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【PAWレポート】スワロフスキー流People Analyticsの始め方

2018年4月12日-13日にロンドンで開催されているPeople Analytics World 2018。ヨーロッパの先進的な人事が集まる中、People Analyticsにフォーカスして多くのトークセッションが行われています。
中でも、People Analyticsに0から取り組む事例として、スワロフスキーの取り組みが印象的だったのでご紹介します。

スワロフスキー流のPeople Analytics

170カ国に2800店舗を展開する、グローバル企業のスワロフスキー。
従業員数も27,000人と超大手企業ですね(もっと多いのかと思ってましたが...)。

スワロフスキーにとってHRチームは、「スワロフスキーの企業ミッションや経営戦略・株主へのコミットメントの実現を、"人材"という側面から支えるプロフェッショナル集団である」と定義しているそうです。

経営戦略を支えるパートナーであるからこそ、データドリブンな意思決定をするためにPeople Analyticsに本格的に取り組んでいるようです。2015年頃から本格的に取り組みを始めました。

Step1:ミッション・ビジョンの設定

まずはじめに行ったことは、People Analytics チームのビジョン・ミッションの設定。

Visionがこちら

All People decisions at Swarovski are informed by data and analysis.

Missionがこちら

Foster a data culture in the HR function and support Business and People Strategy with better and objective workforce data-informed decisions and insights.

このビジョン・ミッションで、いかにスワロフスキーがPeople AnalyticsをHRの根幹に置いているかが伝わってきます!

Step2: ロードマップの制定

People Analyticsは非常に時間のかかるものです。"People Analytics Journey"と言われているように、何年もかけて構築していく必要があります。

そこでスワロスキーでは、People Analyticsを戦略的に実行すべく、いくつかのフェーズに分けてロードマップを作成したそうです。

よく見るピラミッド型のフェーズ分けですね。

フェーズ1:HR Reporting
フェーズ2:HR Advanced Reporting 
フェーズ3:People Optimization
フェーズ4:Business Optimization

フェーズ1とフェーズ2は、"Descriptive Analysis"と言われる領域で、組織の"過去"や"今"を解析しています。具体的には、会社全体や各事業所・事業部ごとの社員数や男女比などのHeadcount、またそれに付随する離職率や、人件費の推移などをリアルタイムで把握するシンプルなレポートがメインです。

Advanced Analysisになれば、人事データを部署別、性別、採用年次別など様々な角度から解析し、より細部まで組織の"今"をレポートにして、常にアクセスできる状態にしています。

フェーズ3からフェーズ4がPredictive Analysisと呼ばれる領域で、データから、組織の"未来"について解析を行います。離職予測や、離職予測を基にした人事意思決定がこのフェーズですね。

ちなみに、このフェーズ分けはPeople Analytics Maturityとしてよく知られているモデル。HRtechのBrainとしても有名な、デロイトのJosh Bersinはこのように定義しています。

ここで興味深いのは、People Analyticsにとって一番最初の"Operational Reporting"が実は非常にチャレンジングであるということです。
いわゆる"データ分散問題"ですね。採用管理システム、給与管理システム、勤怠システム、タレントマネジメントシステム、評価管理システム、様々な人事システムに人事データが点在しているため、リアルタイムに見える化されたレポートはなかなか作れないのです...

Several years ago we developed our talent analytics maturity model. While the data is slightly old (we are updating it this year), I’d venture to say that 2/3 of companies are still at levels 1 and 2.

Our research shows that most big companies still have 5-7 “systems of record” for various types of people and talent information. So reporting and data integration remain a challenge (and this will always be true).

また、Step2の"Advanced Reporting"で鍵となってくるのは、Self-Service型のDashboardです。経営層や各現場のマネージャーが組織の状態をリアルタイムで把握するためにそれぞれの要望にあったDashboardを用意しておく。経営陣や現場は好きないタイミングでDashboardにアクセスすればいいという環境は、データドリブンな人事カルチャーを構築する上で、必ず通る道と言えるでしょう。(普通に考えても、毎月エクセルを送るだけだと物足りないですよね。)

Step3:People Analyticsチームを構築

People Analyticsには多くのナレッジが必要です。もちろんHRとしての組織理解などのknowledgeはもちろんのこと、解析を行う以上、Data Scienceの知識も必要です。
さらに人事データは機密性の高いものなので、セキュリティ設定などIT部門の力も必要です。

Step4:HR Reportingを構築

2015年から本格的に取り組んでいるスワロフスキーのPeople Analyticsは、3年かけて、People Analyticsチームを組成し、分散しているデータを整理し(データクレンジング)、データを統合し(データインテグレーション)、最適なレポーティングシステムを構築してきました。

現在のスワロフスキーでは、"過去"と"今"のレポート(フェーズ1とフェーズ2)がダッシュボードで見える化され、経営層や人事がいつでも、どこでも、それこそ携帯からでも、確認できるようになっているそうです。また気になるレポートは詳細を確認することも可能。データを統合し整理した功績ですね。

Step5:Predictive Analyticsへ

2015年から、データの統合という難所を超え、リアルタイムでの組織把握のためのダッシュボードを構築してきたスワロフスキーは、ついにPredictive Analysisを始めていくようです。中でも最初は"離職予測"を検討しているようです。

このように、People Analyticsはロングジャーニー。だからこそ、しっかりとロードマップを制定し、体制を作り、小さな成功を積み重ねて行く必要があるのですね。





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