

内閣府によると第4次産業革命とは下記の通りです。

第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す。

一つ目はIoT及びビッグデータである。...様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。

二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。...

こうした第4次産業革命の...超スマート社会では、企業は様々な情報をデータ化して管理することで...データの解析を利用した新たなサービスの提供、AIを活用した事務の効率化や新たなサービス提供などが実現できる。

つまり第4次産業革命の世界では、人力またはAIでビッグデータを解析することで、今までにない付加価値の創造が可能になるのです。こうした波がHRにも押し寄せ、Digital HR Transformationを進めているのです。

第4次産業革命の文脈でDigital HRのSMACを捉えてみると、SocialやMobileで膨大に増えたデータをCloudに保存し、それらのデータを解析することで、HRは、今までにない"新しい価値"が提供できるということがわかります。

では、Digital HRにおいて、HRは新しいテクノロジーを用いて、どのような価値を提供すれば良いのでしょうか?『HRテクノロジー入門』の著者である岩本先生はこのように「Digital HR」を説明しています。

テクノロジーを使いこなし、自社のビジネスに貢献できる、経営において欠かせない部署や個人になることを目指すべきです。私は、こうした人事のことを「デジタルHR」と呼んでいます。

Digital HR時代におけるHRは、今までの「オペレーション」的な人事ではありません。テクノロジーを用いた様々なデータ解析から、企業経営において、「自社のビジネスに貢献」できる「戦略」的な人事であることが求められているのです。

Digital HRにおける人事の役割とは、テクノロジーを用いて経営課題を解消し、ビジネスを成長させる戦略的パートナーであると言えるのではないでしょうか。

Digital HRでビジネスを加速させるためのフレームワーク

People Analytics World 2018にて、「Digital HR時代の人事戦略」に関するフレームワークが紹介されていました。

一番右端のLevel1に「Business Outcome」をおきます。例えば「売上拡大」「利益の拡大」がこれにあたります。その隣のLevel2に、Business outcomeにつながる「Key Performance Drivers」をおきます。生産性や、イノベーション、顧客満足度がこれにあたります。Level3は、「Workforce Capability (= 組織力)」です。エンゲージメントやパフォーマンス、最適配置を含めたタレントマネジメントなど。そして最後のLevel4が「People Process」です。採用プロセスや、育成プロセス、評価やマネジメントのプロセスがそれにあたります。

「人事戦略」とは、上記の画像でいうと右から左、つまりLevel1の「Business Outcome」から逆算して、Level4の「People Process」を改善することなのです。

既存社員で「売上」を10%向上させ「利益率」を改善するため(Business Outcome)に、社員一人当たりの「売上貢献度 (= 生産性)」を10%向上させる (Key Performance Drivers)。そのために、低い評価となっている社員を、スキルやモチベーションに合わせ「最適配置」する (Workforce Capbility)ことを目標とし、配置案を検討する(People Process)。といった具合でしょうか。

このフレームワークの特徴は、「Business Outcome」を達成するためにHRが着手すべきポイントは「People Process」であるという点です。どうしても流行りの「Employee Engagement」のような言葉に惑わされる部分はありますが、サーベイをするだけでは意味がなく、いかにLevel4のPeople Processの改善にまで落とし込めるかが重要であるということですね。

Digital HRの中心はEmployee Experience 

Digital HR時代にける人事の役割とは、「Business Outcome」を拡大するために、テクノロジーを用いて「People Process」を改善することです。しかし、ここで注意したいのが、「People Processの改善」であるということです。「人事オペーションの改善」ではありません。(もちろん人事オペレレーションの改善も大事ですが、それがDigital HR時代の本質ではないということ。)

HR界隈の神様、Josh BersinさんはDigital HR時代における鍵は、「A Massive shift from “automation” to “productivity.”」であると言います。

For many years the focus on HR technology was to automate and integrate HR practices. This meant online payroll, record-keeping, ...  interview and hiring, assessment, performance appraisals, compensation, management...etc. (何年もの間、HRテックとは自動化にフォーカスがおかれてきました。例えば、給与管理、勤怠管理、採用管理といったものです。)

Well all that’s important, but it’s just “business as usual” now....But beyond automation, as the HIHR article discusses, the big topic in business today is productivity. (それらは全て重要なものです。しかし、それらは"普段のオペレーション"でしかないのです。今日のビジネス環境に置いて大切なのは、社員一人ひとりの生産性です。)

Can we build HR software that really improves productivity and helps teams work better together? That’s the next challenge. (HRテックのこれからのチャレンジとは、いかに社員一人ひとりの生産性を高めることができるかであるのです。)

HRプロセスの効率化系のシステムはもちろん大事であるものの、Digital HR時代におけるチャレンジは、いかに社員の生産性をあげるかであり、いかに社員にとって働きやすい環境を作るか、です。わかってはいるものの、効率化系のHRtechツールの導入で止まってしまっているケースも多いのではないでしょうか?

テクノロジーを用いて「People Process」を改善し、社員の生産性を高め、働きやすい環境を作ることで、Employee Experienceを追求していくことが、人事オペレーションプロセスの効率化以上に大切になってくるわけです。

これらを合わせて考えると、Digital HRとは

SMACに代表されるテクノロジーを用いて、経営課題を解決するために、データドリブンな人事戦略をとり、Employee Experienceを圧倒的に改善すること

なのではないでしょうか?

Digital HR時代においてPeople Analyticsはマストハブ(Must Have)!

テクノロジーを用いてデータドリブンにEmployee Experienceを改善し、経営に貢献するためにはPeople Analyticsはマストハブであると言えます。Josh Bersinさんによると、

The next big phase we’re about to see is the true industrialization of people analytics. Companies are now taking this domain seriously and putting in place data quality programs, analytics fluency learning, dashboards, and data-driven decision-making processes. In other words, people analytics is now a must-have discipline within HR and business. (次の大きな人事トレンドとは、People Analyticsなのです。今日、各企業はPeople Analyticsに真剣に取り組んでいます。言い換えると、HRや経営層にとって、People AnalyticsはNice-to-Haveではなく、Must-Haveな戦略なのです。)
Companies that don’t make this investment(in people analytics) are likely to be disrupted by competitors that do—and those companies might be able to recruit their competitors’ people, reorganize their sales forces, and improve their engagement and culture in ways you have never even imagined. (People Analyticsに投資しない企業は、People Analyticsを行う企業にディスラプトされるでしょう。なぜなら、People Analyticsを行うことで、採用で競合に負けることも少なくなり、最適配置を行い、そして企業文化や社員エンゲージメントを高め、組織力を強固なものにできるのです。)

People Analyticsから、データドリブンに人事戦略をうち、経営課題を解決していくことが、これからの企業の成長の源になるのではないか、と言えるのではないでしょうか。
People Analyticsの効果的な進め方に関して、People Analytics Worldで語られていた内容はこちらにまとめてますので参考にしてもらえれば幸いです!


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