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ディケンズ『荒涼館』を読む。その3

いやー面白いわー。登場人物全員にフォーカスできて、自分が神の視点を手に入れたような気分になる。神の視点とエスターの一人称が役割分担して語ってく方法、ディケンズが初めてだったらしい。ディケンズは人間の内面を深く書けてないって低評価した人たちは、エンタメ小説嫌いか、ディケンズの人気と影響が凄すぎることへの反発だと思う。内面うんぬんが些事に思えるくらい面白い。それに、基本的に明るいからとかく真面目で重々しくなりがちな小説にとってこういう書き方って貴重。ネタバレありなので嫌な方は最後にネタバレなしの感想があります。(『荒涼館 (三)』ディケンズ作 佐々木徹訳 (株)岩波書店)


第三十三章 侵入者たち 自然発火でガラクタ屋クルックが死んで、近所は大騒ぎ。自然発火を調べに色んな人が来る。何故かスモールウィード老人と老婆がやってくる。ってクルックは老婆の弟だったんだ?早速遺産の管理をし始める。ガッピーはデッドロック夫人に、ネモ氏の手紙は手に入らなかったと報告。

第三十四章 締め上げ 元軍人ジョージ氏の所に一括返済しろと借金取り立ての手紙が来る。連帯保証人の友人バグネットとスモールウィード老人の所に行くけど追い返される。助けを求めて弁護士タルキングホーン氏の所へ行く。ジョージが持ってるネモ氏の手紙と交換で、何とかしてもらう。タルキングホーン氏がめっちゃ冷たい。

第三十五章 エスターの物語 エスター治って良かった!目も大丈夫。でも、部屋中の鏡が撤去されてて、ああ…天然痘の後遺症で顔が…。フライトおばあさんが会いに来て、青年医師ウッドコートが船の事故で怪我人助けた新聞記事をくれる。エスター、ウッドコート氏に愛されてると時々思ってたって!そのへん詳しく教えて欲しいんだけど。いつ、どんなふうに?でも、顔が多分変わってしまったから告白されなくて良かったと思ってる。えー。ウッドコート氏は医師だから、天然痘後の顔の変化には慣れてるかもよ?

第三十六章 チェズニー・ウォルド エスターが顔の変化を受け入れる時間作りにボイソーンさんのお屋敷に行く。鏡を初めて見てショックを受けるけど、何とか平常心を保とうとする。頑張って立ち直り、体力をつけるので散歩する。馬と仲良しとか、村人との交流とか、微笑ましい。そしてついに!感動の母子ご対面。病気で顔が変わったけど、母と似なくなって、親子とばれる心配無くなってよかったと思ってる。エスター!どこまでいい子なんです??母の方もつい最近娘が生きていると知って、一生に一度と思って会いにきた。すごくエスターを愛してるし、本当の愛を裏切った事を後悔してるって。エスターは捨てられたわけじゃないと知ってほっとする。エイダも会いに来て、変わらずに接してくれてよかった。

第三十七章 ジャーンダイス対ジャーンダイス リチャードが会いにくる。リチャードも変わらず接してくれるけど、相変わらず遺産を当てにして、ジャーンダイスよりも多く相続できるし、敵対もする、遺産相続の訴訟に一生をかけると言ってる。関わるのはやめて欲しいというエスターやエイダの言葉も耳に入らない。借金までしてヴォールズという黒づくめの痩せた陰気な弁護士を雇ってる。エスターの不吉な語り口。心配だわー。

第三十八章 胸中の葛藤 エスターは荒涼館に戻ったあと、ロンドンに行く。キャディーと会う。キャディーはダンスやピアノを覚えてダンス教師のダンナを助けてる。幸せそうでよかった。キャディーのお父さんと義父が仲良いみたい。二人でガッピーの家に行く。ガッピーはエスターの顔を見て、慌てて結婚の申し出を無かったことにと念押しする。しょうがないかもだけど、失礼なやつ!エスターは自分の身辺を探らないよう念を押す。

第三十九章 弁護士と依頼人 リチャードと陰気な弁護士のヴォールズが裁判所から帰ってくる。遺産相続裁判に特に進展はなし。イライラするリチャード。もう諦めればいいのに。ヴォールズ氏はリチャードに経費を要求。結局、弁護士を超え太らせるためにある訴訟って感じ。ガッピーと友人ウィーグルが荷物を取りに自然発火現場の下宿先に帰って来る。スモールウィード爺達がいて、まだ遺品整理というか金目のものをリストアップしてる。

第四十章 お国とお家 選挙があって、デッドロック氏の党は負けたみたい。タルキングホーン弁護士が、デッドロック夫人のいるところで、これは聞いた話ですが。と言いつつ、隠し子の秘密を話す。誰も夫人の事だとは思ってない。弁護士は何でみんなの前でその話する?

