亜獣譚

お久しぶり、というわけでもないですが。

ぴよこです。


今日は前回の「自分自身について」で話していた『亜獣譚』について話そうと思います。

以下ネタバレも含むのでまだ読んでない方は🔙でお願いしますね。責任は負いませんので✋🏻

江野スミ『亜獣譚』


あらすじ


物語の世界は害獣と呼ばれる巨大な生物が住む世界。主人公はそんな害獣を駆除する兵士、アキミア・ツキヒコ。
アキミアが森でいつものように害獣を駆除していたところ害獣に襲われ、倒れているところ。ホシ・ソウに助けられる。

そんな2人とその周りのお話。

何が面白いのか


ではそんな亜獣譚、何が面白いのかという話。

物語はアキミアとソウを中心とした「愛」のお話。


ゴリゴリゴリラのアキミア

実はアキミア、ソウの弟、チルを犠牲にソウに結婚を申し込みます。ソウに一目惚れした、というよりは「あの人」に似ていたから、なのですがまたそれは後ほど話すとして、とても卑怯なやり方なわけです。

「あなたがオレと結婚してくれるのならあなたの弟は見逃してやってもいい」

江野スミ『亜獣譚』1話

なんとまあ狡い男でしょう。

わたしも1話を読んでアキミアってクズだな…なんて思いました。1話を読んだみんながそう思うはずです。

そしてその後すぐに訳あってこの2人は性交渉をします。 

そして事前に話しておきたいのが「ヴィエドゴニャ」についてです。

この世界には身体が獣になる病気、害獣病というものがあります。感染経路は性交渉と妊娠による母子感染です。発症すると徐々に身体が変形していきます。
しかし妊婦が感染した場合、子どもは「害獣」の状態で産まれてきます。ただたまに先天的に耐性を持つ人間がいて、その人間は人間の姿で産まれるのです。そして生涯死ぬまで人間の姿です。しかし死後、必ず害獣の姿になります。
これが「ヴィエドゴニャ」です。

害獣病は性交渉するのを禁じられています。産まれてくる子どもが害獣になるからです。そのため去勢するのが法律で決まっており、隠しているのは罪になります。

まあ基本的に害獣病になると身体が獣に変形するのでバレますが「ヴィエドゴニャ」はそうではないため、「ヴィエドゴニャ」を隠したら罪になりますし、それを通報したら報酬がもらえる仕組みになっているのです。

そしてここまで話しておいたので勘がいい人はお気づきだと思います。

そう、アキミアは「ヴィエドゴニャ」です。

「ヴィエドゴニャ」なのを隠してソウと性交渉をします。そして快楽の後に「オレはヴィエドゴニャです。」と告げるのです。

クズ!!!!!!!!

魔性の女、ソウ

3話でソウがアキミアに対して「かわいい人」と言います。

まあでも「ヴィエドゴニャ」告白前なのですが。

でもそのソウの魔性の女っぽさと言ったらたまりません。その時の絵の感じをみんなに見てほしい!!!!!

実は性交渉の途中でアキミアがソウに対して嫉妬する場面があります。愛する家庭で育てられたことに対する嫉妬です。

ぬるま湯で育てられた、と発言するくらいです。

なんにもソウさんのこと知らねえくせによ!と思いながらソウの持つ独特の雰囲気と母性からはそう感じてしまうのだろうな、と思いまします。

「分からないかもしれませんね
相手の肌に深く深く…侵食って骨まで触れることが…愛であると」

江野スミ『亜獣譚』3話

そしてそんな発言に対してソウはこう返します。

「あなたは怪物と戦うのですね
相手も骨まで傷つけにくるから……きてくれるから
それはあなたにとって「好意」の表現なんでしょう?」

江野スミ『亜獣譚』3話

待て待てソウさん、とんでもないこと言われてよくこんなこと返せるな?!

ソウのこの寛容さというか魔性っぷりというか…。圧倒されます。

そしてソウはまたこう続けるのです。

「だから殺し合ってくれる…怪物が好きなんでしょう?」
「なんだ私の弟と同じ…怪物好きじゃあ…ないですか」

江野スミ『亜獣譚』3話

「かわいい人」

江野スミ『亜獣譚』3話

このセリフをアキミアを抱きながら言うのです。

なに、ママ?!ママなの?!

ソウの魔性の女っぷりが発揮されまくってます!

