ソラナックス断薬一ヶ月

ソラナックスを飲んで10年くらいだと思います。なんとか断薬一ヶ月。いつか誰かのためになれば。書いておきます。


もともと高校生のころから情緒不安定なことかあり、内科でなんらかの精神安定剤をだされ、へらへらしながら校内を歩き、保健室の先生や友人に心配されたりしていました。
その時は飲み始めてすぐでしたし、もちろん依存などなくやめられましたが、周囲の態度や回る廊下、ふらつく足元、妙なハイ、やめることへの不安感など強烈に覚えています。

さてソラナックスですが、25歳くらいの時に月経前緊張症の軽減のため処方されました。当時は仕事や恋愛などいろいろ抱えていて、月経前緊張症は月経前にかぎらず一月のうち三週間くらいは月経前緊張症状態で、普通の生活が送れなくなっていました。コントロールできない感情で、職場の先輩をなぐりそうになったり。ギリギリの理性で我慢できたのは、ソラナックスを飲んでいたからであろうと認識しています。ほとんど自分ではない誰かに精神を操られているという感覚でした。

その後いろいろと悪化し、睡眠導入剤乱用にまでおちいりますが、一貫して心療内科の先生は病名をつけませんでしたので、あくまで「うっかりソラナックス依存にはまってしまって断薬したい」方にはお役にたてるといいなという程度の文章かとおもいます。

ソラナックスは0.4ミリグラム、一日の摂取は3~5錠。調子によって頓服が増えても、マックスで一日5錠ほどだったとおもいます。睡眠導入剤がからんできていたので、寝るためにはソラナックスだけではだめでした。

一度仕事中(夜勤中)に調子がよく、うっかり12時間くらいソラナックスを飲むことを忘れてしまいました。その時は、仕事中急に頭を殴られたような頭痛が起き、心臓がばくばくしてパニック発作をおこしたのかと思いました。
本当に断薬症状かはわかりませんが、あわててソラナックスを飲んだところ、嘘のように治まったので、そうだったのではないかとおもっています。このときの頭痛と心臓バクバクパニックが仕事中に起きたことが、強いインパクトになってしまいました。人前でとりみだした、というのがかなり病的に見えてしまった気がして私は嫌でした。

何年かは当たり前のようにソラナックスを飲む日々が続きます。朝起き抜けにすぐ飲まないと、朝から一日怒りつづけたり一日泣き続けたりしてしまうので、一日のスタートのために重要でした。夜も寝る前に一錠、そして睡眠導入剤、寝付けず睡眠導入剤もうひとつ、それでも寝付けずソラナックスもう一錠……というようなことも。

仕事を辞めて夜勤生活から抜け出し、しばらくフリーでふらふら生活していたころ、なんとか睡眠導入剤を、やめることができました。これもなかなか苦労しましたが、不眠についての本を読み、「体は寝たきゃ寝るから寝れないなら放っておけ」という趣旨の言葉が脳にクリーンヒットし、徐々に睡眠導入剤をへらしていけたのでした。

30歳をこえたあたりから月経前緊張症が落ち着いてきました。歳なのか、なんかのかあまりよくその辺はわかりません。とにかく、ソラナックスを飲んでも制御しきれないような傍若無人さやヒステリックな部分がへってきました。その頃からソラナックスを辞めたいと思うようになります。そうして調べてみると、ネットでは当時ソラナックス依存というもので盛り上がっでいました。そういえばちょっと前に心療内科の先生が「世間では騒がれているけどうそだからね!」みたいな、謎のトークをしていました。あまり真剣に聞いてはいませんでしたが、そうだったのか、依存性が……と不安になりました。

しかし人間は薬を飲まないふうつの生活に戻りたいものです。ソラナックス使用量を減少させようと努力をはじめます。

まずは半分にしてみる。
ソラナックスをカットして、半分だけ飲むという、シンプルなあれにトライします。あの小さなソラナックスが、半分になるという、あの不安感は、皆さんお分かりになるでしょうか。
実際気にしすぎているのか、昼間も夕方も、ちょっとしたことでイライラしたり不安に襲われたりして、かえって頓服で使用量が増えている日もありました。
もとの量に戻して過ごしたり、また気分が良ければ半分にしてみたり。