第四十一章 タルキングホーン氏の部屋にて 四十二章 タルキングホーン氏の事務所にて デッドロック夫人、タルキングホーン氏の部屋に行き、何で秘密を喋ったか聞く。もう自分は屋敷を出る、とも言う。タルキングホーン氏はそれを止めて、自分が秘密を知ってる事を教えたかった、デッドロック氏がショック受けるし家の名誉に関わるから、別れないでこのまま妻で居続けろと言う。夫人に口止めした感じ?まあ二人で疑心暗鬼になってるよりは、もう秘密を知っちゃったと言う方がいいのかもね。その後事務所に帰ると、クビになったデッドロック夫人の元メイドが来て、働き口を紹介してくれると言ったじゃん、と怒るわもらったお金を投げ捨てるわ。激しいな。タルキングホーン、また来たら牢屋に入れると脅す。怖い。

第四十三章 エスターの物語 やっとエスター。もう秘密は分かったし、エスターの物語だけでいいけどな。エスター、エイダ、ジャーンダイス氏と一緒にスキンポール氏の家に行く。みすぼらしい。ジャーンダイス氏、リチャードと仲良いのはいいけど、お金を二人分払わせるのは良くない、スキンポール氏の分は自分が払うと言う。スキンポール氏、こんなに金銭感覚ゼロで、息子も娘もいるとはどういうわけ?しかも家族も金銭感覚ないらしい。性格が素直で子供みたいってだけでみんなから好かれてお金援助してもらえてる。帰ると何と!デッドロック准男爵が来てて、お詫びに来た、ボイソーン氏と喧嘩してるせいで屋敷に入れてあげなくてごめんと、すごい湾曲表現で言う。さすが貴族。秘密の母の現在の夫なわけで、エスターは心臓が持たん。夜、耐えきれずにジャーンダイスに話す。頭にカナリアのボイソーン氏は昔振られたんだけど、振った相手がデッドロック夫人の姉(エスターの育ての親)ということも分かる。自分を責めるエスター。そうかー。エスターを引き取ったから、ボイソーン氏と結婚できなくなっちゃったのね。それでエスターにも超冷たかったんだ。でもエスターはすごくいい子に育ったから、愛情はきっとあったよね。

第四十四章 手紙とその返事 衝撃の告白が!!えーー!!それは全然頭になかったわ!はあーーーそうなるーーですか……

第四十五章 友を託す リチャードが雇った弁護士ヴォールズが、リチャードの借金がやばくて、士官の地位を売ろうとしてると言う。エスターが会いに行くと、もう売った後。結局軍人もダメだった。怪しいマルチにはまってる人みたいに、忠告とか全然聞く気無し。海辺で、ちょうどインドから帰ってきた青年医師ウッドコートを見かけて、その後会う。ウッドコートが憐んでくれて嬉しいエスター。彼の優しさ、憐れみじゃないと思うけどね。なんか、エスターの話の中のリチャードが過去形なのが気になるんだけど……

第四十六章 その子を止めて! 貧民街でウッドコートはDVされた?煉瓦職人の妻に会う。その後、掃除小僧浮浪児のジョーを捕まえてと言われてそうする。ジョーは病気でエスターに看病してもらった夜にいなくなったんだけど、誰かに連れ出されたからだと言う。バケット刑事らしい。なんで?

第四十七章 ジョーの遺言 医師ウッドコートはエスターと浮浪児ジョーを会わせてあげたい。ジョーの泊まる場所を探してジョージの射撃場に行く。ジョージもエスターが喜ぶならと快諾してくれる。食費はウッドコートが持つと言ってる。いい人。ウッドコートがジャーンダイスに知らせて、エスターもジョーに会いに来る。どうやらもう長くはないらしい。文房具屋スナグズビーもジョーによく恵んであげてたから、会いに来る。ジョーはスナグズビー氏に、ごめんねと大きな字で書いて欲しいと頼む。ウッドコートに見守られながら、祈りの言葉を復唱しながら、ジョーは召される。

第四十八章 近づく最後 デッドロック夫人、お気に入りのメイドのローザを解雇する気である事を伝える。ここから去って、好きな人と結婚して幸せになれって。デッドロック夫人はわざと冷たく、もうあのメイドはいらないと夫に言って、メイドを解放する。聞いていたタルキングホーン弁護士は、夫人がメイドを解雇したのは、隠し子(エスター)のことをばらして屋敷を去る?つもりだからと勘ぐり、夫人を責める。家の名誉のために秘密にするという約束だったから。そっちが約束破るなら、勝手にするみたいな事を言うタルキングホーン氏。帰ってはだめってなんじゃ。と思ってたら、タルキングホーン氏殺害されてた。氏の死骸にカメラが行くまでの語りがなかなか良かった。

第四十九章 義務感に満ちた友情 ジョージの友達バグネット氏の奥さんの誕生日。ジョージもお祝いに来る。そこへバケット刑事がやってきて、妙に愛想がいいと思ってたら、帰り途中でジョージを逮捕。タルキングホーン氏殺害時に近くにいたらしい。犯人はジョージじゃないよねー。普通は。

荒涼たる

感想

エスターが、生まれてきてごめんなさいと、自分を責めがちなのが心配。勝手な大人が悪いので、エスターに罪はないんだよ。殺人事件が起きたり、雲行きが怪しくなってきました。エスターとウッドコートさんくっついて欲しいけどな……。最後まで読んで良かったーってなるのか心配になってきた。当時は貧しい人を美化しがちで、ディケンズはそれが嫌だったらしく、汚いものをノリノリで?ちゃんと汚く書いている。

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