見出し画像

ディケンズ『荒涼館』を読む。その1

ディケンズは約150年前のイギリスの超超売れっ子作家。かのドストエフスキーもファンだったと言う。死後評価が下がったりしたけど、今はやっぱりすごい作家と言われています。哲学文学作家というより、情景や人物描写が超絶上手くて読みやすいエンターテイメント作家という感じ。

そんなディケンズの最高傑作とも言われる『荒涼館』は、すごく面白いらしいけど、長いし、六十人くらい人が出てくるそうなので、色々忘れそうなので書き留めつつ感想もいれつつ書いています。ネタバレしてるので嫌な人は一番下の感想だけ読んでください。(『荒涼館 (一)』ディケンズ作 佐々木徹訳 (株)岩波書店)

第一章 大法官裁判所 解説によると、刑事でなく民事裁判所らしい。遺産相続とかの。そこでジャーンダイス対ジャーンダイスという裁判が、100年以上争われてるらしい。そんなことってある?ロンドンらしく霧で繰り返し韻を踏むのが心地よい。夢中を霧中と書いたり。

第二章 上流社交会 准男爵デッドロックの妻デッドロック夫人の話。すごい美人らしい。60代と40代の夫婦。きらめきと輝き宝石商会とか、色つやと光沢高級服地商会とかネーミングがいかにも貴族相手の貴族商売って感じ。あと、書籍店が芸能プロモーターもやってたらしい。タルキングホーンという弁護士が出てきた。法律文章を読んでて、夫人が筆跡を見る。そのあと気分が悪くなる。どした?

第三章 来しかた エスターという少女が語り始める。読みやすい。育ての親が超冷たーい感じ。誕生日も祝ってもらえない。何か出生に秘密があるのが原因ぽい。すごくいい子っぽい。育ての母(叔母だった)が亡くなり、ジャーンダイス氏(裁判の関係者?)が後見人となる。庭師との別れが良かった。プラムケーキとパイが美味しそうだったけど捨てるんかーい!エスターは学校に入れてもらってすくすく成長し、ジャーンダイスのいとこのエイダ・クレアという金髪碧眼美人の付添人(小間使い的な人?)となる。あとエイダの親戚のイケメンリチャード・カーストンに会う。三人とも親がいなくてジャーンダイスが後見人。三人とも20歳くらいで初対面。裁判所の出口で傍聴大好きな変なおばあさんに会う。

荒涼

第四章 望遠鏡的人類愛 何でかジェリビー夫人とかいう人のところにお泊まり。この章面白い。ドタバタしてるし、散らかってるし、色々ほったらかしな感じが詳しく。カーテンをフォークで止めるって。ジェリビー夫人の娘さんのキャディーなんかかわいそう。アフリカ慈善事業?にかまけて親はネグレクトっぽい。立派な夕食が残念なことにどれもほとんど生、子どもの怪我と汚れのどちらを憐れんだらよいか悩みました。だって。遠くばっか見て子供ほったらかしだから望遠鏡的人類愛かあ。世界平和は家庭から、ってマザーテレサは言ってたよ。

第五章 早朝の冒険 昔って時計が家にあると税金かかってたんだ!へー。朝の散歩、四人で裁判所で会った変なお婆さんの部屋に招かれる。ガラクタ屋(クルックの店)でピストル自殺したトム・ジャーンダイスの話。エイダとリチャードはジャーンダイス家の人で、裁判に関わるのが嫌みたい。どういう裁判なのか不明。ディケンズは名詞を並べ立てるのが好きっぽい。リズムがいいしね。

第六章 すっかりくつろいで 長旅の後、でかいお屋敷荒涼館に到着。エスター、ジャーンダイスに初ご対面。ってケーキ捨てた人なんだ???エイダがエスターを誉め殺し。いい子じゃん。荒涼館はきちんとしてないところがかえって心地よい家だって。いい家。入り組んだ家らしい。増設を繰り返した?エスター、家中の鍵を託される。スキンポールというスナフキンみたいな自由人に会う。時間と金銭の感覚がないけど楽しい人。「私がダメ人間で、寛大な気持ちを感じる機会を与えたんだからむしろ感謝すべき」だって。エスターとリチャード、スキンポールの借金の肩代わりをさせられる。当時の24ポンドって90万くらいらしいけど…?いいの?いい子過ぎない?ばれて、ジャーンダイスにもうそういうのダメだよと怒られる。え、お金はそのまんま?

