母をしのぶ川柳N0.24

お手伝い 叱られた日が 最後の日



父はよく同僚を何人も狭い我が家に連れてきた。そのたびに母はごちそうを準備した。自分の部屋などなく、行き場がない小学生の私は、手伝おうと思った。はりきって、てんぷら粉を食材にまぶそうとした瞬間、粉がひっくり返って、私は粉まみれになった。狭い台所で、粉が入った器も不安定だったから。忙しいさなか失敗した私を母は𠮟りつけた。客に対して恥ずかしく、悲しく、それ以来お手伝いはしないと決めた。
それにしても、父は自分の仕事のために母にどれほど世話になったかしれないが、母の仕事のために役立ったことなどみじんもなかった。
しかも、収入はほとんどギャンブルに消えた。あの最低な男と再婚した母の人生がかわいそうでならない。たとえ、母が決めたことだとしても。
そして、その犠牲になった私がかわいそうでならない。
誰にも言ってないから傷が残っているんだろうか。
どうしてこんな取るに足らない小さい傷が癒えないのだろうか。

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