見出し画像

【PAWレポート】People Analyticsを成功させるのはVisionだ!!

2018年4月12日-13日と2日間に渡って行われているPeople Analytics World 2018の"学び"レポートです。People Analyticsの効率化を実現する
クラウドサービス「Visier」のTyler Hawsさんの講演をご紹介。

People Analyticsというと、データや統計解析、機械学習に目が行きがちです。ですがPeople Analyiticsの成功に最も大切なのは、「HRがVisionをもつことだ」という、力強いお話でした。

HRに求められる役割とは?

HR isn't about HR, HR is about the business.

HR界隈では、今までの「オペレーション中心のHR」から「経営戦略を担うHR」へと、変革が今まさにおこっています。多くの企業がCHROというポジションをおき、HRを戦略パートナーとして捉えるようになってきています。つまりHRは、単純な人事オペレーションの担当などではなく、経営層にとってのビジネスパートナーそのものであると。だからこそ、データに基づき最適な経営意思決定が行えるように、People AnalyticsによるデータドリブンなHRが求められているのです。

成功するPeople Analyticsに必要な4つのこと

People Analyticsは強力なツールです。HRにとっての「Hero」であるとも言われています。しかし、実際に利用するのは非常に難しいことも事実です。だからこそ、People Analyticsに取り組むHRは、4つのメソッドを意識してほしいとTylerさんは主張しています。

①:経営目標の達成にフォーカスすること

経営パートナーとしてのHRに求められることは、売上の拡大、コストの削減、顧客満足度の向上という、シンプルな経営目標です。People Analyticsも、このどれかに紐づかなければ、経営層からの信頼を得ることはできません。つまり、HRに必要なことは、経営層と同じ言語で語ることなのです。

例えば、「Employee Engagementを高めるためにピアボーナスを導入しましょう。」のようなザックリとした提案ではなく、「エンゲージメントの高い社員は、OKRの達成率が23%高いことがわかりました。また、成長実感の高い社員ほどエンゲージメントスコアが高いことがわかっています。従って、OKR達成率の低いA部門とB部門はマネージャーによる面談の機会を儲け、定期的にキャリアアップや自己成長について振り返る機会を作りエンゲージメントスコアを改善することで、OKR達成率を改善しましょう。」など、自社固有の数字やデータに基づいた提案を行い、HRの抱える問題ではなく、経営層の抱える問題への解決策を示すことが必要になります。

Tylerさんのプレゼンからは少し離れますが、「経営目標の達成にフォーカス」してPeople Analyticsを実施した成功事例が別のセッションで語られていたのでご紹介します。それはP&Gの事例です。

P&Gでは、生産性向上による$10Bのコストカットを株主総会で発表していました。そのコストカットのうちの$2Bがワークフォースプランの最適化に割り振られました。

そこでPeople Analyticsチームは、給料やボーナス、家賃手当などといった人件費にまつわるデータを、部門別、地域別など、様々な角度で解析しました。そこで見えてきたのが、グローバル拠点へ本社から送る駐在員と、現地採用社員の間での人件費の差という問題でした。

駐在員にかかっている総コスト(給料やボーナスに加え、税金、駐在手当、家賃補助、保険、子供の教育などを含む)と、現地採用の社員にかかるコストの試算を行い、検証したのです。

しかし、ただ単純に駐在社員を減らせばいいというものではありません。なぜなら、駐在社員がもたらす特有の価値もあるからです。

そこで、駐在社員のパフォーマンス評価とコストの関係性に注目し、地域別やブランド別、部門別に解析を行いました。駐在社員を減らし、現地社員を採用しても問題のないところはどこなのかを検証します。

その結果、繊維事業(Fabric)は、多くの駐在員を派遣しているため、総コストは第4位を占めるものの、ポテンシャル・パフォーンス評価の高い社員が比較的少ないことがわかりました。

これらの解析をもとに、駐在社員の配置換えを実施。結果として、繊維事業部門の駐在員数を削減し、大きなコストカットに成功したのです。

このP&Gの事例は、経営課題 (コスト削減) を解決するためにPeople Analyticsを実施し、成功を収めた優れた事例です。


②:ビジョンを持つ

People Analyticsは強力なツールであり、時間のかかるプロセスだからこそ、People Analyticsを用いて何を行うかについて「ビジョン」をもつことが必要です。

People Analyticsを用いることで、売上の向上を実現できるかもしれません。そのために、例えば、採用前と採用後のデータから、トップパフォーマーの特徴を見つけ出し、それらの特徴を把握するための面接プロセスを確立することで、トップパフォーマーの採用効率をあげるというプロジェクトを行ってもいいでしょう。

また、離職予測モデルを確立し、人員配置計画に反映することで、「予測に基づき採用や教育を進め、経営目標を達成し続けるワークフォースプランニングを実現する」というプロジェクトも考えられます。

このように大きなビジョンをもつことで、先進的なプロジェクトへの落とし込みが可能になります。つまり、大きなビジョンがPeople Analytics Journeyの指針になり、データの海に溺れずにPeople Analyticsを成功に導いてくれるのです。

People Analyticsチームのビジョンを言語化しているのが、ネスレです。

Enabling Nestlé to make better decisions using people data and analytics in the pursuit positive business and people outcomes.

先ほどのP&Gも素敵なVisionを掲げています。

Facilitate and enable value adding data-based people decisions.


③立ち位置を理解し一歩一歩進める

People AnalyticsはStep by Stepで進める必要があります。

まずはレポートとダッシュボードを作成し、組織の状態が常に分かるようにすること、そしてデータドリブンなHRカルチャーを作ることからはじめ、一つずつレベルを上げて行くことが大切です。(いきなり機械学習を用いたPredictive Analyticsを実現しようとしても、データが整理されていなかったり、データドリブンなカルチャーができていないと挫折に終わる可能性が高いからです。)

この辺は、スワロフスキーのPeople Analyticsの進め方が参考になります。

実際にネスレのPeople Analyticsも、徐々にStep Upしてきたそうです。

2013年のスタート時点では、基本的なデータを統合し、シンプルなグラフで経営層にレポーティングするところから始まっています。そこから各セグメント別に解析をできるようにし、Dashbordを整理し、いつでもアクセスできる状態を構築。誰でもが簡単にアクセスでき、自由にデータ解析できるプラットフォームを準備(Self-Service)しています。このようにデータドリブンなカルチャーを作りながら、一歩一歩着実に、People Analyticsを発展させていることがわかります。


④リーンで始める

People Analyticsの成功のためには小さく始めることが大切です。People Analyticsに踏み切れない企業の声を聞くと、「データが揃っていない」「データに欠損がある」「統計学の専門家がチームにいない」などといった声がよく上がるそうです。ですが、大切なことは、「ヘッドカウントをリアルタイムで確認できるようにする」、「各部署ごとのコストをマネージャーが確認できるようにする」といったように、少しずつはじめ、小さい成功体験を積み重ねていくことなのです。

隣に野生のリスがいるのに、遠くのシャッターチャンスを狙うばかり、目の前のチャンスを逃してしまわないように(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?