119 飛んで火に入る夏の虫

心地よい夏の風を虫取り網で捕まえようとする少年の丸刈り頭を眺めていると真っ青に咲きそろった水しぶきみたいだと考え暑い午前の空を見上げると白いカモメみたいな雲。街路樹の黄緑と緑の配合割合を求めよ、湖の波音と少年の足音の関係は、なんとなく夏休みの自由研究っぽい。消しゴムの不必要性を論じていたジジイは言っていた。未来に花火の音が街の声にかき消されてもなお人は夜空を見上げ暗闇煌めく星を探すだろう。こくり。

風車の音が高級食パンと甘ったるい焼き肉をごちゃ混ぜにしてもさらに朝焼けと夕焼けをごちゃ混ぜにしても僕は時計を見て不安になり鼓動がずれまた二度寝する。ヘンテコなマトリョーシカの置物。部屋の隅に忘れ去られた宝石と大学時代に友人と行った映画のスクリーンにうつる彼彼女が同じだとするならば焦って掃除機をかけたりわめき散らしてあらゆる夏の虫を殺す必要もない。

人影を虚ろだとバカにする23歳と30歳の二人組が夏の日差しに肌を燃やしているのを雨蛙と蝸牛が覗く。君は5年前から同じ靴を履いていないかい?とてんとう虫みたいに若者に尋ねた優しい上司は蝶みたいにひらひらと帰り道に吸い込まれそこに吹いた夜風は月の光と友だちでした。


巨大な炎の惑星をおにぎりとともに.


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