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動物たちは窒息を知っている

オオタカは窒息を知っている

以前にTVで観たが、川原の上空を舞うカラスの集団に子供のオオタカが近づいていった。大柄なカラスたちはオオタカに体を寄せると、順番に蹴りを入れて攻撃をした。オオタカは小柄の割に力強く、ぶつかってくるカラスたちにひるむことはない。
オオタカは、近づいてきたカラスの一羽に鋭い爪を向けて飛びついた。2羽は宙で絡みながら落下し、川面に着水をするとそのまま取っ組み合っていた。体の大きなカラスに対して、子供のオオタカは冷静で力強い。水面で暴れるカラスの体の上で、持ち上げようとする頭を抑え込んでいる。しばらくすると、カラスはぐったりとして動かなくなった。
子供のオオタカは水面に横たわったカラスをくわえると、ゆっくりと引きずって川岸へ運んで行く。上空にいたカラスたちは攻撃することもなく、ただ水面の様子を眺めて鳴いていた。
オオタカがカラスの体を川岸へ引きずり上げると、落ち着いた様子でその黒い体をついばんだ。子供のオオタカは、水中でカラスが呼吸ができずに死ぬことを本能的に知っているのだろう。

オオタカの幼鳥


シャチは窒息を知っている

シャチは、英語で「オルカ」や「キラーホエール」と言われ、大きな魚類やアシカやアザラシ、他のクジラまで襲って食ってしまう。

これも以前にTVで観たものだが、シャチが集団になってシロナガスクジラの子供を襲っていた。子供は大きな母クジラと一緒に泳いでいたが、シャチたちは二手に分かれて攻撃を開始していた。
母親は子供のクジラから離れないようにしていたが、シャチたちの攻撃で少しずつ子供から離されていく。もう一方のシャチたちは単独になった子供のクジラにめがけて固い頭部でタックルを決めにかかった。子供の体からは、血が流れ出してきている。弱って鈍くなった体の上にシャチが乗りかかる。子供は水面に出て呼吸をしようするが、次第に力なくなって動かなくなっていた。
母親を離していた仲間のシャチたちが戻ってくると、順番に子供のシロナガスクジラに噛みついた。シャチたちはシロナガスクジラの子供の窒息を知っていたのだろう。

群れるシャチ


ホッキョクグマは窒息を知ってるかも

これも以前にTVで観たものだが、ホッキョクグマが氷に覆われた場所で穴を見つけて待ち伏せをしていた。海面から顔を出すアザラシやイルカをとらえようとしているところだった。海水にいる哺乳類たちは呼吸のため、顔や噴気孔を出す必要がある。冬になれば氷の地面は広がり、その出せる場所も限られてくる。限られた穴を見つけて呼吸をしようとすると、待ち構えていたホッキョクグマの餌食になってしまう。ホッキョクグマは、呼吸のために穴から体を出すアザラシやイルカの存在を本能的に知っているのだろうか。それとも、彼らの匂いを嗅いでやってきただけなのだろうか。

呼吸が止まれば動物たちは死に、多くは獲物として食されてしまう。人間の場合は食されることはまずないが、呼吸をする行為自体は他の動物たちと同じである。

ホッキョクグマ


人間の呼吸

中学二年の時だった。同じクラスのW君が何気なく質問をしてきた。
「二酸化炭素の元素記号ってCO2だっけ?」
教科書に書いてあることをあえて聞く、つまらない奴だと思った。
「ああ、そうだね。Oが酸素でCが炭素。2個の酸素に対して1個の炭素。それで二酸化炭素だね」と私は答えた。
すると、W君は、私が何かこじつけかダジャレでも言ったと思ったのか、
「また、またー」とニヤニヤして笑っていた。
私は頭の悪い奴と話をして失敗したと思い、それ以来W君をあまり相手にしなくなった。大分昔のことだ。W君は今、何をしているのだろうか。

人は酸素Oを取り入れて二酸化炭素CO2を吐き出す。動物はみんなそうだ。酸素Oに炭素Cが結び付くと、我々は別にまた酸素Oを取り入れないといけない。元素記号的に、吐き出すCO2のCだけ出して、Oはそのまま使えばいいようにも思えるがそうもいかない。

人間とは違って他の哺乳類の喉は、飲み込む道と呼吸する道が分かれている。だから、ネコは呼吸をしながらミルクが飲めてしまう。人間でも、生後まもない乳児の場合は、息をしながらミルクを飲めてしまうらしい。

だが、一般的に人間は、食べ物を飲み込む時に息をとめる必要がある。下手をすると、食べ物が気道に入ったり窒息をしてしまう。正月には、きまって餅を詰まらせる老人たちがいる。本人は毎年食っている餅だが、今年は喉を通過せずに呼吸ができなくなっているあり様だ。年を取ってくると、喉の辺りが随分とあやしくなってきて、痰がからみ、唾も少なくなり、それを吐き出す力も入らない。できだけ食べ物を小さくしたり、少量ずつ水分をとりながら、ゆっくり噛んで食べるしかない。

他に、夜寝る時に無呼吸症候群などで不安を感じている人たちもいるだろう。人間の場合、他の動物に気道をふさがれて捕食されることはまずないのだから、あやしくなったら呼吸ができるうちに病院へ行くしかない。


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