見出し画像

団栗寒太郎の雑感

❶「人生ですべきことですか?それは決まっています。幽体離脱です。幽体離脱。もっとわかりにくく言えば、虚構の鳥になることです。虚構の鳥になって自分の人生を見ることです。見てみることです。見つめてみることです」

❷一月下旬、今あそこでブーンと飛んでいる飛行機も凍ってしまいそうなほどに澄み切った朝の碧。
僕は散歩を中断し真鴨や大鷭に混じり湖をスイスイ泳ぐ鵜の逞しい首を眺めている。ん〜、ちょっと湖にしては猛々しくないかぁ?猫背のペンギンの方がよくないかぁ?とたぶんあそこのベンチに座っているジジイは心の中独りで喋っている。
のち、僕はいつか秋に拾った光彩を思い出した。

❸少年はずっと茫漠たる湖を眺めていた。人間の言葉で言えばだれかを探していた。それまでの人生、彼はさがしものに適合する存在はまったくの他者だと決めつけていた。しかし今彼の眼は外部を見失い自己を構成する重要な要素つまり自己の周縁で燃え続ける影を感じ取り始めた。といっても彼は光−影という単純対立を持ち出し誇らしげに語る秩序的思考の人間たちには失望する。では少年は何を持ち出すのか。突然なにかが脳の海に投影される。

❹「鏡」
私は鏡に映った私を見ていた。
私は写真に写った私を見ていた。
私は動画に映った私を見ていた。
私は頭の中の私を見ていた。

私はいったい誰だ。

❺謎の死を遂げ冬に浮かぶ水鳥の死骸に腐った肉を啄む鴉の瞳孔。太陽の周縁を神の使者の如く漂う鳶に飼い主の先をゆく柴犬のお尻。あらゆるものだ。人間の眼を通過していくのは。

❻「こいつは人間的にいい」
この文字の羅列が意味するところは単に優しい正しい綺麗幸せという言葉の陥穽に陥らないもの。
愚直不可思議茶目ある少年少女青年男女大人爺婆になるかどうか、目の前の人間がただ正直にそう感じるかどうかである。

❼違和感なき人生≒手ごたえある人生
あくまで自分の人生としてである。
そうなればこそ私はやっと鼻をかめる。
へっくしゅん。


この記事が参加している募集

#散歩日記

9,915件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?