第七章 幽霊の小道 神視点の語り。准男爵デッドロックの家の話。かなり大きい庭とお屋敷っぽい。弁護士事務所の事務員ガッピーが屋敷見学に来る。ガッピーは3、4章にちょっと出てきた。デッドロック夫人の肖像画が誰かに似てるらしい。お屋敷の、幽霊の小道の話。足音が聞こえたら不幸が起こるらしい。「由緒正しい旧家は幽霊に対して権利を有していると…  幽霊は上流階級の特権の1つであり、…貴族的な栄誉なのである」だって。イギリスは幽霊物件は高値がつくらしいね。

第八章 慈愛は多くの罪を覆う スキンポールの蜂蜜話。まじで働くの嫌なんだな。裁判の話。元は遺言の話だったのに、複雑になり過ぎて誰もどうしたらいいか分からないらしい。訴訟費用に関する裁判になってるらしい。どういうこと?トム・ジャーンダイス氏はそれで自殺。お金持ちって大変そうだな。色んな人が寄付してとか出資してとか言ってくる。エセ慈善事業家のバーディグル夫人の話。ネグレクトしてるジェレビー夫人もたいがいだけど、この夫人は慈善活動を自慢するし自分の子供にも寄付とかを強制して、すごい恨まれてる。貧しい人の家に押しかけて聖書読む。迷惑。その後その家の赤ん坊が死んでしまい、エスターもエイダもショック。でも、貧しい人の助け合いや思いやりを見てよかったってなる。ここのところの話がすごく良かった。

第九章 印と兆し スキンポールの借金肩代わりしたお金、もらえたんだ。よかった。でもリチャードがバカ過ぎ(笑)新キャラのボイソーンさん、筋肉イケオジだから私のなかではヒュー・ジャックマン。カナリアを頭に乗せてる(笑)デッドロック准男爵と不法侵入の件で裁判中。エイダとリチャードラブラブじゃん!エスターは屋敷の管理と会計事務作業をやってるんだ。えらい!ガッピーまた出てきた。いやいきなり求婚は急過ぎない?昔ってこんなもん?

第十章 注文書代書人 法律関係の文具店、スナグズビーの話。また名詞の羅列。行稼ぎだったりして。スナグズビー氏にはネズミほどの甲斐性もないらしい。奥さんの尻に敷かれてる。スナグズビー氏、氏の見てるカラス、カラスの飛んでった所の屋敷、それは弁護士タルキングホーンの屋敷、という映画みたいな場面移動が面白い。この時代映画はないから、むしろ映画が小説から学んだんだね。弁護士のことを栗の実に潜む蛆虫のように、だって。タルキングホーンがスナグビーの店に行って、代書人の居場所を聞く。代書人はガラクタ屋のクルックの下宿にいる。代書人ネモの貧乏汚部屋っぷりに、ディケンズの怒涛の比喩。ディケンズの比喩は時に厳しく、時に優しい。

第十一章 我らが親愛なる兄弟 ネモ氏はアヘン過剰摂取で死んでた。あらら。やっと事件らしきものが起こった。逆にこれまでそういうのもなく、大した謎もなく、話を引っ張って来れた手腕がすごいと思う。ネモ氏の下宿先はガラクタ屋(クルックの店)で、変なおばあさん(フライト)も住んでる。野次馬とパブでの検死審問。ちゃんと検死やるんだね。事故死となる。誰もネモ氏の素性を知らない。でも掃除の浮浪児には優しかったみたい。最後の方、語り口が妙に興奮してるけどどうした?

