自然な不自然と不自然な自然

松の木から、まつぼっくりが落ちた。

少年は、それを正しいところに戻してやろうと、はしごと接着剤を使い、もとの場所にひっつけてやった。

少年は、なんだか久しぶりにいいことをしたな、と思った。

けれど、すぐに

「それは自然に反することだ」

と、どこからか近寄ってきたおじさんに怒られてしまった。

おじさんは、はしごとはさみを使い、少年がひっつけてやったまつぼっくりをはがして

「これがこのまつぼっくりの正しいところだ。自然のジャマをしちゃあいけないよ」

と言って、まつぼっくりを地面に優しく落とした。

少年は、ああそうか、自然のジャマをしちゃあいけないんだ、と思った。

少年は、ふと思った。

じゃあいったい僕の自然はどこにあるのだろう。

すくなくとも、僕の最初の気持ちは自然だったんだけれど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?