夜眠れなくて結局二錠くらい飲んでいたり、睡眠導入剤やめてもこれじゃ意味ないじゃんと落ち込んだり……。

とにかく、断薬は「やっぱり無理だった」という落ち込みと、また飲んでしまったまたはじめからやり直しだ!という挫折がつらかったです。一生薬がないと生きていけないのか、と。それならそれでもいいやとおもったり、心療内科の先生と話をするのも薬をもらうために通院するのも、薬をやめたいと言って心療内科の先生に理不尽に怒られるのも嫌気がしていました。病院も仕事ですから、患者は薬づけでよく通う方がやはりいいでしょうね。かといって真面目につらいことを相談すれば「そうなんですか、まあそういうこともありますよね」というようなバカにされた態度もまた、腹が立ちます。実際月経前緊張症が発端ですから、おそらく気質程度で病気ではない私は、お話するだけ時間の無駄な患者だったのでしょう。こういう感想をもつ時点で、自分がなかなかめんどくさい奴だと認識はしますが、当時の自分は本当にそれが精一杯でしたし必死でした。病院へいかないと薬がないけれど、病院で嫌な思いをするたびに悪くなっていきました。最後の方はほとんど無になって、薬をもらうためだけに先生と最低限の会話だけをしていました。
「とくに変わったこともなく、悪いところもない」と言ってもソラナックスはしっかり処方してくれました。

半分に割る、さらにもう半分に割る、もとに戻る、増える、を繰り返すこと数年。
生活環境がかわり、いつの間にか増えることが減っていきました。もちろん意図的に減らすこともありましたが、「いま飲まなくても平気だな」と感じることが増え、お昼は飲まずに様子を見て、だめだったらその時はのむというように、時間ごとでなく必要になったら、というタイミングになんとなくかわっていきました。またこれには、通勤が電車から車になったことも作用しました。いままでソラナックスを飲んで眠くなるという実感はあまりなかったのですが、ソラナックスを飲んで朝から渋滞していると、本当に危険でした。でも、すでに「危険だ」と実感することすらできなくなっているので、これは本当に危険です。驚きました。10年ソラナックスを飲んで、はじめてあの「服用したら運転しないでください」が自分のなかに響いたのです。

しかしおそらくこれは、症状が治まってきていたから実感したことなのかなとは思うのです。

そういうわけで朝にソラナックスを飲むことは物理的にできなくなりました。つらくても会社に着いてからということになります。
また、夜寝る前も、慌ただしい生活でうっかり飲み忘れてしまったことがあるのです。休みの日だったのですが、起きてからしばらくして不安を感じ、よくよく思い返してみると昨日の昼に飲んだのが最後かも……?と、いつ飲んだのかすら曖昧になっていました。この時が大きなきっかけになったと思います。

忘れてしまうこと、それは以前頭痛やパニックもどきなど大きなショックを起こしてしまったものですが、今回はなかった。24時間近くソラナックスを忘れても大丈夫だった。それが自信になったと思います。

ソラナックス4分の1は効率が悪いのでやめました。飲むなら2分の1、夜寝る前だけ、どうしても夜中に起きてしまうのではという不安から、夜寝る前のソラナックスだけが残ってしまいました。最期の半年くらいはこの寝る前に2分の1ソラナックス、だけで過ごしていました。

だんだんと昼間にも「飲みたい!」と思うことが減っていました。不安があっても数分で不安が消えたり、根性でのりきれたりしていました。おそらくこの辺りで、かなり依存から脱していました。

ある日、またうっかり飲み忘れて寝ていました。休みの日の前です。休みは比較的、飲まずに過ごせることが増えていました。とはいっても飲んでしまったりすることももちろんあります。あまり神経質にならず、飲みたきゃのむ!というペースで過ごしていました。しかし、ふと「あ、いけるかもしれない」という、閃きのようなものが出てきたのです。「次の休みから、辞めてみよう」と決意しました。

それまでの五日間はいつも通り夜だけ飲み、そして休みの前、一人ソラナックスに別れを告げ、飲まずに就寝しました。

丸三日飲まずにいるという不思議な時間は、とにかく「ソラナックス 断薬 3日」など、検索しまくっていました。どんな症状がでるかと怯えていました。何日経ったら断薬は成功と言えるのか、しかし調べても答えはありません。何ヵ月もしてやはりさらに依存してしまったという記事も読みました。おそろしいことです。3日目の私には恐怖の記事でした。

しかし意外なほど、強いショック症状はでていません。急な焦燥感や不安、じっとしていられない感じは、確かにたまにありました。しかし深呼吸で乗りきることが出来る程度でした。
今飲んだらこの数日が水泡に帰す、しかしだめだったら飲んでもしかたない、この間で揺れ動きながら、仕方ないよ飲んでもいいんだよとなだめながら、たまに頭痛におそわれながら、生理前も大きな変動なく、一ヶ月を越えて今に至ります。

一ヶ月、ソラナックスを飲んでいない、という自信。薬に支配されていないという自由さを感じています。

この先、もしかしたらなにか反応が出ることもあるのかもしれません。でも、一度ここまでできたのだから、もしやり直しになっても、きっとまたできるさ、そう自分を元気付けながら、これからもやっていこうと思っています。


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