第十二章 監視 デッドロック夫人のお屋敷でパーティー。夫人は常に退屈してる。パリもつまらなかったみたい。社交界の集まり。お屋敷の庭で狩をしたりとか、規模が違う。弁護士タルキングホーン氏が訪ねて、ボイソーン氏との裁判の話。ネモ氏の話もする。前に夫人が代書人ネモ氏の書跡に興味を持ったから。ネモ氏との繋がりはあるのかな。極貧だったけど、元は偉い人だったぽいけど。

第十三章 エスターの物語 リチャードの就職の話。優柔不断で心配だわ。ラテン語の詩作が得意だって。結局医師になることに。なれるかなー?エイダとの恋をジャーンダイス氏に報告。微笑ましいわ。エイダがかわいい。二人をあったかい目でみてるエスターもね。ロンドン観光するけど、ガッピーがエスターをストーキング。キモい。

第十四章 立居振る舞い エスターは将来はリチャードとエイダ夫婦のお屋敷で世話人として勤めると決めてる。一生仕えるって抵抗ないのかな、この時代は。リチャードは医者の修行しに出て行く。エスターたちはロンドンにいるので前に泊まったジェリビーさん(アフリカ大好きネグレクト母)の家に行くけどいない。代わりに娘のキャディーが会いに来る。娘はフライトおばあさんと仲良しで、おばあさんの手伝いに行くんだけど、そこでダンスレッスン講師のプリンスと逢引きしてる。家から出たいからとプリンスと駆け落ちするらしい。プリンスは、しょうもない父親にこき使われてる。どこも大変だね…。その後フライトおばあさんの部屋に行くと具合悪くて、ウッドコート医師とやらに診てもらってる。

第十五章 ベル・ヤード ガッシャー氏という水気のおおいぶよぶよしたお月様のように大きな顔(笑)の人物とその太鼓持ちのクエイル氏の話。自分に酔ってる慈善家への辛口批評。ディケンズはよっぽど嫌いみたい。お金持ちだったり、寄付を募るという事は、こういう変な人を引き寄せるって事なんだな。だからこそ、裏表のない子供みたいなスキンポール氏がいいんだね。スキンポール氏の借金取りが死んで、子供四人が孤児に。会いに行く。健気な子たち。そこの下宿先の人(グリドリー)の訴訟話。遺産の訴訟で結局費用が遺産の3倍になったって怒ってる。グリドリーは子供達に好かれてる、いい人っぽい。下へ行って兵隊さんのクッキーを探しに行こう。だって。

第十六章 トム・オール・アーロンズ デッドロック夫人の夫は痛風。痛風は貴族の病で、誇りで、それ以外で死ぬのは不名誉なことらしい。バカみたい。死んだ代書人ネモ氏が親切にしていた、浮浪児ジョーの話。貴族っぽい女性が、ネモ氏の住んでたとこや墓に案内しろと言ってくる。多分デッドロック夫人だよね?どういう関係?ジョー、金貨を貰えてよかったね。

感想

情景描写がこれでもかってくらい多彩な比喩の多用で恐るべき筆力にうなる。貴族から貧しい人まで、キャラが立ってる面々が次々登場して、かなりの人数と密度。毎日少しずつ読んでる。朝の連続テレビ小説とか味の濃いお菓子をちびちび食べてる感じ。大した事件もなく、すっごい面白い!というわけではないけど、ディケンズの語りが気持ちいい(お得意の名詞の羅列がくると来た来たー!ってなる)し、エスターがいい子なのが嬉しくて読んでる。ところでこの小説が書かれた1850年頃。日本では黒船が来たり、1867年には大政奉還で江戸幕府終わってて、その後は明治の文明開花だし、昔だけど、近代に近い感じではある。

今のところの謎としては、エスターの出生と、阿片で死んだネモ氏の素性。

訳がすごく読みやすいし、注釈がいっぱいあって助かります。

荒涼3

荒涼す

















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?