まあそのあとアキミアに「ヴィエドゴニャ」を告白されて怒り狂い、アキミアに対して不信感を抱くのですがね…。

胸糞展開

ソウの弟をチルと言います。

害獣を駆除する兵士がいるということはもちろん士官学校があります。
チルはいろいろあって士官学校に入ることになるのですがそこで出会った教官、ハラセがめちゃくちゃクズなのです。

アキミアを超えるクズです。

ハラセは「ヴィエドゴニャ」で、それを隠しています。そしてその性処理のために去勢しているチルを犯すのです。教官という立場で。

おまけに大切にこっそり飼っていた害獣を殺されます。

チルの心は崩壊しました。

そんなチルの胸糞展開もまた面白さを増させます。


他にも何度か胸糞展開があります。そしてその胸糞展開が物語にどんどん深みを増させるのです…。

大統領たち

また、この世界には国があります。
アキミアたちが生活しているのが「ノピン」
また、「シュペイ」という国もあります。

シュペイ人は哺乳類ではなく鳥類に属する人間です。

実は害獣病は戦争時、シュペイ人がノピンに散布した病原菌なのです。だからシュペイはノピンからしたら恨む対象になりうります。

しかし、この2人の大統領はとっても仲良しです。

また「エドゥル」という科学技術が大層発展している国もあります。2人の大統領はこの国を敵視していますがエドゥルの技術は本当にすごいです。

ノピンの大統領を「ツユボネ」
シュペイの大統領を「ラビンナック」
といいます。

実はこの2人には大きな秘密がありますがそれは読んでからのお楽しみ。しかしこの2人もまた相当なクズ野郎です。

奥深い台詞たち

ここでは一つだけ。

マンガワンのちょいたしの中に出てくるアキミアの発言です。

この時点でアキミアはクズではなくだいぶ丸みを帯びたゴリラになっています。

世界は皮膚から10センチ以内にしかないという話。

どういう話?と思いますがこれはアキミアの体験によるものです。

2人の同僚が怪我をしました。石により片方は両脚を、もう片方は右半身を潰されて。
夜になると害獣がやってきて、右半身を潰された方は生きながら食べられて絶命しました。
そして生き残った方は入院し、退院後カウンセリングを受け始めました。
カウンセリングのおかげでその事故について初めて話した翌日にその人は自殺しました。

そしてその彼が自殺した時間、アキミアは上司と食事に行っていて、生まれて初めて豚の丸焼きを見て興奮して写真を撮っていました。

その体験からアキミアがこういうのです。

「滑稽なことに世界は自分の10センチ以内にしかないんです
一度に手ですくえるのはその範囲までだ」

江野スミ『亜獣譚』ちょいたし 「世界は寒い」

「自分の10センチより外へはなにが起こってようと誰が何をしてようとどんな目に遭っていようとどこへも行けない
何もできない何も知れない
大事なことはいつでも頭の中で見た後でしか知れない
なにもかも……」

江野スミ『亜獣譚』ちょいたし 「世界は寒い」

なんて奥深いんだ…

TikTokで「半径5メートル以内は幸せにします」という言葉が流行っていましたが、幸せにしたところで救えはしないのです。
責任は取れないのです。

アキミアの言葉に比べてだいぶ無責任だな、なんて思いますが、アキミアの言葉が深すぎるのです。

こんな考えさせられる言葉が物語ではたくさん出てくるのもこの漫画の魅力です。

最終話「かわいい人」

みなさん聞きました?!「かわいい人」ですよ!!!

要するにこのセリフ、めちゃくちゃ大事なんですよ…。

いや、まあ最終話のネタバレまではしませんが私はこの話を読んで大号泣しました。次の日目がパンパンに腫れ上がるほどにです。

様々な漫画を読んできましたがここまで目が腫れるまで泣いたのは久しぶりです。

とにかく最終話まで読んで欲しいんですよ…。お願いだからみんな読んで……。

とにかく読んで!!!

ちょっと読み返してみても面白さが伝わってる気がしない…。自分の文の下手さに驚いている…。

ただ『亜獣譚』は本当に面白いんですよ!!!!!!!

わたしのことは嫌いになっても『亜獣譚』のことは嫌いにならないでください…!

本当にお願いなので読んで欲しい…。マンガワンで1日1話読めますので…。無料で読めるんです…。

全部の話を読んだ後に全巻集めたくなります。わたしもその1人です。今年の誕生日プレゼントは『亜獣譚』全巻にしてもらいました。

さてさて、お別れの時間です。
次は何を書こうかな〜〜。

読んでいる漫画の何かを話す予定ですのでまた気が向いたらみにきてください。
それでは!

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