君のクイズ 小川哲

小川哲「君のクイズ」を読んだ。
刊行は数年前なのだが、昨日書店で手に取って今日一気読みした。

僕は小川哲が好きだ。
とはいっても数冊しか読んでいないが、それでも好きだ。近いうちに全ての著作を読破するだろうと勝手に予感している。「ユートロニカのこちら側」でSF小説の面白さを再び教えてくれた小川哲が好きだ。

「君のクイズ」は面白い。そして読みやすく、熱い話だ。
最初僕は「スラムドッグミリオネア」を連想した。46ページで主人公がアンナカレーニナを回想する際、ネパール人が横切った際に思い出した。ただ、この小説は「スラムドッグミリオネア」よりも構造的にはるかに必然性と納得があり、何よりも面白い。そして同じくらいスピード感がある。僕は競技クイズというのもが、こんなにも奥深く、テクニックが詰まったものだと認識していなかった。押井守が『皆がその詳細を知らない職業を面白く紹介するのもSFの仕事なんですよ』というようなことを語っていたが、その仕組みが「君のクイズ」では詳細に語られる。そしてクイズと人生をダブらせ、最後の主人公の回答につながっていく。

まぁこの本はSFではない、というかSF的に認識されがちなクイズ競技者の能力を解体し、その能力を支えるテクニックを用いて不可解な一つの解答の真相を究明していく物語なので、ミステリであり、なによりもクイズ小説なのだが僕は押井守も好きなのだ。

おそらく、本庄絆にとって『人生とはクイズである』のだろう。人生そのものが与えられたお題から最適解を選び出す作業であり、その点で主人公とは本質的に相容れない。こんな安易な二項対立で語ることに意味はないのだが、それでも僕はそれくらい二人が違った人間であると思ってしまった。

ある出来事の詳細を解体して、少しずらして再構成する。その差異から実生活で意識していない何かを意識させられる。僕が好きな物語は緻密な世界観設計と大胆な仮説に基づいて展開される物語なので、この本はかなりドンピシャな面白さでした。というか小川哲がドンピシャすぎる。

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